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『テイク・ア・チャンス、エヴリーシングズ・ア・ゲーム:再投下版』

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ジュセー @shiroboshi2

招き猫ベルが鳴ったということは、誰かが入り口から入ってきたということだ。営業時間はとっくに過ぎているというのに?それに、電子キーによって施錠されているのに?……「アイエエエエ!」アナカナの悲鳴が聞こえた。ノノミは更衣室の扉を僅かに開け、店内の様子を窺った。44 #S57Ninja

2019-02-28 21:46:30
ジュセー @shiroboshi2

彼女は眉をひそめた。店内にズカズカと入ってくる男。黒色の装束に身を包み、顔にはメンポをつけたその男を。「ドーモ、アナカナ=サン……ちょーっとばかし、話がありましてねェ」「アイエエエエ……今月分はもう振り込みましたよ……」「ええ、ええ、そりゃあ知ってますよォー」45 #S57Ninja

2019-02-28 21:50:42
ジュセー @shiroboshi2

男は足を振り上げ、アナカナのすぐ側の壁を蹴りつけた。「イヤーッ!」「アイエエ!」アナカナは震え、涙を流す。「最近ねェ、『モモ夢』の売り上げ……実際スゴイでしょ?跳ね上がりがねェ」「ハイ……ハイ……!」「いい新人でも雇ったのかなァ?」「ハイ……ハイ……!」46 #S57Ninja

2019-02-28 21:55:17
ジュセー @shiroboshi2

……男とアナカナは知り合いのようだ。ノノミは注意深く2人の会話を聞き、そして男を凝視する。その装束に刻まれたエンブレムには見覚えがある。((アマクダリ……でしたっけ……))「それでねェ、話っていうのはねェ。その売り上げのさ、8割ぐらいを……ね?」 47 #S57Ninja

2019-02-28 21:59:02
ジュセー @shiroboshi2

「8割……!そんな!リトリーヴァー=サン、そんなこと……!」「今までは6割だったじゃない?当時の売り上げに比したもんだったよ。でも最近、売り上げスゴイだからね。8割。ワカル?」リトリーヴァーと呼ばれた男は、神経質そうな声音でアナカナを脅す。48 #S57Ninja

2019-02-28 22:02:53
ジュセー @shiroboshi2

「む……無理です、そんな……あの娘たちに支払う給料が」「下げればいいでしょ?」「そんな!あの娘たちの生活は?」「知らないよォ、そんなの」……リトリーヴァーの横暴極まる脅し。ノノミは今すぐにでも飛び出し、カラテを振るいたいところであるが、堪えた。49 #S57Ninja

2019-02-28 22:08:27
ジュセー @shiroboshi2

何故か。今ここで飛び出し、彼女がカラテによってリトリーヴァーを殺害することは容易だ。あの男は下っ端を使わずに自らの足で『モモ夢』に訪れている。つまり、彼はアマクダリの末端だ。大したことはない。リトリーヴァーを殺害すれば、現状の問題は解決できるだろう。50 #S57Ninja

2019-02-28 22:13:33
ジュセー @shiroboshi2

だが……その行為によって、『モモ夢』がアマクダリに目をつけられてしまえばどうなる?……((私は、私の好きなように、生きていく。今は……『モモ夢』で働いていたい))……彼女は殺気を抑え、注意深く2人の様子を窺う。「む、無理です!」「イヤーッ!」「アイエエ!」51 #S57Ninja

2019-02-28 22:17:23
ジュセー @shiroboshi2

リトリーヴァーは右の拳でストレートを放った。アナカナの頬を掠め、背後の壁に蜘蛛の巣状の亀裂を走らせる。「アナカナァ……テメェ、誰のおかげで生きていられてると思ってんだァー?」「アイエエ……」「社会不適合の女をよォ、拾ってよォ、カネ稼がせてやってんのは誰だ?エエッ?」52 #S57Ninja

2019-02-28 22:20:11
ジュセー @shiroboshi2

「……リトリーヴァー=サン、です」「ワカル?なあ、ワカル?」「ハイ……ハイ……」アナカナは震える声で答える。そのバストは豊満であった。「だから、8割よ。8割ちょうだい。8割。ワカル?イヤーッ!」彼の左ストレートがアナカナの頬を掠め、背後の壁を砕いた。53 #S57Ninja

2019-02-28 22:23:33
ジュセー @shiroboshi2

……((とはいえ、どうしましょうか。どうすることもできない?))ノノミは現状打破、及び未来への憂いも無くす策を思案する。だが何も思いつかない。いっそのこと、リトリーヴァーを殺すか?アマクダリに目をつけられるようであれば、来襲者を殺す……非効率的か。54 #S57Ninja

2019-02-28 22:28:08
ジュセー @shiroboshi2

このまま黙ってリトリーヴァーの横暴極まる脅しを聞き続けるのも、給料が下がるのも、ただただ不快だ。「アイエエ……」「ねえ、いいでしょ?……別に今ここでお前を殺してやってもさァーッ!いいんだぜ!?」リトリーヴァーは拳を閉じたり開いたりしながら、アナカナを横目で見る。55 #S57Ninja

