ギガベース日誌 ほのぼの閑話「バレンタイン」

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再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

DfJは艦娘達に背を向け、暗い通路を少し速足気味に歩き執務室へと戻った。 彼のベッド兼執務椅子である低負荷型多機能チェアの上に座る不知火は、読書用の眼鏡を着用し今では珍しくなった紙製の手帳を開いていた。 「おかえりなさい、提督。どんな用件だったのですか」 #ギガベース日誌

2019-02-20 03:35:25
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「わざわざ話すようなことでもない。備蓄食料の収支が合わないとかそういう話だ。行って損した」 「そうですか。じゃあ、こちらに」 不知火が開けた席に腰かけ、リクライニングを倒し、瞼を閉じる。しかし、一向に眠気は訪れない。 #ギガベース日誌

2019-02-20 03:38:14
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腹の内に籠る余計な思考を持ち越したまま明日を迎える事が嫌になったのか、DfJは目を閉じたまま口を開いた。 「なぁ不知火」 「なんでしょう」 「バレンタインって知ってるか」 #ギガベース日誌

2019-02-20 03:40:27
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「……はぁ?」 不知火の声色が明確に変化した。口調は秘書艦としてのそれから、2人の時のみのものに切り替わる。 「知ってるのか」 「D、大丈夫?知らない訳無いでしょう。もしかして、誰かにチョコでも貰ったの?」 「いいや、誰からも」 「そう。なら、良かったじゃない」 #ギガベース日誌

2019-02-20 03:43:03
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「チョコレート、嫌いだったでしょ」 「……何?」 「アスピナの研究員がくれたお菓子の中で茶色くてしつこくて歯に絡んで気にいらないのがあったって、シミュレータで散々文句言ってたでしょ。もしかして忘れたの?」 「あ~……」 #ギガベース日誌

2019-02-20 03:45:49
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味覚を失うと言う事は、選り好みする味の区別も消えるという事だ。 DfJがそれを失ってからの歳月は、かつて自分が何を好み何を嫌っていたかを忘れさせるには十分すぎる長さだった。 「完全に忘れていた。昔の自分の好き嫌いなんて」 #ギガベース日誌

2019-02-20 03:47:57
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「ははは。納得した。悪かったな、妙な事聞いて、はは……」 DfJは一人で勝手に納得したように項垂れ、そのままシームレスに眠りに落ちていった。 「……変な人」 #ギガベース日誌

2019-02-20 03:51:06
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

不意に浮かぶアイデア。 あるいは、嫌いすら無くした今だからこそ。 その日の早朝。 とある駆逐艦が厨房の一角を借り、在庫の山から取った少しの素材用チョコを慣れた手つきで処理し、それに大量のタバスコをぶちまけて固めた物を大事そうに持ち出した事は、間宮だけが知っている。 #ギガベース日誌

2019-02-20 03:56:06