クルセイド・ワラキア #9 後編
◇これまでのあらすじ:ネオワラキアの地へと押し寄せる論理十字軍!吸血鬼ニンジャ殺しのデミ太陽球と戦車部隊が蹂躙を開始!これを迎え撃たんとするブラド・ニンジャとサツバツナイトであったが、論理聖教会の枢機卿ニンジャ「ウリエル」とセラフィムニンジャ部隊の前に一時撤退を強いられる……!◇
2019-03-06 21:43:46◆ニンジャスレイヤープラスより【クルセイド・ワラキア】#9後編◆ pic.twitter.com/S39cd3Dfhz
2019-03-06 21:46:44大聖堂内は、司令部のある上階と強化隔壁で隔てられている。壁の穴やステンドグラスからは、病んだプラズマの陽光が筋となって差し込んできている。隻腕となったレッドドラゴンは残った蝙蝠の群れを呼び集め、己とサツバツナイトを小さなドーム状に包み込んで守った。 0
2019-03-06 21:47:47『コーッ!シュコーッ!さらにデミ太陽球の出力を上げよ!直ちに論理聖数たる128%、いや、256%にまで上昇させるのだ!』ウリエルの電子音声が聖堂内に不気味に反響する。「……ここも長くはもたぬぞ、レッドドラゴン=サン」サツバツナイトは暫時のチャドー呼吸を行いながら言った。 0
2019-03-06 21:47:54「不覚。あの偽りの太陽の力、そして光の銃を侮っておったわ。血が足りぬ……!」ブラド・ニンジャは片膝をつき、口惜しげに言った。一瞬、彼の高すぎる自尊心が邪魔をし、言葉を詰まらせた。だが王とて、形振り構っている時ではない。ブラドは背中合わせのサツバツナイトに身を預けながら、乞うた。 0
2019-03-06 21:48:11「……よかろう」ごく短い思案と覚悟の後、サツバツナイトは己の右腕をブラド・ニンジャの前に差し出した。王が頭を垂れずに済むよう、奥ゆかしく、彼の目の前に。「恩に着る」ブラド・ニンジャはそれをチャワンめいて両手で丁重に受け、サツバツナイトの手首に牙を突き立てた。 1
2019-03-06 21:52:44牙はつぷりと静脈に穴を穿ち、湯気が上がるほど熱いカラテの血潮がサツバツナイトの内側から湧き出て、ブラドの口内に広がった。彼はゴクリ、ゴクリと喉を鳴らし、リアルニンジャの血中カラテを吸い上げていった。血を抜かれてゆく感覚に、さしものサツバツナイトも顔を歪め、チャドー呼吸を深めた。2
2019-03-06 21:56:55血液量にして400ml弱。だが重要なのは血そのものではない。血中カラテを吸い上げられているのだ。脆弱の精神の持ち主であれば、即座に気絶、ないしはパニックに陥っていたであろう。両者ともに強大なるリアルニンジャであるからこそ、こうして冷静に自制心を保てているのだ。3
2019-03-06 22:00:53血を吸い終えたブラドは、口元を拭うと、失った片腕を蝙蝠の群れでかろうじて再生。サツバツナイトに問うた。「……どう打って出る。座して死を待つとは言うまいな」チャドー呼吸によるゼンが血中カラテを介して染み渡ったのか、ブラドは苛烈なる怒りを克服し、幾許かの冷静さを取り戻していた。 4
2019-03-06 22:04:17「……フーリンカザンの教えによれば、満ち続ける潮はなく、また引き続ける潮もない。翳らぬ太陽はなく、また翳らぬ月もない」フジキドはチャドー呼吸の間に、ユカノの教えを反芻した。「一瞬でもあのデミ太陽が翳れば、勝機はあろう。しかしあれは自然物ではない。雲に覆い隠せるものではない……」5
2019-03-06 22:08:17「いかにも、人の手による人工物だ。余が心酔したIRC端末と同じく……」ブラド・ニンジャがゼンモンドーめいて返す。その間にも、2人のリアルニンジャを守る蝙蝠のドームは、銃弾や光を浴びせられて次々に燃え落ち、消えてゆく。このままでは、ジリー・プアー(訳注:徐々に不利)。 6
