- erymylove888
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26 〈分かってますよ。 先生こそ惚れちゃダメですよ〉 精一杯、虚勢を張るけど 『どうやろな。 エロい子好きやからな、俺(笑)』 言いながらバスルームに消えていく彼に やっぱり軽くあしらわれる。 この人に会ってから私の中に芽生えるのは知らない感情ばかり… さらに彼を欲してしまう。
2019-04-15 18:55:4027 そんな関係を築いてからも、みんなの前で顔を合わせる時はいつも通り。 仕事の話以外、言葉を交わすことはない。 廊下ですれ違いざまに 『今日、どう?』 人目を盗んで声をかけられると 〈はい…〉 『終わったら連絡するわ』 その言葉に心踊らされる。 他の子にもこうなのかな…
2019-04-16 00:20:5328 いままで感じたことのない独占欲… いろんな思いを秘めたまま体を重ねる。 〈せんせ… あぁ… わたし…〉 『… ん? なんや』 ── 先生が すき ── そう言ってしまえば終わる関係だから、 〈先生のからだ… すき…っ…〉 『俺もすきやで。このエロい体(笑)』
2019-04-16 00:20:5429 虚しさに潰されないように、 『俺もすきやで』 その言葉を都合よく脳内で変換する。 そんな行為が週に一度あるかないか… 徐々に彼に溺れていく私は、 自分のタガが外れないように、 こちらから連絡を取ることはしなかった。 さびしくて仕方がない気持ちは 他の人で埋めた。 … つもりだった。
2019-04-16 00:20:5530 いろんな人に愛情をもらって体温を重ねても、 私が満たされることはなかった。 本当は気づいてる。 私を満たせるのは彼だけで、 私が求めているのも彼だけ… でも、どうしたらいいのか こんな人生を歩いてきた私には分からなかった。 だから、そのまま演じた。 彼が求める私を…
2019-04-16 00:20:5531 3か月程経ったある日の21時過ぎ、 遅出勤務が終わり更衣室に入るとすぐにスマホが震える。 (さっき見かけたけど、夜勤?) 彼からのメッセージ。 遅出でいまから帰るところだと伝えると (ちょっとだけ当直室来れる?) 嬉しさが伝わらないように、 少しなら…と返信して、更衣室を飛び出した。
2019-04-16 14:31:1332 ドアの前で手鏡を見て髪と上がった息を整えて、ノックする。 静かにドアが開くと上半身だけ乗り出し、 周りを警戒しながら私を中へ引き入れる彼。 初めて入る当直室は、デスクと簡易なキッチンとベッドがある10畳くらいの部屋だった。 〈先生、どうしたんですか? 急に(笑)〉
2019-04-16 14:31:1433 『なんか今日、あかん日や…』 後ろから抱きしめられる。 シラフで求められるのは初めてで… 〈ちょっと…先生、まずくないですか〉 『ええやん。 白衣でこんなんヤバいな。めっちゃ興奮する…』 耳や首筋を愛撫しながら、ベッドに手を付いた私のスカートの裾を捲る。
2019-04-16 14:31:1534 パンストを膝までずらして 『看護婦さん… こんなエロい下着着けて仕事してたん?(笑)』 〈やめて、はずかしい…〉 『ほんまに淫乱やな。ええ子や…』 彼の言葉も、繰り広げられている恥態も お酒が入ってない頭には刺激が強すぎて… 〈はあっ、ダメです… やあ…っ〉
2019-04-16 14:31:1635 いつもの愛撫にも敏感に感じてしまう。 『まだそんな触ってないのに… 葉月ちゃんも、めっちゃ興奮してるやん(笑)』 盛り上がらないからって催促して、いつからか下の名前で呼ばれるようになってた。 彼の口が私を呼ぶたびに、感度を増す体。 『でも… 分かってる? ここ病院やで(笑)』
2019-04-16 14:31:1636 ベッドの端に座らされ白衣のファスナーを下ろされると、下着をずらして胸を露出させられる。 『騒がしい口は塞がなあかんな』 目の前に立つ彼をはずかしくて凝視はできないけど、 紺色のスクラブに黒ぶち眼鏡をかけたその姿は、 普段とはまた違いそれだけで欲情してしまうほど美しい。
2019-04-16 14:31:1637 スクラブのパンツと下着をずらし、私の頭を抱え込む。 口の中に熱を感じながら彼を見上げると 私を見下ろす視線とぶつかる。 『上目遣い… たまらんわ』 私の胸に触りながら、吐息混じりに話す彼の姿にすら感じてしまう。 〈う… んん…〉 『葉月ちゃん… めっちゃ気持ちいい』
