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その6、悪の結社の元戦闘員、南海に散る

窓口基先生の「変身解除」の2次創作だよ https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=59340980 くぼたまこと「天体戦士サンレッド」もいいよ http://www.sunred.jp/
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帽子男 @alkali_acid

元戦闘員はひらりと桟橋に飛び移ると、ベルトポーチからSDカードを取り出し、じっと見つめてからまたしまう 「よーしいくぜ。こんなに悪らしい気分になれたのは久しぶりだ」

2016-06-08 22:16:56
帽子男 @alkali_acid

ずんずん進んでいくが、機械警備は反応を示さず、巡回する戦闘員の姿もない。拍子抜けをして、元研究員に教わった通り、メガフロートの中枢、再生された総統の頭脳が浮かぶ制御室へ向かう。

2016-06-08 22:18:04
帽子男 @alkali_acid

「広いなあ…そういえば海上要塞も端から端まで歩くと相当かかったっけなあ…ぐす…懐かしいなあ…確かこの廊下でノコギリサイさんが…」

2016-06-08 22:19:05
帽子男 @alkali_acid

血のにおいがする。ぎくりとして立ち止まり、周囲を見まわしてから、また先へ進む。なまぐさい香はどんどん強くなる。 やがて、それがあった。壁にめりこんだ戦闘員の死体。頭を一撃でざくろみたいに叩き潰されている。側には折り曲げられた銃。 「お、おい…これ…」

2016-06-08 22:20:29
帽子男 @alkali_acid

震えながらも前へ前へとゆくと、無数の死体。あの微妙に似てない戦闘服をまとった外国の新生結社メンバー達。人質だったはずの乗組員も。無残に死んでいる。 「なんだこりゃ…そ、そうか…こいつらは自爆装置なんかないから、死ねば死体が残るのか…びっくり」

2016-06-08 22:21:46
帽子男 @alkali_acid

ただ元戦闘員も人死にそのものには見慣れている。気を取り直すと、確固たる足取りで、制御室に向かう。背筋に寒けを覚えつつも。 けれど たどりついた先にあったのは、粉々に砕けた水槽。まるでひっくりかえった茶碗蒸しのように崩れた巨大な脳味噌の残骸

2016-06-08 22:23:23
帽子男 @alkali_acid

「そ、総統…そんな…う、うおぇええええ…」 がらにもなく吐き気に襲われ、床にカロリーメイトを戻してから、走って逃げだす。とにかく離れた方がいい。だが焦りすぎたせいか。道が分からない。地図を確認するが、今どこにいるかがはっきりしない。階段がある。上へゆける。とにかく登ろう。

2016-06-08 22:25:02
帽子男 @alkali_acid

上へゆけば全体が見渡せる。まず外に出たい。風にあたりたい。走る走る走る。 「イ゙ーッ!イ゙ーッ!イ゙ーッ!」 無我夢中で叫ぶ元戦闘員。

2016-06-08 22:25:52
帽子男 @alkali_acid

たどりついたのは、荷物の積み下ろし場。開けた甲板のような空間に、無数のコンテナが積んである。 潮風がはなをくすぐる。曇り空で、南の強い日差しも遮られているが、肌には熱気が感じられる。外だ。 「うう…どうなって…あ、そうか」

2016-06-08 22:27:47
帽子男 @alkali_acid

忘れていた。これは本物の悪が巣食う場所。昔ながらの戦のちまた。 この世に悪がある限り、必ずあらわれる存在がいる。

2016-06-08 22:28:26
帽子男 @alkali_acid

なりひびくトランペットの音。見上げると、高く積んだコンテナの上に、テンガロンハットをかぶり、楽器を手にした男の姿が。 「ふ…結社の手先にまだ生き残りがいたとはな…」 「お、お前は!!」 震えて指さす元戦闘員に、男はにやりと笑って跳躍する。 「とう!変身!」

2016-06-08 22:28:53
帽子男 @alkali_acid

体の左半分は黒、もう右半分は白。輝く瞳。右の拳に旋風(つむじかぜ)、左の拳に稲妻(いなづま) 「疾風迅雷…フウライガー!!!」

2016-06-08 22:30:27
帽子男 @alkali_acid

「お、お前…お前がやったのか…あれ?でも乗組員は?」 わななく元戦闘員に、黒白のヒーローはしずかに答える。 「ああ、あれは事故だ…というか、戦闘員どもの数が少なすぎて、倒したりなくてな」 「は?」 「まあ私が到着したころにはすでに遅すぎた、そういうことにしておく」

