日向倶楽部世界旅行編第81話「強き者ども」

最上達の決勝戦は波乱の展開からスタートした。早々に最上が撃破され、足柄の残されたWヴィーストは劣勢に立たされる。そこに、利根姉妹は一気に勝負をつけるべく追撃をかける。
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三隈グループ @Mikuma_company

利根の攻め手が一瞬弱まり、艦載機の動きが鈍る。 それは一瞬の事、普通は気付きもしないチャンス。だが足柄にとってそれは、取っ手の様に掴みやすい、ドアノブの様に引っ掛けやすい、あまりにも、手にフィットする好機となった! 足柄は全てのリソースを対空戦に回し、利根の艦載機を撃ち落とす!

2019-04-16 21:32:03
三隈グループ @Mikuma_company

見えている!時が止まらなければ認識する事すら叶わぬその隙が、足柄には見えている! 「ッ!しまった!」 あっという間だった、艦載機を退避させる時間も、反撃に転じさせる時間も与えられなかった。利根の艦載機は一気に数を減らし、与えるプレッシャーを大きく削がれた!

2019-04-16 21:33:12
三隈グループ @Mikuma_company

しかし足柄の対空射撃は、水上から攻める筑摩にとっては逆に好機!彼女は主砲を撃ちつつ一気に詰め寄り、飛甲剣を構える! 「貰いましたッ!」 飛甲剣は巨大な剣にして大楯!生半可な砲撃は攻防一体に、まとめて薙ぎ払えてしまう!足柄が咄嗟に撃った砲撃も、薙ぎ払われる!

2019-04-16 21:34:21
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だがそれで十分だった!なまじ防げてしまうから、筑摩は彼女の砲撃を"防ごうとして"しまった! 足柄の放った弾丸は、筑摩の上半身を狙った一撃。それ故に筑摩の薙ぎ払いも、足柄の上半身目掛けて振るわれた! 即ち! 「…ッ!?」 下段がガラ空きだッ!!

2019-04-16 21:35:54
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足柄は、筑摩の攻撃の下を、すり抜けた! 艤装の上部…即ち、彼女の艤装に備え付けられた主砲達は筑摩の攻撃に当たってしまった。だが足柄は素早い判断でこれの接続を解除、砲達は驚くべき程簡単に彼女から離れた。 結果として主砲を二基喪失したが、それ以外のダメージは一切無い!

2019-04-16 21:38:06
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そして抜けた先にあるのは、足柄の反撃!彼女は筑摩の飛甲剣をすり抜けると、慣性を乗せて筑摩の後方へ回り込む! 一瞬の出来事だ、足柄は筑摩に肉薄したまま、背後を取った! 「嘘…!?」 筑摩が狼狽える間も無く、足柄は赤熱化した灰狼爪の一撃で、彼女の艤装を引き裂く!

2019-04-16 21:39:22
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その一撃により、筑摩の艤装は出力が大きく低下、彼女はバランスを崩し、得物である飛甲剣すらもその手から離した! 「くっ…!ね、姉さん…姉さんがいるのに…!」 筑摩はよろめきながらも、必死に身体を捻って足柄へ向かおうとする。 だが最早筑摩に戦う力はない、足柄はトドメの一撃を叩き込む!

2019-04-16 21:40:58
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しかし! 「でも貴女は…油断、しましたねぇ…ッ!」 窮鼠、猫を噛む!筑摩は不安定なバランスのまま足柄に両手を向け、力を込めた! 「全力よ…晴嵐、波紋縛…!」 彼女の両手から赤い靄が放たれる!動きを止める、相手を縛り付ける呪縛の霧が放たれた!

2019-04-16 21:42:39
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その時だ、足柄はその靄に向けて、二丁の主砲を同時に撃った! 驚くべきは弾丸の軌道!四発の弾丸は靄の中でぶつかり合い、一気に爆散したのだ! 「なっ…そんな…!?」 激しい爆発により靄は霧散!筑摩が渾身の力で放った波紋縛は、足柄の動きを止める事なく破られた!

2019-04-16 21:43:47
三隈グループ @Mikuma_company

「筑摩ッ!」 妹の救援に向かう為、必死に海を駆ける利根。距離はほんの僅か、目と鼻の先。 だが巻き添えのリスクがある、波紋弾は放てない、助ける為には傍へ向かうしかない。しかし傍へ向かっている間にも、足柄と筑摩の戦いは目まぐるしく進んで行く! 利根にとって今、妹はあまりに、遠い!

2019-04-16 21:44:25
三隈グループ @Mikuma_company

迷いだ、利根には迷いがあった! その僅かな迷い、生じるロスタイム、その中で足柄は動き続ける、試合は進んで行く! リスクを負って足柄を狙う、それも出来る。だが妹に危険を負わせる、そんな真似を利根が出来る筈もない、博打に妹を、巻き込めない! それが良いか悪いかは、誰にも分からない。

2019-04-16 21:46:07
三隈グループ @Mikuma_company

「こっのぉぉぉッ!!!」 波紋縛を破られた筑摩は、残る最後の武器である連装砲を構える。距離は近い、確実に当てられる程の距離だ。 「この距離なら私だって、外さないのよッ!」 咆哮する筑摩、だが、最早勝負はついていた。 足柄の放った弾丸の一つが、筑摩の主砲を弾き飛ばす。

