日向倶楽部世界旅行編第78話「負けられないのは誰の為」

利根との戦いに惜敗する伊勢だったが、不意を突いて筑摩を撃破、利根と日向の一騎討ちを演出する。 負けられないという強い意志の元、激突する二人、それを遠目に見守る伊勢の思惑とは……
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三隈グループ @Mikuma_company

「しっかりせい、筑摩ッ!」 「姉さん…いつもそうやって…」 「貴女は勝たなくっちゃあいけないんだよ、日向」 「姉さんの強いところ…見せてやってよ…!」 「己の甘さ…妹の痛み…」 「私は負ける訳にいかない」 「この一撃に懸ける…」 日向倶楽部、この後21:00! pic.twitter.com/OICLKsOG7E

2019-03-19 20:45:17
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【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 大変な事になりました、利根姉妹の筑摩が伊勢によって…ああ!私はどうすれば良いのでしょう、このまま日向の戦いを見届けるか、あの娘の様子を見に行くか、私が二人いれば良いとこれ程までに思った事はありません…一体、一体どうすれば…!

2019-03-19 21:00:24
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【前回の日向倶楽部その2】 準決勝第二試合、横須賀利根姉妹となかよし伊勢型の激戦。計略により一対一の勝負に持ち込んだ伊勢は、利根と互角の戦いを演ずる。 しかし上回ったのは利根、伊勢は手痛い一撃を受ける。だがその直後、伊勢は日向と交戦する筑摩に対し、光弾を炸裂させるのだった。

2019-03-19 21:01:27
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第78話「負けられないのは誰の為」

2019-03-19 21:03:07
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〜〜 「筑摩ーッ!」 伊勢のオーラ・シュートの直撃を受けた筑摩の名を、利根は大きな声で叫ぶ。筑摩は大きく吹っ飛び、彼方で浮き袋に浮いていた。 「う…うう…」 その姿は痛々しいものだった。制服は大きく激しく破け、艤装は全損、また口の中が切れたのか、口元からは血が出ている。

2019-03-19 21:04:11
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「筑摩、筑摩ッ!」 致命打を受けた妹の元へ、利根は戦いも忘れ慌てて駆け寄る。 「筑摩、しっかりせい、筑摩ッ!」 ずぶ濡れになりながら浮く筑摩に、利根は必死で呼びかける。 「う…ね、姉さん…姉さん…」 そんな彼女に、筑摩はうわ言の様に応える。意識はあるが、あるだけだった。

2019-03-19 21:05:02
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朦朧とする筑摩、それを前に利根は、最早試合などしている場合ではなかった。 「大丈夫か筑摩!今、今試合を終わりにする!」 彼女はそう言って、降参を選ぼうとする。しかし利根がそうしようとした瞬間、朦朧としているはずの筑摩がそれを止めた。 「だめ…姉さん…だめよ…」

2019-03-19 21:06:14
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筑摩は掠れた声で必死に、姉の降参を止める。だが利根はそうする訳にもいかない、妹が怪我をしたのだから。 「バカを言うでない!お主、今自分がどうなってるか分かっておるのか!」 叱る様に言う利根、されど筑摩は聞かない。 「怪我したのは私でしょ…姉さんは、まだしてない…」

2019-03-19 21:07:10
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言う事を聞こうとせず、手を離さない筑摩、利根は一層声を張り上げる。 「何を言う…お主が怪我したら、ダメじゃろう!我輩の方が姉さんなのじゃ、お主の怪我を放っておけるか!」 利根は今度こそ降参しようとする。しかし、筑摩は満身創痍とは思えぬ力で姉の行動を止めた。

2019-03-19 21:08:14
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「姉さん…いつも、そうやって…」 筑摩は血に塗れた顔から、強い目で利根を見つめる。 「私の事ばかり…自分の事、いつも後にして…。小さい頃から、ずっとそう…いつもいつも、私の事ばかり…この前だって…」 彼女の掠れた声が、大きくなる。

2019-03-19 21:09:14
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「それが嫌…私、姉さんが私のせいで負けるの、見たくない…!」 遠くから、筑摩を乗せるために救護ボートが近付いて来る。 「戦って…私の事は気にせず、みんなに姉さんの強いところ…見せてやってよ…!姉さんは…世界で一番、カッコいいんだから…!」

2019-03-19 21:10:13
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そこまで言った彼女を、救護班が救護ボートに乗せた。 「筑摩、筑摩ッ!」 「私は大丈夫だから…姉さん…」 筑摩を乗せた救護ボートは、迅速にその場を去る。ボートはあっという間に小さくなった。 「筑摩……」 一人残された利根は、小さくなったボートを見て呟く。試合はまだ、続いている。

