尾上先生の勉強風景 (20) Durham, William H. (1991) Coevolution: Gene, Culture, and Human Diversity など

ダーウィンのフォースが
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尾上正人 @9w9w9w92

Durham, William H. (1991) Coevolution: Gene, Culture, and Human Diversity, Stanford University Press. ボイド&リチャーソンと並ぶ、(遺伝子と文化の)共進化説の草分け的存在。またしても本文500ページ近い大著(号泣)

2019-04-04 13:54:01
尾上正人 @9w9w9w92

「今日の世界におけるヒトの差の減少の加速…『均質化(homogenization)』…ここ数百年は、それ以前のヒトの多様性の増加に向かった数千年の一般的トレンドをひっくり返すことに成功した」pp.1-2.

2019-04-05 04:27:41
尾上正人 @9w9w9w92

「私には、社会生物学は誤っていたというよりむしろ、ヒトの行動の多様性を説明する理論として本質的に不完全だったように思われる。…より包括的で体系的な、遺伝子―文化関係の研究が求められた…問題は、遺伝子と文化がヒトの多様性への影響において関連している<かどうか>ではなく、<いかに>だ」p.2

2019-04-05 04:36:34
尾上正人 @9w9w9w92

ギアーツ(1973)「情報の種類と伝達の様式が2つのケース[DNAと文化]では大きく異なっているとは言え、遺伝子とシンボルのこの比較は不自然なアナロジー以上のものである。…それは実際には本質的な関係だ」p.10. 1970年代のギアーツはこんなことを言ってたのか…信じられん(^ ^;)

2019-04-05 09:54:39
尾上正人 @9w9w9w92

ドブジャンスキー(1962)「ヒトの進化は純粋に生物学的な過程としては理解できないし、文化の歴史として適切に叙述することもできない。それは生物学と文化の相互作用なのだ。生物学的過程と文化的過程の間にはフィードバックが存在する」p.10.

2019-04-05 09:58:05
尾上正人 @9w9w9w92

「文化の観念的(ideational)概念化をせず、文化進化の理論もないので、ヒトの社会的行動の社会生物学的説明は、社会生物学の狭い定義を強化してきた」p.18.

2019-04-05 12:14:16
尾上正人 @9w9w9w92

「本書の関心は、各々がそれ自体で文化進化の例である2つの進展のパラレルなセットから、すなわち、人類学における観念的理論の出現と、生物学における社会行動の遺伝的進化のための理論の出現から、直接に派生したものと見ることができる」20 人類学の ideational理論って凄いのか?今じゃ聞かんぞw

2019-04-05 14:40:07
尾上正人 @9w9w9w92

かつて人類学者クローバーは、遺伝的伝達と文化的伝達の違いは前者が分岐するのみなのに対して後者は分岐もするが統合もすることだと述べたが、皮肉なことに、遺伝子の非メンデル的な伝達様式(重複や、種内・種間の伝播など)が知られるようになり、両者の距離は縮まった。p.24.

2019-04-05 15:26:14
尾上正人 @9w9w9w92

人類学が文化進化理論に取り組むメリットは—— ①「文化創造説」(創られた時から固定的で修正されずに持続)を避ける ②文化システムへの理解が改善する ③観念的システムの歴史的出現と分岐の傾向の説明を目指すことができる。pp.31-2.

2019-04-05 16:47:59
尾上正人 @9w9w9w92

マーチン・デイリー「文化の基礎に、いかなる分離している粒子も存在しない」p.34.

2019-04-05 19:45:50
尾上正人 @9w9w9w92

文化は至近要因なのか(リチャード・アレグザンダー)、それとも第2の究極要因なのか(ボイド&リチャーソン)…著者の立場は究極要因でも至近要因でもなく、「文化進化は、この通俗的二分法の極の間の<中間にある>」pp.36-7.

2019-04-06 02:01:28
尾上正人 @9w9w9w92

「1つは『選択による淘汰』、もう1つは『強制(imposition)による淘汰』と呼ばれる2つの段階的に変化する力は、文化進化における主要な、しかし排他的ではない修正手段である」p.40.

2019-04-06 02:33:08
尾上正人 @9w9w9w92

「この[遺伝的変化と文化変化の相互関係の]フレームワークに中心的なのは、私が自己淘汰(self-selection)と呼ぶものにとっての文化の特殊な能力、すなわち、事前に進化した観念的現象が社会的伝達の比率を支配し、それゆえ文化淘汰を導く能力である」p.40.