2019-04-16 21:47:51
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「きゃあっ…!」 筑摩の主砲はその手を離れ、破壊される。そして残り一つの弾丸は、彼女の艤装を撃ち抜いた。 勝負、あり。 「ね、姉さん…ごめんなさい…」 筑摩の艤装は大きく損壊し、緊急用の浮き袋が展開される。それは戦闘不能を意味する白旗、筑摩は足柄の下で浮き袋に浮いた。

2019-04-16 21:48:54
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「筑摩、筑摩ッ!」 浮き袋に浮き、悔し涙を浮かべる妹に利根は近付こうとする。しかしそれを足柄が許さない、彼女は利根へと射撃を繰り返し、寄せ付けぬ様に立ち回る。 その行動はルール違反ではないが、利根は激しく憤る。妹に駆け寄れない不甲斐なさと、足柄の行為に苛立ちを覚える。

2019-04-16 21:50:34
三隈グループ @Mikuma_company

「貴様…!?」 しかし同時に、利根は身体に嫌な汗を感じた。こちらを見る足柄の姿に、得体の知れぬおぞましさを覚えた。 (なんじゃ…この、異様な…) 利根は身構え、足柄を睨む。影になりその表情は見えない、艤装を背負う人型がそこにいた。 そんな彼女を、足柄はジッと見る。

2019-04-16 21:52:33
三隈グループ @Mikuma_company

そしてそのまま、利根の様子を伺いつつその場を離脱、筑摩を放置して一気に距離を離した。 「…!筑摩!」 その隙に利根は筑摩へと向かい、心配そうにその身を労わる。 筑摩が戦闘不能、試合は一時停戦。利根姉妹の優勢から一転し、試合の流れは読めなくなった。 〜〜

2019-04-16 21:53:14
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 「お、おい…あの足柄って艦娘、強くないか…?」 スタジアムの観客席、モニターを眺める男が呟く。彼だけではない、先程まで利根姉妹が押し切るだろうというムードに包まれていた観客席は、一転してざわめきを起こす。 足柄が勝つのではないか、多くの者がそう予感し始めた。

2019-04-16 21:54:18
三隈グループ @Mikuma_company

Wヴィーストは、最上も足柄も特別な派手さはなかった。 ここまでの試合、接戦こそあったが手堅く勝利を収めて来ていた、一言で言うなら無難さのあるチームだった。 一方の利根姉妹は、ここまで相手を圧倒し続けてきた。利根の業前はスタジアムを熱狂させるもの、派手だったのだ。

2019-04-16 21:55:28
三隈グループ @Mikuma_company

だから、チームの片方が欠け一人となった足柄が、圧倒的な強さを見せてきた利根姉妹に敵うはずがない、このまま試合は決まる、そう思うのは当然と言えた。 それに足柄は、巡洋艦杯にて最上に敗北している。皆足柄の強さは最上と同等かそれ以下と見ていたのだから、尚更だった。

2019-04-16 21:56:18
三隈グループ @Mikuma_company

しかし足柄は、この極めて妥当な予想を覆した。 一人となった彼女は何者をも寄せ付けぬ勢いで利根姉妹を相手取り、そのまま筑摩を打ち負かした。その戦いぶりは神業と言っても良い程、正確であり大胆であった。 この展開は武蔵でも読めなかった、それ程に予想外の展開だったのだ。

2019-04-16 21:57:08
三隈グループ @Mikuma_company

「足柄って奴、まだ何かあるんじゃないか?」 「あの艦娘はここまでずっと必死に見えたのに、こいつは分からなくなってきた!」 「でも利根が勝つんじゃないか?あの魔法みたいな技は破れる気がしねえ」 観客席で口々に議論が交わされる。動乱、今の試合を一言で表すならこうだろう。 〜〜

2019-04-16 21:58:16
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 観客席が湧き上がる中、試合はまだ続いている。 (また、筑摩を守れなんだ…どうしてこうも、我輩は弱いのじゃ…) 救護ボートに乗せられた筑摩を見送り、利根は唇を噛む。足柄に翻弄され、筑摩を呆気なくやられてしまった。 二対一、確かに有利だったはずなのにだ。

2019-04-16 21:59:06
三隈グループ @Mikuma_company

(晴嵐の波紋…この力を手に入れた、鍛錬も怠らなかった。でもまだ足りないのじゃな…まだ…) 筑摩が襲われる中、彼女を巻き添えにする事を恐れ、手を出せなかった、間に合わなかった。 より正確な技術があれば、いや、もっと早くに敵を討ち取れていれば、利根はひたすらに省み続ける。

2019-04-16 22:00:02
三隈グループ @Mikuma_company

それと同時、彼女は交戦した足柄へと意識を向ける。 (…あの足柄という艦娘、凄まじい強さじゃった。準決勝までの映像は幾度となく見返したが、奴があれ程の力を隠していた事、全く気付けなかった…) 足柄の強さ、それは彼女の予想を遥かに上回っていた、凄まじさすら覚えるものだった。

2019-04-16 22:00:59
三隈グループ @Mikuma_company

(強さもそうじゃが、何よりの衝撃は奴の気迫じゃ。奴には"恐怖"すら覚えかねぬ凄みがあった…) ここまで勝ち上がる中、多くの艦娘と対峙した。強き者も多かったが、どれも打ち破って来た。 (そう…準決勝の伊勢、日向…奴等は手強かった…奴等も筑摩を傷付けて来た…)

2019-04-16 22:02:02