政宗九さんの『旧作ミステリ再発見』

ミステリマニア書店員、政宗九さんの旧作ミステリ紹介ツイートをまとめました
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まさむね @mmmichy

【旧作ミステリ再発見】シリーズを突然始めてみます。 島田荘司といえば、代表作『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』あるいは『異邦の騎士』あたりが強すぎて、他にも面白い作品がたくさんある割には語られる機会が少ないのが残念だな、と思っている。(続ける)

2019-03-03 10:47:29
まさむね @mmmichy

そこで、あまり話題にならないし書店でも仕掛けないから、これ仕掛けて掘り返してみませんか?的な提案をしたい作品がある。 それが、『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』だ。現在は光文社文庫で入手可能。honyaclub.com/shop/g/g125673…

2019-03-03 10:50:20
まさむね @mmmichy

『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』ってすごいんだよ。ロンドンに留学していた夏目漱石が「ここから出て行け」という謎の声に毎晩うなされ、あのシャーロック・ホームズに相談に行く。ところがホームズがとてつもないイカれ具合で辟易する。というのが始まり。

2019-03-03 10:53:55
まさむね @mmmichy

夏目漱石の視点から見たホームズ像が、もう島田荘司のおふざけ満載で楽しい。物語は1章ごとに漱石の文章とワトスンの文章を模した感じになっており、その対比も面白い(両名から見たホームズの印象が全然違う!)。で、そのホームズの元に別の怪事件が……。

2019-03-03 10:56:37
まさむね @mmmichy

なんと、呪われた男が一夜にしてミイラになっていた!という事件(まさに島田荘司的奇想!)。この謎に、日本から来ていた「ナツミ」の助けを借りながら挑む、という話。島田荘司は元々シャーロッキアンで有名(御手洗潔なんてまさにホームズ的)なので、皮肉な描写も愛あってのことなのだ。

2019-03-03 10:59:28
まさむね @mmmichy

ミイラ事件も、漱石の家で響く声の謎も見事に解き明かしてしまうホームズ。そして結末にもある「ネタ」が……もうお腹いっぱい、なのだ。 現在の光文社文庫版は総ルビなので、小説に興味を持った少年少女でも簡単に読める。ホームズにも漱石にも、島田荘司にも興味が湧いて読書の幅が広がるのだ。

2019-03-03 11:02:57
まさむね @mmmichy

どうすか『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』。ぜひ読んでみてください。そして仕掛けてみようという書店さんがいないかなあと思う今日この頃であります。(このスレ終了)

2019-03-03 11:04:10
まさむね @mmmichy

【旧作ミステリ再発見】シリーズは思いついたら突発的にやります。リクエストやご要望なども受け付けますw

2019-03-03 12:05:56
まさむね @mmmichy

島田荘司作品の御手洗潔と石岡和己は、「ある事件」をきっかけにコーヒーを一切飲まなくなってるのですが、他の作品で、二人がコーヒーを飲むシーンがあるかないかで、その作品が「あの事件」の前か後か時系列が分かるようになっています。こういう趣向もホームズを意識していると感じられるところ。

2019-03-03 12:14:12
まさむね @mmmichy

【旧作ミステリ再発見】がそこそこ反響があったので、性懲りもなく第二弾をすぐやってみたい。しかし今回のは版元品切れなので書店での仕掛けは今は無理。なのだが、あわよくば反響を読んで復刊してくれたら、という思いである。(まあ無理だろうけど)その作品とは……(続く)

2019-03-03 19:48:58
まさむね @mmmichy

鯨統一郎『「神田川」見立て殺人』(小学館文庫)だ!! 殺人現場には女性の全裸死体が。容疑者はいるがアリバイを主張している。と、そこに現れたのは間暮(マグレ)警部。事件現場を見てすかさず言う。「これは見立て殺人です」と、かぐや姫の往年の名曲「神田川」を1コーラス歌い切る!殺人現場で!

2019-03-03 19:52:01
まさむね @mmmichy

そう、『「神田川」見立て殺人』は、いわゆる童謡殺人ものでありながら、その曲が昭和歌謡曲なのだ!ww 表題作のほかに、「別れても好きな人」見立て殺人、「空に太陽があるかぎり」見立て殺人、「勝手にしやがれ」見立て殺人、「UFO」見立て殺人などなど。マグレ警部の美声が殺人現場に響く!w

2019-03-03 19:55:16
まさむね @mmmichy

ぶっちゃけ、ミステリとしての完成度やトリックの緻密さとかを追求してはいけない。これは「歌謡曲見立て殺人」というアイデアだけを楽しむ連作なのだ。鯨統一郎はデビュー作『邪馬台国はどこですか?』が有名すぎて、あとの影が薄いが、エンタメに徹したサービス精神は最高なのだ。

