140ssログ1月~2月

石かり、薬宗、髭膝、くにちょぎログ
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やまたに @mw_snc

炬燵で蜜柑に集中する兄の首筋に、するりと冷えた手のひらを這わせる。びくり、と跳ねた肩。振り返る兄は涙目だ。と、腕を引かれて。悪い子の手を暖めてあげようか。目を細める兄に、膝丸は余裕の顔で笑う。手だけとは、まだ悪戯が足りないか。言ったね。その後の熱は寒さを飛ばすようだった。(髭膝)

2019-02-17 17:39:19
やまたに @mw_snc

寒い寒いと震える宗三に、薬研はそっと口付ける。突然なんですか。暖めてやろうと思ってな。娘じゃあるまいし、これで暖まるものですか。つれなく言って、また寒いと口にしたひとは、多分そういうことだろう。俺っちの部屋で暖まらねぇか。初めからそう言えばいいんです。何故か風吹く縁側の話。(薬宗)

2019-02-17 17:45:40
やまたに @mw_snc

兄弟から隠れるように、仲間から隠れるように、空き部屋で口付ける。黒髪を指で掻き混ぜて。色違いの瞳が熔けるのを眺めながら。薬研、もっと。水音が、閉めた障子が、その向こうに広がる喧騒を隠してくれる。俺も、足りない。今度の口付けはどちらからか。わからなければ、もう一度すればいい。(薬宗)

2019-02-17 17:55:14
やまたに @mw_snc

ただいま、と帰る彼は勇ましい。共に出たのが短刀に加州と大和守というのも大きいのか。石切丸は中で一番背の高い脇差におかえりと手を振った。すぐに寄る青江は、こちらへ来るほどなんだか小さく見えて。見上げる瞳が、幼子のようで。可愛いなと気付いたときには腕の中にいれていた。(石かり)

2019-02-18 07:23:38
やまたに @mw_snc

石切丸の部屋に夜行くと、いつも甘い香りがする。香だろうか。昼間は焚かないのに。嫌な匂いではないからと、青江は詳しく聞いたことはないけれど。ある朝。三日月がおやと声をかける。石切と同じ香だなぁ。その瞬間に意図を知って。青江はあの御神刀、としゃがみこんだ。(石かり)

2019-02-18 07:31:32
やまたに @mw_snc

片手で掴めた両手首の細さに、石切丸は組敷いた青年が、実はまだ青年でもなかったのだと知る。けれどそこへ思うことは、動揺や後悔よりも、高ぶる感情で。青江、今から君を抱くよ。気丈な瞳に灯る怯えすら愛しくて。たっぷり可愛がってさしあげようね。まずは、唇へ噛みついた。(石かり)

2019-02-18 07:41:57
やまたに @mw_snc

膝を枕に本を読む青江を、石切丸は好きにさせる。邪魔というほどでもなければ、手遊びに髪を撫でるのが思いの外楽しくて。沈黙すら穏やかで心地よい。そんな中、ふと青江が起き上がって、髪を整える。すぐに聞こえた足音に石切丸は納得して、頬を緩めた。この子が気を許しきるのは私だけにだ。(石かり)

2019-02-19 14:06:55
やまたに @mw_snc

深緑の髪に石切丸は櫛をいれる。少しずつ、丁寧に。その手つきも慣れたものだ、と青江は思うのだ。私にさせてくれないかな、と初めに言った朝から四年が経って。もう無理にほぐすことも、痛いこともなくなって。ただ、変わらないのは。楽しそうだねぇ、青江。その声の主こそ、楽しそうなこと。(石かり)

2019-02-19 15:58:03
やまたに @mw_snc

鏡を見ながら紅を引く。その光景を見るのが青江は好きだ。なにもつけない男は、意外ときつい目元をしている。普段、柔和に笑む彼の、こんな表情を知るのは敵と自分だけだろうと、優越感に浸れるから。そうして、男から神様に変わった大太刀は穏やかさを纏って。次に男に会えるのは、また夜だ。(石かり)

2019-02-19 16:19:38
やまたに @mw_snc

神としての幸せは、祈られることで。武器としての幸せは、振るわれることて。付喪としては、大切にされることだろうか。石切丸はそんなことを考えながら、手を伸ばす。重なる手のひらは、冬の寒さに冷たくて。人の身を得た幸せは、体温与える相手がいることだ。そう、手を繋ぐ。(石かり)

2019-02-19 16:27:07
やまたに @mw_snc

修行先で、私はどうなってしまうのかな。不安とも、ただの疑問ともとれる言葉を石切丸は言う。おかしなことを、と青江は呆れて肩を竦めた。どんな変化でも君は君のままだよ。そう教えてから、唇を塞いで。ただ、僕への気持ちに変化がなければ、それでいいよ。そう、あの時君が言ったくせに。(石かり)

2019-02-19 22:49:07
やまたに @mw_snc

よっ色男、と鯰尾が笑う。今度は物吉が。うわあ、痛そうです。背中を見られて、ようやく石切丸もわかる。子猫に引っ掛かれてね。見え透いた嘘に、彼らはにやにやするだけだけれど。他の奴なら、浮気じゃないか。ぽつりと零す骨喰に、真実以外を言えるだろうか。だから、睨まないでくれ、青江。(石かり)

