ちっさくなった兄様 勇尾 原作軸

tweetまとめ 呟いた順なので、ちょろっと同じ設定で別軸の話がまじってます。 Twitterのツリーの方が読みやすいです。 加筆して小説にしました!→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14485114
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夏目一加 @natumeitika

兄の存在は二人だけの秘密で、弟はどんなことがあっても兄を守ろうと思っていた。

2019-03-13 19:41:37
夏目一加 @natumeitika

兄のほうも、昼間弟がいない間はすることがなくて暇でしょうがないが、弟が戻ってくると、なにかとわがままを言っては自分の面倒をみさせたたり、わざと卑猥なことを言ってからかったりして、それなりに楽しくこの生活を送っていた。

2019-03-13 19:50:20
夏目一加 @natumeitika

しばらくして戦争が始まった。

2019-03-13 19:55:08
夏目一加 @natumeitika

今までも演習などで弟が数日帰れないときもあったが、出兵となるわけが違う。 兄は「その時が来たら俺を捨てて下さい」といって、弟を泣かせた。

2019-03-13 19:58:38
夏目一加 @natumeitika

弟は兄の前では明るく今までと同じように振る舞っていたが、それでも兄は弟が思い詰めていることに気づいていた。 兄は自分が弟の負担になっていることはわかっていた。弟のために自分が消えるのが一番だとわかっていたけど、それができずにいた。離れがたかった。

2019-03-13 20:10:10
夏目一加 @natumeitika

ある休日。 いつもの同じように弟は兄をポケットに入れて二人で出かけた。弟はそれきり軍には戻らなかった。

2019-03-13 20:13:40
夏目一加 @natumeitika

「勇作さん、どこへいくのですか?」 「わかりません。もう北海道の寒さにはこりごりです。とりあえずは暖かいとこに向かいましょうか。そしてどこか静かで落ち着けるところを見付けたらそこで暮らしましょう。勇作は兄様とずっと一緒です」

2019-03-13 20:23:54
夏目一加 @natumeitika

軍を抜けたことは微塵も後悔していない。兄がいてくれる、それだけで弟にはこの先の不安なんて何もなかった。 ポケット越しに伝わってくる兄の体温が温かくて、それだけで満ち足りた気持ちになった。

2019-03-13 20:31:46
夏目一加 @natumeitika

北海道の旭川を立ってから数日、もうすぐ関東というところまで来た。

2019-03-13 20:37:13
夏目一加 @natumeitika

ここまで追手は見当たらない。少しくらいゆっくりしてもいいだろうと街に宿をとり、名所を見て回ったりしながら、のんびり過ごしていた。

2019-03-13 20:46:53
夏目一加 @natumeitika

地元の人に教えられた景色の良い丘で二人きり、旭川で休日を過ごしていたときと同じように一人前の弁当を二人で食べた。 「たくさん歩きましたが、来て良かったですね。ほら、街があんなに遠くに見えます」

2019-03-13 21:08:19
夏目一加 @natumeitika

「俺は歩いていないんで、疲れてませんけどね」 兄は嬉しそうにしている弟の顔を眺めながら、何がそんなに楽しいんだがと呆れた。

2019-03-13 21:17:05
夏目一加 @natumeitika

「ちょっと用を足して来ます」 そう言って兄は弟のそばを離れた。背を向ける兄に弟が声をかける。 「あまり遠くへは行かれないで下さいね」 兄は振り返らずに「わかっています。声の届く範囲にはいますから」といって茂みに消えた。

2019-03-13 21:23:15
夏目一加 @natumeitika

それきり兄は弟の元には戻らなかった。

2019-03-13 21:24:43
夏目一加 @natumeitika

日が暮れる。 遠くから自分を呼ぶ弟の声が何度も聞こえてきていたが、兄は物陰に身を潜め耳をふさいでいた。

2019-03-13 21:40:35
夏目一加 @natumeitika

辺りから弟の気配がなくなるのを待ってから、兄は物陰から出た。 日はどっぷり暮れていた。 明るくなったら、また弟が探しにくるかもしれない。 今のうちに少しでも遠くに行こうと思ったが、もう自分がどこから来たのかもわからなくなっていた。

2019-03-13 21:51:59
夏目一加 @natumeitika

小さな体では何もかもが巨大で、草が生えているだけで迷路の中にいるようなものだった。それでも草の根元を縫うように進む。 弟から離れて、もうどこにも行く当てはなかった。

2019-03-13 22:05:00
夏目一加 @natumeitika

飢え死にが先か、動物に食われるのが先か。どちらにせよ長くは生きていられないことはわかっていた。

2019-03-13 22:07:55
夏目一加 @natumeitika

歩き始めて一刻も経っていないのに、もう兄は野犬に襲われ生命の危機に陥っていた。 命からがら若木に登ってとりあえずは窮地を脱したものの、こんな細木じゃいつまでもつかわからない。

2019-03-13 22:19:44
夏目一加 @natumeitika

野犬はひっきりなしに幹に体当たりをしたり、齧ったり、爪で引っかいたりしている。

2019-03-13 22:23:24
夏目一加 @natumeitika

そのたびに木が揺れて、枝からふるい落とされそうになる。

2019-03-13 22:30:26
夏目一加 @natumeitika

「もう少し生きてるつもりでいたんだけどな」 必死に枝にしがみついていたが、いい加減手もしびれてきた。

2019-03-13 22:41:52
夏目一加 @natumeitika

もう、この手を離してしまおうか……。

2019-03-13 22:46:01
夏目一加 @natumeitika

「兄様! そこにいるのは兄様ですか!?」 遠くに明かりが見えて、それがどんどん近づいてくる。

2019-03-13 22:50:38
夏目一加 @natumeitika

弟が野犬を追い払う間、兄は枝にしがみついたまま、一言もしゃべらなかった。 「もう大丈夫ですよ」と弟が兄を手のひらに抱こうとしたので、兄は枝に抱きついて抵抗したが、あっけなく弟に剥ぎ取られてしまう。

2019-03-13 22:59:36
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