2016-06-08 22:32:05
帽子男 @alkali_acid

元戦闘員はおののく指を向けたまま重ねて訊く。 「お前、そんな半端な正義じゃなかっただろ…もっとこう、強きをくじき、弱きを助ける。けじめのついたヒーローだっただろ」 「ああ、だが貴様らが悪いんだぞ。たった一年で壊滅して…たいした印象も残さず、おかげで助っ人や大集合にも私は呼ばれん」

2016-06-08 22:33:44
帽子男 @alkali_acid

フウライガーは首を振って告げる。 「信じられるか?私ほどの力を持つヒーローが…たった一年戦っただけで…もういらないだと?この…悪と戦うために開発した、疾風チョップも、迅雷パンチも、竜巻キックも、霹靂ヘッドバットも…用済みだと…あまりに…あまりに残酷だ」

2016-06-08 22:35:17
帽子男 @alkali_acid

「そこへ来て、貴様ら結社が復活するという。私は歓喜したよ。決してあるはずがない第二シリーズが始まるのだと…だが来てみればどうだ。過激思想にかぶれた学生くずれに率いられた、貧民窟あがりの強盗団。私が叩き潰す寸前、母親の名前を呼ぶ。最近の社会派気どりにありそうなクズども」

2016-06-08 22:36:53
帽子男 @alkali_acid

「おまえけに乗組員どもまで私の邪魔をする。やりすぎだとな…やりすぎ…何がだ!!」 フウライガーの拳がコンテナを打つと、すさまじい勢いで鋼鉄の厚板が凹む。 「せめて怪人の一匹さえいればまだ…」 「だ、だから総統を復活させてこれから色々しようとしてたのに…あ、いまのなし」

2016-06-08 22:38:12
帽子男 @alkali_acid

うっかり口をすべらせた元戦闘員に、ヒーローはぎろりと一瞥をくれ、いきなり神速で間合いを詰めると、ベルトポーチを奪い取った。 「あ、あー!?」 「ふ、昔のようにイ゙ーッとだけ叫んでいればよかったのに。上から下まで口の軽い奴らだ。Dr.デスも死ぬ前べらべらしゃべっていたな…さてと」

2016-06-08 22:39:23
帽子男 @alkali_acid

フウライガーがSDカードをつまみだし、目から光線を発して走査を始める。 「ふうむ…なるほど…く、くはははははは!!」 「お、おい返せよ」 「ああ…」 ぽいとカードを放ってよこすヒーロー。元戦闘員はフリスビーを負う犬のようにそれをとりにいく。

2016-06-08 22:40:36
帽子男 @alkali_acid

「く、くそお…昔のお前はこういう陰湿なことをしない。クールな中にも気持ちのいい正義だったのに」 「だまれ…まあいい。変わったのは私だけではあるまい」 「どういう意味だ」 「お前のそのSDカード。システムを自壊させるプログラムが仕込んであったぞ」 「えっ…」

2016-06-08 22:42:10
帽子男 @alkali_acid

「きさまも正義に転向してヒーローのまねごとか?戦闘員ふぜいが…そうすれば我等の仲間入りができるとでも?」 問いかける黒白の戦士に、元戦闘員はげっそりして首を振る。 「また…あの人にだまされた…ほんと…科学者って…」 「なんだ、知らなかったのか。うかつなやつだな認識番号***」

2016-06-08 22:43:48
帽子男 @alkali_acid

「な、なんで俺の認識番号知ってんだ?」 「知っているさ。秘密結社の戦闘員の中でもおおまぬけ。幼稚園のバスジャック作戦では、園児の群にしがみつかれておもちゃにされ、地獄の人面魚作戦では、興味津々で遊びに来たバンドウイルカにどつきまわされ」 「ギギギ」

2016-06-08 22:45:04
帽子男 @alkali_acid

「あげくにたった一人生き残るとはな…だがお前のような三枚目キャラを見逃してやる気持ちは今の私にはない…飢えているのだ…敵にな…どんな雑魚でも潰したい気分だ」 「く…く…」

2016-06-08 22:45:56
帽子男 @alkali_acid

元戦闘員は足を開き、両手を高くかかげ、指を折り曲げて叫ぶ 「イ゙ーッ」 「ほう…」 「イ゙ーッ!イ゙ーッ!イ゙ーッ!イ゙ーッ!イ゙ーッ!」 「たった一匹では、その叫びもさまにならんぞ戦闘員」 「イ゙ーッ!」

2016-06-08 22:47:06
帽子男 @alkali_acid

フウライガーはつかつかと近寄ると、指をたわめ、いきなり元戦闘員の額をはじいた。電撃がひらめき、相手は煙を上げながら崩れ落ちる。 「ぶざまだな…私の戦いが…こんなゴミ掃除で終わるとは…」

2016-06-08 22:48:33