BDZの減量方法 by 佐々木幸哉医師

精神科医によるBDZ減量の実際が非常にわかりやすく書かれています。医師だけでなく患者さんにも理解出来ると思われます。
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Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

一方で医者にとっても、工夫を凝らして離脱症状を最低限に抑え、断薬を成功させたとしても、高い診療報酬を得られるというわけではありません。 達成感はあるかもしれないが、短期的・現世的な利益は無い。 内科医が医局人事で地方の病院に2年の約束で赴任。そこでみつけた多くの不適切なBDZ漫然処方。

2019-03-03 23:02:52
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

Do処方を2年続けてその病院を去る方が、その内科医のQOLは高くなるかもしれません。 改めてこう書くと、医者・患者ともにBDZ断薬の短期的インセンティブは小さい。 将来的な大きなマイナスを防ぐために現在のゼロを少しだけマイナスにする――元も子も無い表現をすれば、それがここでの断薬の目的です。

2019-03-03 23:02:52
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

何だかんだで、医師は不要なBDZを減量・中止したいと考え、患者さんもそれに同意した。ここからが減薬の「各論」ということになります。 BDZの減薬法には漸減法、隔日法、置換法、といった技法があることは前述しました。 これらの中で、もっとも難易度が高いのは恐らく置換法です。

2019-03-04 14:24:47
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

BDZは、半減期が短いものほど依存が起こりやすいという特徴があります。 デパスは、既に述べたように半減期が6時間と短めの薬です。服用してから効き始めるまでの時間も短い。つまり、即効性があり、尾を引かない。こうした「キレがよい」薬ほど依存を起こしやすいのです。 yomidr.yomiuri.co.jp/article/201503…

2019-03-04 14:24:47
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

上記引用記事の「乱用処方薬トップ5」のうち、上位4つがBDZですが、デパス(エチゾラム)を筆頭に、短~中時間作用型の薬が上位を占めています。 服用するとすぐに効いて気分が良くなるが、その作用はすぐに消え去る。ではもう1錠――おそらく、短時間作用型のBDZはそうした服薬行動を誘発しやすい。

2019-03-04 14:24:47
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

必然、服用頻度は増える。心理的⇒身体的な依存がほどなく成立します。 デパスの名誉のために申し上げておくと、僕が記憶する限り、広い適応を有する同薬は、日本で一番処方されているBDZです。不名誉なトップ1は、それも一因であるかもしれません。 逆に、長時間作用型のBDZでは依存は起きにくい。

2019-03-04 14:24:48
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

前述のメイラックスなどは、かなり依存リスクが低いBDZです。 作用は緩やかではありますが、基本的にデパスと同じだと考えてよい(ただデパスのように「効いてキタ━(・∀・)━!!!!」という感覚は無い」)。 減量後の体内消失が早い短時間作用型のBDZは、減量に伴って離脱症状が現われやすい。

2019-03-04 14:24:48
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

そこで、例えば、デパスをメイラックスに置き換えてから減らしていけば減量は容易なのではないか――その着想のもとに考案されたのが置換法です。 しかしデパス1mgをぽんとメイラックス1mgに置換して即減量開始、といはいきません。 ここで出てくるのが等価換算という概念です。 jsprs.org/toukakansan/20…

2019-03-04 14:24:48
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

これまた経験的には、低用量の場合でも4回くらいには分けて、置き換えを行う方が無難です。つまり、デパス1mgを0.75mgに減量し、0,25mg分をメイラックスに置き換えて、離脱症状が出るようならば治まるのを待ちます。治まったら次はデパスを0,5mgに減量し、そのぶんメイラックスを追加します。

2019-03-04 22:24:44
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

ここではBDZが有する催眠作用と抗不安症、筋弛緩作用のバランスをスペクトラムと定義します。 デパスとメイラックスではこの3つの作用のバランスが異なり、また薬物動態(服用後の吸収から代謝による体内からの消失)も違っているため、いちどきに置換するとそれによって離脱症状が起こりえるのです。

2019-03-04 22:24:43
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

そこで、例えば、デパスをメイラックスに置き換えてから減らせば断薬が容易になるのではないかという着想のもとに考案された二段階減薬法が置換法です。しかしデパスを、ぽんとメイラックスに置換して即減量開始、というわけにはいきません。同じBDZとはいえ、作用スペクトラムに違いがあるからです。

2019-03-04 22:24:43
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

因みに、デパス0.25mgがメイラックス何mgに相当するかは、ベンゾジアゼピンの等価換算表(jsprs.org/toukakansan/20…)を用いて算出します。 微調整が必要になりますから、剤形としては細粒や顆粒を用いることになります。増減しようとしている薬に散剤が無い場合は、錠剤を粉砕して微調整します。