2019-02-28 22:31:38
ジュセー @shiroboshi2

「……!」「店主は誰でもいいんだよなァ。適当に従業員の中から女捕まえて、ファック!そんで言うこと聞かせりゃそれで済むんだ。テメェみたいになァー?」……ノノミは侮蔑的な目でリトリーヴァーを睨みつける。こちらには気づいていない。今なら、殺せる。だが、そんなことをすれば。56 #S57Ninja

2019-02-28 22:34:50
ジュセー @shiroboshi2

ノノミは電撃的速度で入り口を見やった。招き猫ベルが鳴ったということは、何者かが入り口から入ってきたということに他ならない。すわ、リトリーヴァーの仲間か?「……ア?なんだ?」リトリーヴァーが闖入者を見咎める。どうやら、仲間ではないらしい。58 #S57Ninja

2019-02-28 22:41:25
@hiiragi_r_t_d

こんな場にわざわざチャイムを鳴らして入ってきた、この奇妙な闖入者は一体誰だ! #S57Ninja

2019-02-28 22:43:12
ジュセー @shiroboshi2

ノノミは改めて闖入者の姿を見る。店内の仄かなボンボリ光に照らされるその姿。彼女は息を呑み、目を見開いた。ハンチング帽を被り、トレンチコートを羽織った背の高い男。間違いない、昼間にノノミが声をかけた、あの通行人。男はチラシを手に握りながら、無言で席に座った。59 #S57Ninja

2019-02-28 22:45:47
ジュセー @shiroboshi2

「なあ、おい、あんた。営業時間とっくに過ぎてんですけどォ?」リトリーヴァーは肩を怒らせながら、神経質そうな声を男に向けた。男は何の反応も示さない。リトリーヴァーは舌打ちし、男の座る席の方へと向かった。「アイエエ……」アナカナは解放の喜びを味わう余裕もない。60 #S57Ninja

2019-02-28 22:49:24
ジュセー @shiroboshi2

靴音を大きく立てながら、威圧的に近づくリトリーヴァー。彼は男の側に立つと「イヤーッ!」机に向けてカカト落とし!机が砕ける!「なあ、おい。営業時間。とっくに過ぎてる。こっちはお取込み中。ワカル?ねえ、ワカル?俺ここのオーナーよ。一番偉いの。ワカル?」61 #S57Ninja

2019-02-28 22:52:26
ジュセー @shiroboshi2

そこで男はようやく口を開いた。「チラシを。貰いましたので」「……ア?」リトリーヴァーの言葉に対する返答としては、あまりに的外れな言葉だ。男はメニューを開く。「……ナメテッカッコラー……エエッ?」リトリーヴァーが拳を握りしめ凄みを効かせる。男は取り合わず。62 #S57Ninja

2019-02-28 22:55:36
ジュセー @shiroboshi2

「……スッゾコラー!アッコラー!?」男の態度に、とうとうリトリーヴァーの堪忍袋が爆発した!彼は渾身の右ストレートを放つ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」……男が、リトリーヴァーの拳を、己の掌で受け止めた。「……え?」リトリーヴァーは唖然としながら、その様を見た。63 #S57Ninja

2019-02-28 22:59:28
ジュセー @shiroboshi2

男がリトリーヴァーの拳を握り始めた。バキバキと骨の軋む音が鳴り響く!「グ、グワーッ!?」リトリーヴァーはわけがわからない、といった顔で、拘束を逃れようとする。が、男の尋常ならざる握力がそれを許さぬ!「……では、注文を」男はジゴクめいた声で言った。64 #S57Ninja

2019-02-28 23:04:49
ジュセー @shiroboshi2

男は片手でメニューを閉じる。「注文はオヌシの命だ」その顔には恐怖を煽る字体で『忍』『殺』と刻まれたメンポ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」投げ飛ばされるリトリーヴァー!窓ガラスを突き破り、店外へと吹き飛んでいく!男はそれを見ると、ソファーの上に電子素子を置いた。そして。65 #S57Ninja

2019-02-28 23:08:52
ジュセー @shiroboshi2

「Wasshoi !」恐ろしくも雄々しいシャウトと共に、割れた窓ガラスからネオサイタマの夜へと飛び出していったのだった。赤黒の装束をはためかせて。「アイエエ……?」アナカナは震えながらこのケイオスを見やる。「アナカナ=サン」彼女は自分を呼ぶ声を聞いた。そちらを見ると、ノノミ。66 #S57Ninja

2019-02-28 23:14:34
ジュセー @shiroboshi2

ノノミは小走りでアナカナの元へ。そして、震える彼女の手を握った。「あの。何もできなくて。その……ごめんなさい」ノノミは謝罪する。アナカナは目を閉じ、涙を拭う。「……いいえ、ダイジョブ。ダイジョブよ。あなたが謝ることなんて、なにもない……」67 #S57Ninja

2019-02-28 23:19:55