2019-03-03 19:58:00
まさむね @mmmichy

ちなみにこの『「神田川」見立て殺人』の続編として、一冊で紅白歌合戦をやりきってしまう『マグレと紅白歌合戦』もあるのだ!www

2019-03-03 20:00:37
まさむね @mmmichy

鯨統一郎作品は飛び道具的なものが多いので、読者を選ぶかもしれないが、ハマれば抜けられなくなる中毒性を秘めている。個人的に好きなのは、これも入手不可だが『喜劇ひく悲奇劇』(ハルキノベルス)。泡坂妻夫『喜劇悲奇劇』へのオマージュで、全ページに回文が織り込まれている珍作だw

2019-03-03 20:04:18
まさむね @mmmichy

西村京太郎先生の「吉川英治文庫賞」受賞を記念して、【旧作ミステリ再発見】を西村京太郎作品でやります。昔から私をご存知の方はお分かりの通り、私がミステリマニアになったそもそものきっかけが西村京太郎なので、それなりに思い入れがあるつもりです。

2019-03-04 23:02:01
まさむね @mmmichy

【旧作ミステリ再発見】西村京太郎先生編その1。『七人の証人』(講談社文庫)。トラベルミステリを出す前の十津川警部シリーズ。こともあろうに、十津川警部が夜道で拉致される(!)シーンから始まる小説だ。気がつくと見知らぬ無人島にいた十津川警部。(続く)

2019-03-04 23:38:02
まさむね @mmmichy

そこには、かつての殺人事件の現場が忠実に再現されていた。その事件で逮捕・投獄され獄中死した男の父親が、息子の冤罪を信じ、ここで関係者を集めて再検証し、真犯人を突き止めようと言うのだ。十津川警部はその検証から真相を明らかにするために現場に招かれたのだ。いや、拉致だけど。

2019-03-04 23:41:06
まさむね @mmmichy

こういう設定の小説って、新本格ミステリでありそうなものだが、その遥か前、1977年に発表する(実業之日本社)という、実に前衛的な作品である。トラベルミステリで人気作家になり、多作化した西村先生しか知らないのは実に勿体ない。西村京太郎はすごいミステリ作家なのだ。

2019-03-04 23:44:39
まさむね @mmmichy

【旧作ミステリ再発見】西村京太郎作品その2は、『華麗なる誘拐』(講談社文庫が現役かな)。首相官邸に「ブルーライオンズ」と名乗るグループから電話が。「日本国民一億二千万人を誘拐した。身代金は五千億」最初はイタズラだと思われたが、無差別毒殺事件が発生して相手が本気だと知る。(続く)

2019-03-05 18:54:35
まさむね @mmmichy

「誘拐」は身柄の拘束ということではなく、全ての日本人を無差別に殺せる自由がある、と主張する「ブルーライオンズ」。パニックになる国民。すると犯人側から新たなる提案が……。冒頭のアイデアが素晴らしいが、サスペンス性も高く、後半に出てくる犯人側の提案が逆に犯人グループを追い詰めていく。

2019-03-05 18:58:49
まさむね @mmmichy

『華麗なる誘拐』という斬新な作品はなんと1977年に書かれている。この前衛ぶり。無差別殺人の社会を予見しており、地下鉄サリン事件が起きた時、私は「ブルーライオンズが本当に現れた」と思ったものだ。なんと「恋人はスナイパー」の映画版の原作にもなった作品だ。

2019-03-05 19:02:33
まさむね @mmmichy

『華麗なる誘拐』は十津川警部シリーズではなく、左文字進という、これも人気探偵のシリーズ。左文字進シリーズは、ジャイアンツの監督(当時は長嶋監督)、コーチ、選手が全部消える『消えた巨人軍』から始まっている。これも昔ドラマ化された。

2019-03-05 19:05:23
まさむね @mmmichy

左文字進シリーズにはほかに『ゼロ計画を阻止せよ』『盗まれた都市』などがある。昔読んだ時はなんだかよくわからない作品で戸惑ったが、『盗まれた都市』はある都市全体が異様な空気に支配される話で、社会性が高い作品だったと思う。読み返すと印象が変わる気がする。

2019-03-05 19:11:16
まさむね @mmmichy

【旧作ミステリ再発見】西村京太郎編その3。『終着駅殺人事件』(光文社文庫)。鉄道を使ったトラベルミステリーの最初期作品で、日本推理作家協会賞受賞作。高校卒業後7年目の男女7人が、ブルートレイン「ゆうづる」で郷里の青森への旅に出るが、上野駅で、鬼怒川で、青森駅で、次々に殺されていく。

2019-03-11 10:48:02