2019-04-16 14:31:1738 スクラブの裾から片手を滑り込ませ、彼の胸も愛撫しながら頭も振り続ける。 『舌もっと使って… んっ…そう… 上手やで』 片手で優しく髪を撫でられるけど、 徐々にその手に力が入り、そのうち両手でしっかり頭を固定される。 『はぁ… やばい… 葉月ちゃん… このまま出してもいい?』
2019-04-16 14:31:1739 目を見て頷く私を待たずに腰を速める彼。 『ああっ… っ…出る…』 喉奥に欲を放った後、私の頭を押さえつけ腰を震わせて余韻に浸る彼。 口を閉じることも飲み下す事もできず、 口角から白濁した欲が流れ出て それは私の胸もとを伝う。 『葉月… こぼしたらあかんやん…』
2019-04-16 14:31:1740 口の中に残ったものを飲み下す。 〈ごめんなさい…〉 『こぼしたのちゃんと舐めて…』 鷲掴みにした胸を持ち上げて私の顔のほうに近づける。 〈えっ…〉 『ほら、できるやろ』 少し躊躇したけど、言われる通りに 精一杯舌を伸ばして自分の胸を舐める。 『お利口さん。めっちゃエロいで…』
2019-04-16 14:31:1841 私を呼び捨てにする、こんな彼は初めてで… 本当なら嬉しいはずなのに、 時々彼が見せる切なそうな表情を感じ取ってしまう。 『ちゃんとできたからご褒美やで』 私のパンストを脚から抜き、自分の下半身も脱衣する。 抱きついて迎え入れようとするけど、 一度離れて律儀に避妊具をつける彼。
2019-04-16 14:31:1842 それが私たちの関係を表していた。 何度も体位を変えられ揺さぶられるけど、 彼の表情は晴れないままで、何かに不安を感じてるようだった。 そんな違和感を感じられるようになるくらい、 私の中では彼の存在が大きくなっていたんだけど 彼はきっと思ってる… 別の誰かを。
2019-04-16 14:31:1843 行為が終わった後、ベッドに横たわる私の横で、 背中を向けて端に座り、スマホを触る彼。 〈何かあるんですか?〉 『… ん? いや… なんかあったら嫌やなって…』 上の空で返答するから、 〈好きな人… できたんですか?〉 鎌をかけてみた。 『… 好き? いや… 分からん』
2019-04-16 15:32:2644 〈でも、もしそうだったら…〉 『そやな… もうやめなあかんな、俺ら』 〈ですよね… それにしても、最後がここってね〉 気持ちとは裏腹に笑うしかなかった。 『葉月ちゃんはおらんの? 好きなやつとか。 可愛いからモテるんやろ?』 いますよ、ずっと…。 目の前に。
2019-04-16 15:32:2645 〈モテるけど、なかなかいい人いなくって〉 やばい、泣きそう… 〈そろそろ帰らないと。じゃあね、先生。 フラれたらまた連絡ください(笑)〉 荷物を持ってドアを開けると、その手に彼の手が重なる。 『待てって、なんで…』 必死で顔を背けるけど 『なんで涙目やねん』
2019-04-16 15:32:2746 〈そんなことないです〉 その否定は全く意味をなさず、 彼から逃げ続ける顔に涙が伝ってしまう。 『え… 嘘やろ? もしかして俺のこと…』 〈もういいんです、惚れない約束でしたから〉 『あかんやん… 俺、ぜんぜん気づかんと…』 〈じゃあ彼女にしてくれるんですか?〉 『それは… 』
2019-04-16 15:32:2947 〈でしょ? …もう構わないでください〉 その時、当直室の電話が鳴る。 受話器に手を置いたまま、部屋を出ていく私に 『とにかくもっかいちゃんと話そ? また連絡するから、な?』 黙って立ち去るしかなかった。 優しい言葉が辛くて、冷たく突き放されていたほうがよかったのかもしれない。
2019-04-16 15:32:3048 彼から連絡があったのは次の日の夜。 会ってはいけない気持ちと 会いたい気持ちの狭間で、 気がつけば友人との食事の約束を キャンセルしていた。 指定されたのは病院の近くの大きな公園の西口。 近くのベンチに座るけど、 気持ちがそうさせるのかいつもより寒く感じる。
2019-04-18 01:17:1749 首に巻かれていたストールを口もとまで引き上げ 背中を丸めて彼の車を待つ。 緑の下の切られるような冷気の中で考えるのは、 やっぱり彼のこと。 この数ヵ月のやり取りの中で、 彼が私の思うままにできる相手ではないことは理解していた。
2019-04-18 01:17:1850 はじめはプライドが傷つけられたようで 歯噛みする思いだったけど、 徐々にそれは薄れていって、後に残ったのは ただそばにいたいという気持ちだった。 私に気持ちを向けたい思いは強かったけど、 私自身も体を重ねた他の人にそうであったように 彼の気持ちが手に入らないのも分かっていた。
2019-04-18 01:17:18