上田紀行氏( @UedaNoriyuki )による「『震災後』新しい日常へ 違和感の先に、成熟した個と社会」

上田紀行公式サイト http://www.valdes.titech.ac.jp/~ueda/
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上田紀行 @UedaNoriyuki

今日(9日)の読売新聞朝刊に、「『震災後』新しい日常へ 違和感の先に、成熟した個と社会」を書きました。震災が日本社会にどのような変容をもたらすのか、「個と全体」の枠組みの変化という視点から、具体的に論じました。どうぞお読みください。

2011-05-09 09:21:02
上田紀行 @UedaNoriyuki

今日(9日)の読売新聞朝刊に掲載された「『震災後』新しい日常へ 違和感の先に、成熟した個と社会」 http://bit.ly/kHIFqt をこれから連ツイにてお届けします。

2011-05-10 00:33:26
上田紀行 @UedaNoriyuki

1. 困窮の中にある被災地から離れた東京に私はいる。しかし自分もダメージを受けていることに気づいたのは、地震から45日後に初めて東京を離れたときだ。

2011-05-10 00:33:54
上田紀行 @UedaNoriyuki

2. 京都駅に降り立つと、体が一気に軽くなった。集中講義後の学生との懇親の場が、地震後初めての飲み会だった。「自粛」ムード以前に、自分からまったくそんな気が起きなかったのだ。そして地震以来心の底から笑ったことがないことに気づいた。

2011-05-10 00:34:12
上田紀行 @UedaNoriyuki

3. 幼い子どもたちを疎開させ、重病で動かせない母と二人で東京に残留し、新聞や雑誌への寄稿のために、来る日も来る日も震災関係のニュースと資料漬けという状況は特殊かもしれない。しかし私と同様、心身の変調に見舞われた人も多かったのではないか。

2011-05-10 00:34:30
上田紀行 @UedaNoriyuki

4. それは大きな違和感である。しかし不思議なのは、その違和感が消え失せて震災前の日常に戻ればよしとは思えないことだ。それは震災前の社会に私たちが感じていた違和感をあぶり出すものでもあり、新しい自分、新しい社会への再生を促しているように思われるのである。

2011-05-10 00:34:54
上田紀行 @UedaNoriyuki

5. それは震災後に起こった一見ネガティブに見える事象の見直しから始まる。照明が落とされた街を、あのどこもかしこも眩しい街に戻すのか。間引き運転のせいで遅刻が増えたが、遅刻の言い訳もできて何か人間的になったような気もする。

2011-05-10 00:35:23
上田紀行 @UedaNoriyuki

6. エステ狂いだった自分がバカらしくなった、職場での些細ないさかいなど「小さいことは気にしない」と思えるようになったという声も聞く。

2011-05-10 00:35:44
上田紀行 @UedaNoriyuki

7. その中で注目すべきは、震災後の社会における「個と全体」の枠組みの変化の可能性だ。

2011-05-10 00:36:28
上田紀行 @UedaNoriyuki

8. 例えば、原発事故後の情報開示に私たちは大きな不安を抱いた。実際、水素爆発で大量の放射性物質が放出されても、政府はSPEEDI(拡散予測システム)の情報も開示せず、私たちは長時間屋外で列車やタクシー待ちの列に並ばされていた。こうした状況では、頼れるのは個々の情報収集能力になる

2011-05-10 00:38:07
上田紀行 @UedaNoriyuki

9. 乳児を抱えた私自身も、インターネット上の情報を検索し、公式発表の前日から粉ミルクに水道水を使うのをやめた。「信用できない情報」というネガティブな状況から、個人の自覚が生まれ、そうした個人をつなぐ情報ネットワークが成立したのである。

2011-05-10 00:38:26
上田紀行 @UedaNoriyuki

10. 盛夏に予想される停電からも、新しいライフスタイルが生まれそうだ。

2011-05-10 00:39:20
上田紀行 @UedaNoriyuki

11. 日本人もフランスのバカンスのように長期休暇を取れれば、システムへの過剰適応からの自己回復の場となり極めて有益だと、私は『「肩の荷」をおろして生きる』(PHP新書)に書いたが、今年の夏は首都圏の「バカンス元年」になりそうだ。

2011-05-10 00:39:39
上田紀行 @UedaNoriyuki

12. そして、私たちの心身の重苦しさが、被災者への共感共苦からであるならば、それは犠牲者の供養と、被災者の徹底的な救済にしか解決はない。増税等の負担増は避けられないが、困窮者への援助の自覚をもって国民が支え合う。

2011-05-10 00:40:20
上田紀行 @UedaNoriyuki

13. しかし復興利権に群がる人々への厳しいチェックも忘れてはならない。自分の取り分が減るから怒るのではなく、自分の託した援助がきちんと届かないから怒る。そんな成熟した個が支え合う社会を生みだせるか。日本社会の大きな試金石になるだろう。

2011-05-10 00:40:50
上田紀行 @UedaNoriyuki

以上、今日(9日)の読売新聞朝刊に掲載された「『震災後』新しい日常へ 違和感の先に、成熟した個と社会」 http://bit.ly/kHIFqt でした。

2011-05-10 00:41:37
上田紀行 @UedaNoriyuki

これで震災後の新聞への論考は一段落。3/30毎日、4/8朝日、4/16・23中日-東京、5/9読売。相当苦しい執筆だったが、逃げずに向かい合ってきた。全部アップしてあるのでご覧ください。http://bit.ly/9DT677

2011-05-10 00:50:44