2019-03-06 22:12:09だが二者はゼンを高め、決して揺るがず、また取り乱しもしなかった。フーリンカザンがために。「ならば、そこに一瞬の翳りをもたらすものとは、人の恐怖、盲目の怒り、奢り、欲望、慢心、ウカツ、あるいは……」サツバツナイトが言いかけた、その時である。 7
2019-03-06 22:15:32ZZZZZT!突如、デミ太陽球がノイズ明滅。電脳都市の漏電ネオン看板めいて、バチバチと火花を散らしたのだ。異常事態である。サツバツナイトとブラド・ニンジャは目を見合わせ、頷いた。「……あるいは、予期せぬ蛮勇であろう」とブラド・ニンジャは笑った。 8
2019-03-06 22:18:05無論、この異常に気づいたのは、彼ら2人だけではない。『コーッ!シュコーッ!何が起こっている!まさか、この程度でデミ太陽球がオーバーヒートを起こしたとでも!?』ウリエルがIRCで問う。『アイエエエエ!ち、違います!』即座に、シスターオイラン技師たちが状況を把握し、返した。 9
2019-03-06 22:21:42『カ、カタナ社の製品に落ち度はありません。地下のオムラ・エンパイアからIRC入電です!エメツ採掘場の発電ユニットが、吸血鬼ニンジャに奇襲されております……!』『コーッ!シュコーッ!何だと……!?』 10
2019-03-06 22:24:45「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」プロイェスティの地下エメツ採掘場、発電ユニット周辺の闇からスーツを纏った黒人の吸血鬼ニンジャが飛び出し、鮮やかな空中3連続回し蹴りでオムラ・アシガルの首を跳ねた!カシウスである! 12
2019-03-06 22:28:25「殿!今援護いたします!イヤーッ!」満身創痍のカシウスは発電ユニットに接近!太い電源ケーブルを脇に抱えこむと、膂力を振り絞り、一本一本強引に引き抜く!「イヤーッ!」接続部からバチバチと火花が散り、カシウスの体を焼く!「イヤーッ!」防護服も纏わぬ無謀!「イヤーッ!」狂気の沙汰! 13
2019-03-06 22:33:06「ネオワアラキアのニンジャを確認!社敵ーーッ!」「「「殲滅!」」」オムラ兵の待機部隊が駆けつけ、カシウスに対してマシンガン斉射を行う! BRATATATATATATA!「イヤーッ!」カシウスは咄嗟の横っ飛びで回避!BRATATATATATATATA!だが制圧射撃で物陰に追い詰められ、身動き不能の状態となる! 14
2019-03-06 22:35:28BRATATATATATA!BRATATATATATA!「「「敵襲!敵襲ーーーーッ!」」」オムラマンたちは電子法螺貝を吹き鳴らす!その間、オムラの制圧射撃は片時も止まない!飛び出せば、さしものカシウスもたちまち銃弾の雨を全身に浴びて死ぬであろう! 15
2019-03-06 22:40:39「オムラ!」「「「ダカラ!」」」「オムラ!」「「「イチバン!」」」「ウケテ・ミロ・ヨロシク!」「「「ウケテ・ミロ!」」」続々駆けつけるオムラ兵!BRATATATATATA!そして火力!火力!火力あるのみ!制圧射撃でカシウスを追い込みながら、たちまち完璧な対ニンジャフォーメーションを形成! 16
2019-03-06 22:43:58「「「イチ!ニ!サン!シー!」」」次のロケット弾斉射でカシウスにとどめを刺すべく、オムラマンたちは秒読み体制に入った!この無慈悲なるサンダンウチが行われれば、カシウスは物陰から炙り出され、蜂の巣となってしまう!……だが、その時! 17
2019-03-06 22:47:31ギャリギャリギャリギャリ!地上部との連結路から猛烈な騒音!(カシウス=サンが危ない!急いで!急いで!)(ファッキンバスタード!道が狭すぎるんだよ!)乱暴な運転で車体のあちこちを壁や天井にぶつけ、火花を散らしながら、カタナ社製のハコブ級反重力キャリアーが乱入してきたのである! 18
2019-03-06 22:51:29