クルセイド・ワラキア #7 前編

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◇これまでのあらすじ:ネオワラキアの国土を〈夜〉で覆う絶対君主、ブラド・ツェペシュの正体はニンジャであった! 歴史の闇に葬られしニンジャ真実の一端がついに明かされる! フジキドはドラゴン・ドージョーより奪われし聖なるヌンチャクをブラドの手から取り戻すことができるのか!?◇

2019-02-20 21:39:26
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◆ニンジャスレイヤープラスより 【クルセイド・ワラキア】#7 ◆ pic.twitter.com/BBz5hdx0GP

2019-02-20 21:43:25
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KRA-TOOOM!爆発物のスペシャリスト、スナブノーズの仕掛けたプラスチック・バクチクが、分厚い石の大扉を吹き飛ばした。 1

2019-02-20 21:46:47
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ガレキを踏み越えて最初に地下宝物庫に姿を現したのは、隠密行動に長けるソリチュード。スナブノーズがそれに続いた。この腐れ縁のならず者二人は、ステルス・ジツで敵との接触を避けながら、まんまと最深部の宝物庫へ辿り着いたのだ。 2

2019-02-20 21:49:00
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そこは高い丸天井の広間で、奥ゆかしい中世風の宝物棚が並んでいた。壁には刀剣や鎧だけでなく、オスマン・トルコ軍の鎧を着せられた年代ものの木人までもが吊り下げられている。かつて、ブラドその人がカラテ鍛錬に用いたものであろうか。この空間内に、数百年もの時の流れが凝縮されているのだ。 3

2019-02-20 21:51:29
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「ハハ! あいつらが引っ掻き回してくれたおかげで、悠々と最深部まで潜れたな。見ろよ……王冠だ……!」ソリチュードは近代的なガラスケース棚に置かれた黄金の冠を被り、その他の宝飾品も手当たり次第に掴み取って、首にかけ、懐に入れていった。 4

2019-02-20 21:54:08
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「懐かしいねえ、この雰囲気。いつだったか……メガコーポ役員の古い屋敷を襲った時だ……」「あれは興奮したな」ソリチュードは壺の中の金貨を無造作に掴み取り、軍服型ニンジャ装束のポケットに押し込めながら言った。「あれもスダチカワフ系だったな」スナブノーズが返す。 5

2019-02-20 21:56:27
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「奇妙な縁だ」「あの時も、ソニアとかいう娘だったか……?」「さあな」二人は手早く宝物を漁った。年代ものの銀のペンダントが千切れ、バラバラと床に散らばった。開いたペンダントの中には、若き日のブラドの肖像画が収められていた。「クソッ、千切れちまった」 6

2019-02-20 21:58:28
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「放っときな。どうせ大した金にはならねえ。服も、壺も、肖像画も、タペストリーもダメだ。黄金が一番効率がいい」スナブノーズが笑う。「しかしこの宝物庫、思ってたよりシケてやがる。こりゃ宝物庫っていうより、むしろ……」「おい、ありゃ何だ」スナブノーズが部屋の奥を指差した。 7

2019-02-20 22:00:40
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「……墓だな」そこにはゴシック様式の墓石がひとつ置かれ、天井の小さな四角い穴から、厳かな月の光が当たるようになっていた。少し離れた場所には無装飾の石棺がある。その周囲の空気は死者のように重く、冷たく、あたかも不可視の縄が張り巡らされて、盗賊の侵入を拒んでいるかのようであった。 8

2019-02-20 22:04:19
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「ブルってんのか?」「まさか」二人のニンジャは、その禁忌を易々と踏み越えた。副葬品を期待し、舌なめずりしながら、石棺の蓋を横にずらした。だが…中に入っていたのは、カビ臭いワラキアの土だけだった。「クソッ、何もねえ」土中を引っ掻き回したが、何も得られず、ソリチュードは悪態をつく。9

2019-02-20 22:08:54
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「ドラキュラの寝床かもな」スナブノーズは赤鼻をこすった。「何だそりゃ?」「吸血鬼は生まれ故郷の土の中でしか寝られねえって聞くぜ。作り話かもしれねえが」「てことは、ジジイのベッドかよ?クソッ、あのボケ老人め、ここで小便漏らしたりしてねえだろうな」「後で手を洗っとけよ、念入りにな」10