2019-03-19 21:11:28
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そんな彼女の背中を、日向はジッと見ていた。そこへ伊勢が通信を送る。 「日向…なんで撃たなかったの?」 「何…!?」 日向が眉をひそめると、伊勢は続ける。 「何もカニも…あの姉妹が仲良く無駄口叩いてる間、最高のチャンスだったでしょ?撃てば良かったじゃん」

2019-03-19 21:12:43
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伊勢の言う事は、勝利を目指すという意味では最もだった、利根姉妹は大きな隙を晒していた。 しかし、日向にそれは出来なかった。傷付いた妹に駆け寄る利根を、彼女は撃つ事が出来なかった。 「対戦相手の殺害は失格だ…あそこで、そんなリスクは負えない…」

2019-03-19 21:13:49
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日向は半分建前とも言える答えを返す。しかし伊勢は、彼女の本心が良心の呵責である事を見抜いていた。 「ふーん…まあ、良いけど…勝たないと危ない目に遭うのは貴女のお友達って事、少しは思い出した方が良いんじゃない?私、貴女に興味はあっても、貴女の周りにはそんなの、無いからね。」

2019-03-19 21:14:42
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伊勢が脅して言うと、日向は怒りを露わに顔をしかめる。 「貴様…!」 低い声で言う日向、しかし伊勢はまるで動じない。 「貴女は私から、いくつもある大切なものを一つ奪われるだけで泣き崩れる。でも貴女は、私が何を持ってるかすら知らない…身軽さが違うよねぇ、勝負にもならないんだ。」

2019-03-19 21:16:10
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彼女は不敵に脅しをかけると、今度は唆して言った。 「貴女は勝たなくっちゃあいけないんだよ、日向。今がそのチャンス…あいつは背中を向けてる、先手を取れるよ。」 伊勢の言う通り、利根は今、日向に背中を向けて立ち尽くしている。仕掛けるなら今であった。

2019-03-19 21:17:33
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「…ッ!」 日向は目を細め、狙いを付ける。 伊勢の言う事は最もだし、ここで仕掛けてもルールには抵触しない。だが、彼女の口車に乗せられている、そんな気がする。日向は、背中に嫌なものがへばりついている様な感覚を覚える。 「しかし…やるしか、無いのだ…ッ!」

2019-03-19 21:18:41
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乗せられている、乗せられ続けている、あの晩伊勢と出会ってからずっと、そういう自覚があった。 だが今、やるしかない!日向は覚悟を決め、利根に狙いを定め、主砲四基をぶちかました! しかし!いや当然! 「…そんな攻撃に、この我輩が当たると思うてかッ!」 利根はその砲撃を、悠々と避けた!

2019-03-19 21:19:45
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「まあ、そうなるよな…!」 振り向き、こちらを睨む利根に日向は身構える。そこへ利根は、怒りを滲ませながら言った。 「これは試合じゃ…お主らを悪と言うつもりはない…。しかし!」 声量が大きくなると、彼女の拳から、赤く淡い光が漏れ出す!

2019-03-19 21:20:57
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「己の甘さ…妹の痛み…この、湧き上がる怒りは、お主にぶつけさせてもらう!覚悟は良いなッ!?」 利根はそう言うと、両手を打ち鳴らし、赤い光弾を生み出す! 「集えよ蛍火、我が敵を討て!晴嵐、波紋弾ッ!」 彼女はそれを、日向へと放った!宣戦布告の一撃である!

2019-03-19 21:22:18
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日向はそれを避け、反撃を放つ! (私は負ける訳にいかない…負けられないんだ!何だって良い…私に、私に力を貸してくれッ!) (我輩はまだまだ弱い、甘いのだ!今のままでは筑摩を守れぬ、もっと、もっと強く…!) 両者共にパートナーは居ない、利根と日向の戦いが始まった! 〜〜

2019-03-19 21:23:36
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〜〜 「始まったね…」 二人の戦いを、伊勢は浮き袋の上で遠巻きに見ていた。 伊勢の艤装は損傷こそ激しかったが、まだ戦えるレベル。しかし彼女は浮き袋を展開してこの試合から離脱し、高みの見物を決め込んでいた。

2019-03-19 21:25:30
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(横須賀の研究成果はある程度知れた…後は他を、何処まで調べられるか…) 利根が放つ赤い光、日向が纏う緑の光、彼女は二つを交互に見た後、自らの手から浮かぶ青い閃光を見て目を細める。 (あの緑の光、恐らく横須賀の研究とは別の物…。自然発生したのか、或いは研究を進める組織が他にあるか…)

2019-03-19 21:26:31
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彼女がそう思ってるうち、利根と日向の交戦が本格化し始めてきた。 (どの道今のままでは判断材料が少ない…しかし、これは僥倖だよ。横須賀の研究に未知の光、二つがここにある。日向、なるべく多くを見せてよね…その為に、貴女をここまで連れて来たんだから…) 〜〜

2019-03-19 21:27:52