2019-02-19 22:53:39
やまたに @mw_snc

料理の先生は歌仙で。文は蜂須賀で。着物の組み合わせ方はどちらにも。と、教師役から外したというのに、覗きに来た宗三が笑う。まるで、花嫁修行ですね。そういうわけじゃ、と青江は赤い顔を両手で隠した。だって、自分でも納得してしまったのだ。彼の、好みを見つけようとしてるって。(石かり)

2019-02-20 13:16:31
やまたに @mw_snc

膝に乗せた秋田が石切丸に洋菓子を分ける。兄さんたちとよく食べるんです、と馴染みのない菓子を。若い子の好きなものがわからない、と零したことを覚えているのだ。思えば、浦島や鯰尾たちも。それでいて。あ、青江さんが来ましたよ。すぐに膝を空けてくれるのだから、頭が上がらない。(石かり)

2019-02-20 13:22:57
やまたに @mw_snc

たまには洋装を、と思ったのは石切丸で。今日こそ和装を、決めたのは青江で。結局バラバラの格好での対面に二振りして笑う。せっかく選んだのにと思うよりも、彼も自分に合わせようとしてくれたことが嬉しくて。だから。今度は、なにを着るか二振りで決めようか。では、明日は洋装で。(石かり)

2019-02-20 13:31:56
やまたに @mw_snc

終わり終わり。一月以上かかってしまってごめんなさい。次はやり方ちょっと変えます。

2019-02-20 13:33:14
やまたに @mw_snc

月の刀は目の前の大太刀を眺める。優しく穏やかな御神刀は、脇差を腕の中へと独り占めにしていて見る影もない。宥められては拗ねて、小さな口付けで破顔して。まったく、生き生きとしたものだ、と。そんな人の子に似た愛しさよ。まあ、ちょっかいを出してみたのは俺なんだが。(石かり+三日月)

2019-02-22 07:10:46
やまたに @mw_snc

君も相当だ、と言ったのは膝丸だ。青江はそれに首を傾げる。兄者兄者と賑やかだね、と茶化したつもりなのだ。青江は、それほど誰かを連呼した記憶がない。と、膝丸は指折り数えて。彼、あいつ、御神刀、大太刀、石切丸。呼び名を変えれば気付かないと思ったか。いや、無意識だ。(石かり+膝)

2019-02-22 07:17:22
やまたに @mw_snc

現れた金色と銀色に最近に、鶯丸は湯飲みを手にして立ち上がる。初めは揉めて煩いからと、今は青春に場を譲らんと。鶯丸、邪魔をしたか。いや、大包平を探しにな、残った菓子は食べてくれ。せっかくだから頂こうか。二振りぴたりと座る縁側は穏やかで、梅の香のように甘酸っぱい。(くにちょぎと+鶯)

2019-02-22 07:29:41
やまたに @mw_snc

出陣では弟が世話になったね、と髭切が。こちらこそ、演習で青江が世話になって、と石切丸が。あれ、と髭切は首を傾げてから、悪戯を思い付いた子供のように笑う。同派でも、同じ主の元へいたわけでもないのに、そう言うの。不思議だねぇ、と楽しむ声は、答えを知ってる色をしていた。(石かり+髭)

2019-02-22 07:43:14
やまたに @mw_snc

子よ、と烏の太刀が呼ぶ。さて、俺は子か、と国広は自問した。それを元に生まれたのが親ならば。いや。他のものを知っている。あいにく、間に合ってる。答えに、隣の長義が呻いて蹴った。写しと子は違うだろう。さて、俺はなにも口にしていないが。あんたの腹を知ってるだけで。(くにちょぎ+小烏丸)

2019-02-22 18:12:18
やまたに @mw_snc

嫌だ、と大豆畑から逃げ出した銀髪を小狐丸は見送った。と、代わりにやってきた金髪が鎌を持って。雑草を取りながら、ぽつり呟く。あんたの大事な畑を枯らしたら、と思ったらしい。それは、素直でないことで。俺には、素直に言ったぞ。正直者のにやけた顔を、隠す布はもうないのだ。(くにちょぎ+小狐)

2019-02-22 21:02:36
やまたに @mw_snc

鵺は髭切に懐いている。今日も獅子王の肩から外れ、髭切に抱かれ。少し肌寒いけれど、それはいいのだ。獅子王は思う。問題は鬼に化けそうな弟だ。兄者、俺より妖がいいか。俺の方が兄者を慕っているのだ。力説に髭切が笑って。お前が一番に決まってるよ。鵺の視線が、助けを求めてくる。(髭膝+獅子王)

2019-02-22 21:16:01
やまたに @mw_snc

にゃあ、と鳴いた恋刀に、猫の呪いか南泉になにかされたのか、と焦ったのは仕方ない。そう国広は言い訳する。そんな態度に、長義はぷいと顔を背けて。こういう嗜好は、お前が、好きじゃないかと思って。小さくなる声と、染まっていく頬と、悔しそうな表情に。違う声で、鳴かせたくなった。(くにちょぎ)

2019-02-22 21:28:55
やまたに @mw_snc

黒猫の耳に、尾の飾り。首に鈴付きの赤いリボンを巻いて、宗三はころころと笑った。お似合いですよ、薬研。すっかり遊ばれた薬研は、それでも文句は言わず。お前が笑ってくれるなら、こんな格好した甲斐があらぁ。だろう、と顎を一撫ですれば、普段の格好の宗三が、不服な顔でにゃあと鳴いた。(薬宗)

2019-02-22 21:34:57