2019-03-04 22:24:44
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

結構な手間がかかりますので、一般科で低用量のBDZを扱う場合は、漸減法だけで十分だと思います。 また、置換法は、同じBDZでも睡眠薬の減薬には使えません。 作用時間の短い睡眠薬を、長時間作用型の睡眠薬に置換すると、朝起きられなくなったり、日中に持ち越して事故の原因となりかねないからです。

2019-03-04 22:24:44
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

睡眠に関しては「翌日が休日であれば多少眠りが浅くても問題は無い」といった条件を整えられる場合が多いので、隔日法の良い適応になります。ただ一睡も出来ないと辛いですから、僕は睡眠薬を全く服用しない日を作る原法よりも「週に1回、睡眠薬を半量にしてみる」という変法を用いることが多いです。

2019-03-04 22:24:44
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

現在、一般科で最も多く用いられている睡眠薬は、マイスリー(ゾルピデム)ではないかと推察します。超短時間作用型BDZ(正確には非BDZですがここでは細かい説明は省略)で、翌日への持ち越しリスクが少なく、非専門医でも使いやすい――と、考えられているようです。5mg錠と10mg錠があります。

2019-03-06 17:21:08
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

ここでは仮に、マイスリー10mg錠、1日1錠を処方されて数年間毎日服用し、常用量依存に陥った患者さんを想定し、その減薬について考えます。 前提としてこの患者さんは精神疾患には罹患しておらず、断薬後は今のように毎日スッキリぐっすりは眠れないこと、離脱症状のリスクも理解・納得されています。

2019-03-06 17:21:08
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

僕であれば、隔日法の変法を用いて「1週間で5mg減らす」ところから減薬を開始します。 この患者さんが会社員で土日がお休みであれば、金曜日のマイスリーを5mgに減らすところから始めるでしょう。 翌日が休みで、多少眠れなくとも、土⇒日の睡眠で挽回でき、月曜日からの仕事に支障をきたさない。 pic.twitter.com/CjP5tKsssS

2019-03-06 17:21:08
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Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

いきなり0の日を設定してもいいかもしれないし、それが水曜日であってもいいかもしれません。 しかし、身体的依存に至っている患者さんでも、必ず心理的依存の要素はあることには留意すべきです。減薬・断薬に同意した患者さんであっても、長年頼りにしてきた眠剤を減らすことには不安を覚えています。

2019-03-06 17:21:08
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

よってまず「これなら試してみてもよい」と患者さんに思わせる、説得力のあるセッティングを用意する必要があります。そのための「金曜日に5mg」でもあります。 断薬過程において初手はとても大事です。ここを丁寧にいかないとノセボ効果を招来して後の過程に響きかねません。 placebo.co.jp/placebo-dictio…

2019-03-06 17:21:09
リンク プラセボ製薬株式会社 ノセボ効果とは? 薬効成分を含まないプラシーボが(なぜだか)服用者にとって好ましい結果をもたらすことがある一方、時に「好ましくない結果」をもたらすことがあります。 この「好ましくない結果」を引き起こすものが「ノシーボ効果」です。つまり、「ノシーボ効果」は「プラシーボ効果」のちょうど反対の意味をなす言葉だと言えます。 3 users 25
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

@usagisaan1 置換法は精神科医でも難しいので、一般科ではむしろハードル高いと思わせちゃうかも……。 ゆっくりとした漸減法を勧める方が現実的かもしれないと思っています。 twitter.com/YukiyaMEDICAL/…

2019-03-09 22:17:03
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

ここは時間の掛けどころです。 減薬の結果は飲んだその日にわかりますから、出来れば翌週、遅くとも2週間後には受診していただくのがよいでしょう。 「金曜日、5mgでも全然眠れました」――患者さんがそう仰った場合は、次の段階に進めますが、患者さんが断薬を焦っていないかどうかの見極めは重要です。

2019-03-10 11:47:26
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

「眠れなかったと言ったらまた薬を元に戻されるかもしれない」と懸念して、患者さんが優等生的回答をする可能性は常に頭に置いておくべきです。 「全く眠れませんでした」「眠れたけど、寝付きに時間がかかり、眠りも浅かった」――このようなフィードバックがあった場合は、薬剤調整が必要になります。

2019-03-10 11:47:26
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

元の処方に戻すことは原則しません(患者さんが「やはり薬が無いと眠れず辛いので、眠剤を飲み続けたいです」と仰った場合は別)。 対応は、患者さんの性格や不眠の程度等を勘案してアドリブを効かせる必要があります。 もう2週間様子を見る、金曜日の服薬量を7.5mgにする、あたりが代表的な対応です。

2019-03-10 11:47:26