140ssログ1月~2月

石かり、薬宗、髭膝、くにちょぎログ
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やまたに @mw_snc

しらぬ顔で追い出した。ほらほら、早く行かないと。君は機動が低いんだから。性格ものんびりしているし。そうやって追い立てて、玄関の戸を越えたところで。大丈夫だよ、青江。おっとりとした声が。ちゃんと四日で戻ってくるよ。約束、と立てられた小指に、青江は無言でそれを絡めた。(石かり)

2019-02-27 20:37:18
やまたに @mw_snc

やくも立つ、と青江は空を背負って出た大太刀を思う。太陽神の弟が妻に詠んだように、閉じ込めてしまえたら、と。そう思わなくはないのだ。ただ、今回行くのは出雲ではないだろう。たった四日だ。だから、帰ったら、と青江は思うことにした。暫くは君を離してあげないよ、なんてね。(石かり)

2019-02-27 22:40:15
やまたに @mw_snc

いくよ過ごした日々に比べれば、四日なんて些細なものだ。その証明に、と青江は自身の首筋に触れる。鏡を見ればわかる位置に、赤い痕。強く吸われたそれは、この期間なら完全に消えることもないだろう。わかっていて、何度も触れてしまうのは。僕のとき、君は背中の傷を確かめたのだろうか。(石かり)

2019-02-27 22:51:58
やまたに @mw_snc

おだやかな大太刀が、目の前から消えた。共に戦場に出た初めの感想がそれだった。おっとりした御神刀が、あんな力を持っているなんて。そして、再び。容赦のなさも、滅ぼすという意思も格段に上がって。それが修行の成果かい。なにが、と首を傾げる男に告げることは。惚れ直したってことさ。(石かり)

2019-02-27 22:59:34
やまたに @mw_snc

かみへの祈りを石切丸は口にする。圧倒的な攻撃力を持ちながら、守りの願いを口にする。君らしいなぁ、と青江は笑った。優しい御神刀は、その力すら優しさのために。まったく、君らしい。僕が好きな、君らしい。淡い光を纏った刃を、それが翻る様を、青江はうっとりと見守った。(石かり)

2019-02-28 00:48:42
やまたに @mw_snc

えらぶのは神の道か、それとも別の道か。青江はどちらでも、祝福しようと思っていた。どちらでも彼の決めた道に違いはないから。そして、目の前に彼が立つ。前よりも勇ましく、神々しく、愛おしく。青江。それでも、声は前と変わらない。青江、久しぶりで、我慢が出来そうにないよ。熱い声が。(石かり)

2019-02-28 20:25:17
やまたに @mw_snc

理性を保てと頭が言う。無理だ。己を律しろと頭が叫ぶ。出来ない。青江はその腕の中で、彼の香りを貪った。主が戦う姿を見たがっている。主が修行の思い出をしてほしいと願っている。主が三条の刀が。なのに、帰還の挨拶も早々に包まれた青江の体は、広い背中をきつくきつく抱き締めるのだ。(石かり)

2019-02-28 20:36:38
やまたに @mw_snc

たくさんの人が己に祈った。幸せだなと石切丸は思う。その愛を返したいと、守りたいと思うのは、当然のことだ。害するものを切りたいと思うのは。その中には青江、君もいる。この刃は主のために、そして君のためにと言えば浮気者と謗られるだろうか。たったひとり愛した物だ、許しておくれ。(石かり)

2019-02-28 20:41:48
やまたに @mw_snc

黙って、と囁いた。極めの姿の感想も、土産話をねだる声も今はいらない。前がどうだったか、今はどうかなんて君の前では些細なことだ。私は、いつだって君の前では衣を脱いだただの男なのだから。必要なのは、熱だけで。仕方ないねぇ、満更でもなさそうにと許す君に、甘える夜。(石かり)

2019-02-28 20:46:28
やまたに @mw_snc

いいたい言葉はいつだって簡単だ。頼みがあると口にして、戻ったよと帰る。それだけで十分伝わるだろうと石切丸は思っている。だから。ただいま、私の青江。他に思い浮かぶことがなくて。返事は、馬鹿じゃないかい、だったけれど。君の表情は案外言葉よりもずっと簡単だからよしとした。(石かり)

2019-02-28 21:00:58
やまたに @mw_snc

またない、と石切丸は口にした。そんな余裕なんてない。自己を確かめた。私の主と仰いだ。あとは、あとは。戻った場所で、目指した行く末へ、過去と未来の間に君がいない。だから、四日分埋めさせて欲しいのだ。今は、君のことだけ考えたって、神も主も許してくれるよ、きっとね。(石かり)

2019-02-28 21:04:52
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