日向倶楽部世界旅行編第78話「負けられないのは誰の為」

利根との戦いに惜敗する伊勢だったが、不意を突いて筑摩を撃破、利根と日向の一騎討ちを演出する。 負けられないという強い意志の元、激突する二人、それを遠目に見守る伊勢の思惑とは……
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三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 利根と日向の一騎討ちは、利根が優勢となっていた。 「クソッ!弾は当たらんか…!」 日向の狙い澄ました砲撃達は、利根の鮮やかな身のこなしに全ていなされる。一対一、利根との航空戦で艦載機も封じられている今、ただの砲撃では有効打にならない。

2019-03-19 21:30:27
三隈グループ @Mikuma_company

艦載機や砲撃といった、手数の多さが日向の強みであり得意分野。それを抑えられている今、彼女はその強さを発揮しきれない。 (このままでは接近されて押し切られる…しかし、主砲の投棄は装甲の投棄と同義…万に一つの保険が無くなる…!) 利根を牽制しつつ、日向は思考を巡らせる。

2019-03-19 21:32:51
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(…機動戦は奴のホームグラウンド、今身軽になったところでそこへ飛び込むだけに過ぎん…ここは火力を活かす!) 日向は素早く決断し、利根と対峙する。 そこへ利根は! 「集えよ蛍火!晴嵐、波紋弾!」 いくつもの赤い光弾を放つ!それらは直進する高速弾!

2019-03-19 21:33:41
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日向はそれを、細かな動きで避けていく! 「見た目に惑わされるな…エネルギー弾だろうと、軌道が単純ならただの砲撃だ!」 避けつつ、砲撃をぶちかます。彼女の砲撃は当たらない、しかし相手を近付けさせる事もない。中距離戦を維持しながら、戦況を膠着させるのだ。

2019-03-19 21:35:01
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(利根は身軽だが、戦闘力の大半を自身の身体能力に依存している…。無論、その身体能力が何より厄介だ、接近戦では奴が間違いなく優位、しかし…!) 砲撃戦では決着をつけられない、しかし接近戦では利根に分がある、圧倒的不利。 その中で、日向は僅かな勝機を見出そうとしていた。

2019-03-19 21:36:16
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(だからこそ、奴は艤装に頼れる私以上に疲れやすいはずだ…!中距離戦では分からずとも、接近すれば僅かな要素が一瞬の勝敗を分ける…私より多くの疲労が重なった奴になら、勝ち目があるはずなのだ…!) それは希望的観測としか言えない、だがこのままならぬ状況でなら、賭ける価値はあった。

2019-03-19 21:37:28
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その直後、試合は動く。 「筑摩よ…すぐに終わらせるぞ、この試合!」 日向の牽制射撃を掻い潜りつつ、利根が接近を始めた。日向はその行動に対し、弾幕を強くする事で応戦する。 (体力で差を付けるんだ…奴に、なるべく多くの負荷をかける…!) 日向はひたすらに主砲を放つ。

2019-03-19 21:38:42
三隈グループ @Mikuma_company

回避を強要させ続け、少しでもアドバンテージを稼ぐ。ほんの少し、ほんの少しで良い、汗を一粒多くかかせるだけで良い、そこに賭ける。 「フンッ!この程度造作も無い!波紋弾!」 利根も波紋弾で日向に応戦、彼女は距離を詰めながらも砲撃戦を演出、日向にプレッシャーをかける。

2019-03-19 21:39:31
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しかし利根の放つ波紋弾は所詮サブ、副砲の様な技、日向の持つ四基八門の主砲とは手数の差が大きい。この砲撃戦は日向のペースで進む! (まだ、まだだ…まだ近付けさせるな…!) 日向はひたすらに応戦、利根にとにかく負荷をかけ続ける!砲撃のボディブロー!

2019-03-19 21:40:42
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されどその均衡、利根が破る! 「この身、翻りて舞わんッ!」 彼女の足元に淡く赤い光が集う、そして! 「…ッ!やはり跳ぶか!」 利根は海面を蹴り、水飛沫を上げ勢い良く跳んだ!赤くキラキラとした光が飛沫の中に煌めく、青空を背に、利根は跳ぶ!

2019-03-19 21:41:50
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「空中…撃ち落とせるか!?」 日向は主砲の仰角を上げ、空中の利根に狙いを定める。普通、空中に跳躍した人間は軌道を変えられない、狙い撃つのは容易! だがそうなってしまうのなら、利根はこんな距離で飛ばない!彼女が自信満々に飛んだのは! 「落とせはせぬ、我輩は落ちぬッ!」

2019-03-19 21:43:08
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空中で、その軌道を変えられるからだ!利根は何もない空間を蹴り飛ばしながら空中を飛び回る、日向の砲撃は当たらない! (ダメだ、軌道が読めん…!) 水上なら、波や速度から相手の軌道を読める。普通に空を飛ぶ相手でも同様、軌道を読めない事もない。 だが利根のやっている事は、読めない!

2019-03-19 21:44:25
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(何処で軌道を変えるのか、何処を蹴り上げるのか、分からん…!方向も速度も、全てバラバラだ!) 自身の持つ豊富な経験が全く通じない軌道、日向は砲撃を敢行し続けるが、その全てが避けられる。せめて艦載機だけでも使えればと、何度思った事か! 無敵!今の利根に、弾は当たらない!