2019-02-20 22:11:33
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「墓石の方はどうだ? 誰の墓だ?」「知らねえ女の名前だな」スナブノーズは墓石をブーツで踏みつけながら、サイバネアイで碑銘を照らし、目を凝らす。「年代が書いてある。昔のやつだ。何百年も前の」「クソどうでもいいな。もう金目のものは無しか?シケてやがる……これじゃ割に合わねえぞ」 11

2019-02-20 22:14:52
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「なら、この墓も吹っ飛ばして、ほじくり返してみるか?」爆発が足りないとでも言いたげに、スナブノーズは胸元からプラスチック・バクチクを取り出して見せた。「そんな悠長なことやってる時間は……」 12

2019-02-20 22:17:17
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ソリチュードが言いかけた、次の瞬間。黒い馬上槍めいた何かが、回廊側から凄まじいスピードで飛び込んできて、スナブノーズの胸に突き刺さった。「アバッ」不意をつかれたスナブノーズは、くの字になって弾き飛ばされ、そのまま壁に串刺し固定された。「アバーーーッ!」 13

2019-02-20 22:20:10
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その一撃で肺を潰されたのがスナブノーズには解った。浮いた足先がブルブルと痙攣し、血が滴った。彼は吐血しながら、己の胸に突き刺さった黒い物体を手で掴んだ。「何……だこりゃ……?」それは無数の黒い蝙蝠の集合体だった。それが瞬時に縒り合わされ、密度を増し、今後は人の形をとり始めた。 14

2019-02-20 22:22:53
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「アイエッ!?」それを見るソリチュードの声が上ずった。彼はパルス振動型ナイフを抜いて加勢しようとしたが、恐怖のあまり、手が震えて動かない。スナブノーズの胸を貫き、彼を壁に串刺しにしていたのは、憤怒を露わにしたレッドドラゴンの手刀であったからだ。 15

2019-02-20 22:25:46
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血のように赤いレッドドラゴンの目が、スナブノーズを睨んだ。そして、牙を剥き出しにした。「お、おい、相棒……」死を悟ったスナブノーズは、涙を流し、恐怖でガチガチと歯を鳴らしながら、ソリチュードに呼びかけた。「逃げ……」レッドドラゴンの牙が、スナブノーズの首筋に突き刺さった。 16

2019-02-20 22:27:58
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ほぼ同時に、スナブノーズは、自らの所持していたプラスチック・バクチクを一斉に爆発させた。KBAM!KBAM!KBAM!KRA-TOOOOM!「アイエエエエエ!アイエーエエエエエ!」ソリチュードはくぐもった爆音を背に、悲鳴をあげ、宝物庫から逃げ出した。その頭に、傾いた王冠を乗せたまま。 17

2019-02-20 22:30:52
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レッドドラゴンは瞬時に、無数の蝙蝠の集合体へと姿を変えていた。宝物庫を守るように、分厚い幕となって爆炎を自らの内側に包み込んでいた。「サヨ……ナラ……!」スナブノーズは行き場を失った熱と炎によって二重に灼かれ、爆発四散した。 18

2019-02-20 22:34:29
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爆発を握りつぶした蝙蝠の集合体は、シュウシュウと湯気を立て、焼け焦げた血となって、ボタボタと床に落ちた。やがてそれは動く血だまりとなって凝集を始め、ワラキアの土の中から、再び人の形を取って立ち上がった。 19

2019-02-20 22:36:39
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陽光無き空の下、ワラキアの地においてレッドドラゴンを殺すことは、ほぼ不可能であった。レッドドラゴンは亡き妻の墓標の前で片膝をつき、何事か呟くと、再び無数の蝙蝠の奔流と化して回廊へと飛び出した。 20

2019-02-20 22:38:42
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「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!ダメだ、みんな頭がおかしい……!どうかしてるって……!」ツインテイルズは吸血鬼ニンジャの追っ手をかわしながら、ドラクル城内を必死に逃げ回っていた。「急いで、オー・オー!」 22

2019-02-20 22:42:43