2019-04-06 02:40:12
尾上正人 @9w9w9w92

遺伝子―文化関係の5つのモデル…「遺伝的媒介」「文化的媒介」「強化(enhancement)」「中立」「敵対(opposition)」。p.40.

2019-04-06 02:44:50
尾上正人 @9w9w9w92

「私がこの理論を『共進化』と呼ぶのは、それが遺伝子と文化を進化的変化の別々の、しかし相互作用する『行路(track)』として描くからであり、またそれが、遺伝子と文化は常ではないがしばしば、適応上優位なヒトの属性の進化において協調するという仮説を提示するからでもある」p.40.

2019-04-06 02:50:44
尾上正人 @9w9w9w92

「3つの予想…遺伝子―文化関係の比較的(comparavive)様式は、相互作用的様式よりも一般的である。選択による淘汰はたいてい、強化を生み出し、中立に近づく。持続的な敵対の大部分のケースは、強制行為を反映している」p.41.

2019-04-06 02:57:04
尾上正人 @9w9w9w92

メルヴィン・ゴールドステインがインドへの亡命者について調査した、チベット中南部ギャンツェの農奴ソングパの62家族の、息子の数による婚姻形態の変化…息子が1人では夫方居住の一夫一妻、息子がいない(娘だけ)と妻方居住の一夫一妻、息子が2人以上になると夫方居住の兄弟型一妻多夫に。p.48. pic.twitter.com/SHfBZDZGum

2019-04-06 07:07:52
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尾上正人 @9w9w9w92

バーバラ・アジズが調べた、チベット南西部ディングリ渓谷の多様な婚姻形態。「2世代一妻多夫」は、男やもめが再婚し、連れ子の息子と妻を共有、「2世代一夫多妻」はその逆。p.51. pic.twitter.com/xhi4AHkzh1

2019-04-06 07:43:15
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尾上正人 @9w9w9w92

ゴールドステインが調査した亡命チベット人は、亡命先のインドでは一妻多夫にならず、現地(マイソール)の風習に従って一夫一妻に…社会生物学が唱える「兄弟で妻を共有することの遺伝的基礎」の存在はあやしい。p.59.

2019-04-08 04:55:27
尾上正人 @9w9w9w92

チベットの婚姻形態の多様性を説明できる理論として残るのは、「4.経済的説明」の中の、「(c)継承できる財産の打撃的な分割を避ける」と「(d)大人の労働力を家族に集中」の2つ。p.59.

2019-04-08 05:02:45
尾上正人 @9w9w9w92

チベット一妻多夫の仮説1「分割相続の回避」は、すでに18世紀初頭にイタリア人旅行者デジデリが指摘。p.59.

2019-04-08 05:08:14
尾上正人 @9w9w9w92

ゴールドステインの「家財保全の仮説」…分割相続を避けるため、子どもが何人生まれようと「単一結婚(monomarital)原則」 →1人息子なら一夫一妻、息子2人以上なら兄弟型一妻多夫か、ラマ教修道院へ →チムドロの農奴ソングパの一妻多夫も、家財を持たないチーミの一夫一妻も説明できる。pp.60-3.

2019-04-08 09:56:55
尾上正人 @9w9w9w92

チベット一妻多夫の仮説2「家族労働の最適化」 ・多様化の効果…大人の家族成員数と所得源泉の多様化と家族の経済的成功の間の強い相関 ・農業以外に、塩の交易と牧畜に多数の男手が必要 →家族内性比の偏り ・性的嫉妬等から、3兄弟以上の一妻多夫は2兄弟より維持が困難 →修道院や婿養子。p64-6

2019-04-08 10:37:29
尾上正人 @9w9w9w92

チベット婚姻多様性の仮説3「家計の再生産」(ナンシー・レヴィン) 嫁入りした女が不妊の場合に、もう1人女が迎え入れられて、(それまで一夫一妻だった場合は)一夫多妻、ないし(それまで一妻多夫だった場合は)多夫多妻(polygynandry)になる。融和のため多妻は実姉妹になる場合が1/3。pp.68-70

2019-04-08 15:52:22
尾上正人 @9w9w9w92

チベットにおける婚姻文化の選択と強制…著者は前者を重視しているように読める。pp.76-7.

2019-04-09 06:55:50
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