2019-03-19 21:45:46
三隈グループ @Mikuma_company

しかし日向、焦りの中で冷静さを取り戻す。 (落ち着け…今の私にあの動きは見切れん。なら、その後を考えろ…接近されるのなら、私はどうする…!?) 利根の動きは激しい、だがそれだけとも言えた。あくまで接近する為だけの回避行動、日向はそういう風に見た。 それなら、水上と同じだ。

2019-03-19 21:47:04
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(奴は空から攻めた末に、攻勢に出る…そこだ、その空と海の切れ目が唯一隙になる。回避に集中出来なくなったその瞬間を狙う!) 日向は決断し、その為の行動を起こす! 彼女はなんと空中から接近して来る利根に対し方向転換、逆に自ら利根との距離を縮めた! 「…何!?向かって来るか!」

2019-03-19 21:48:47
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日向の動きを利根は訝しむ、突然の反転には何か思惑があると。 しかし彼女に思考する時間を日向は与えない、ひたすらに主砲を乱射、一切の狙いをつけずに乱射する! (デタラメな砲撃だ、却って回避には神経を使うだろう!) 彼女は真っ直ぐ直進、空にある利根の下を潜り抜ける!

2019-03-19 21:49:55
三隈グループ @Mikuma_company

「背後に回るか!?」 利根は真下を抜けた日向へ波紋弾を放つ、距離が近かった!それは日向の主砲の一つに命中する、クリーンヒット! 「グッ…!」 命中弾、破壊の衝撃が日向を揺らす。しかし彼女は直進を止めない、進み続ける! その動きに不審を感じ、利根は思考する、狙いを推察する。

2019-03-19 21:51:18
三隈グループ @Mikuma_company

(距離を取ると見せかけ、奴が狙うのは着水の瞬間か…!?だが着水はカバー出来る…) このまま着水して仕切り直す、だが利根は思い留まる。 (…いや、この空中での跳躍、今の一回で奴が見切った可能性もある…。距離を取れば状況は振り出し…我輩を消耗させる意図もあるやもしれん…)

2019-03-19 21:52:29
三隈グループ @Mikuma_company

筑摩を守り切れなかった事実、そして何より、試合を早く終わらせ、大怪我をした妹の元へ向かおうという意思…利根の思考が揺らぐ。 (…奴はきっと頭が良い、策を練る時間を与えてはならん!ここは、一気に決めるッ!) 利根は即決、空中を蹴って反転し、日向の背中を全速で追う!

2019-03-19 21:54:13
三隈グループ @Mikuma_company

その、彼女が日向に向かい始めた、瞬間! 「一発勝負だ、懸けるぞッ!」 日向は突如二基の主砲を投棄!軽くなった艤装で速度を上げた! 「何じゃと…!」 加速した日向は、利根の接近軌道の先から僅かにズレる!利根の狙いが僅かに狂った! 「ッ…!じゃが距離は詰めた…ここは突っ切る!」

2019-03-19 21:56:17
三隈グループ @Mikuma_company

彼女は投棄された艤装の前に着水する。 それと同時! 「ここだ!主砲、撃てッ!」 日向の砲撃がすっ飛ぶ!水上で一気に方向を転換しつつの、艦娘ドリフト砲撃! 大変な姿勢制御、不安定な姿勢での狙い、それでも彼女は大きな水飛沫を上げながら、極めて正確な砲撃をぶちかます!

2019-03-19 21:57:32
三隈グループ @Mikuma_company

「やはり狙って来たかッ!」 だが利根、着水を狙う砲撃に備えガードの構えを取っていた!問題はない! しかし日向の一撃は、彼女の予想とは全く違うものに着弾する! 「何ッ!?」 撃ち抜かれたのは、投棄された日向の艤装! (外したのか!?それともワザとか!?)

2019-03-19 21:59:35
三隈グループ @Mikuma_company

爆発が起き、水飛沫と爆煙が舞い上がる!そのまるで雲の様な壁は、利根の視界を大きく遮った! 「いや、故意か!目くらましで時間を!」 この壁の先で逃走を図ったであろう日向を追わんと、利根は飛沫を突き抜けようとする!逃す訳にはいかない、早く妹の元に向かうべく、一気に仕留めにいく!

2019-03-19 22:00:51
三隈グループ @Mikuma_company

その時だった! 「この一撃に懸ける…懸けるぞォォォッ!!!」 利根の前にあった水飛沫と爆煙を切り裂き、日向が飛び出して来た! 「何じゃと…!?」 目を見開く利根の前に現れたのは、全ての砲を投棄し、刀と甲板だけを構えた日向!

2019-03-19 22:02:08
三隈グループ @Mikuma_company

「私から来てやったぞ!キミの間合いになァッ!」 彼女は緑の光を帯びた刀を、勢い良く振り抜いた! 僅かな差、二人の間に生まれた疲労の差!そして試合への焦りから利根の判断が一瞬遅れる、故に彼女のガードは不完全! 「ぬぐあァッ…!」 右手の小手甲板が一撃によって砕けた、初の有効打だ!

2019-03-19 22:03:25