P-PingOZ 『まほうがとけるまで』①

アカウント開設1周年記念エピソードのまとめ 17:30~18:00まで 次:https://togetter.com/li/1340308
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18:00

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◆18:00/うつぶし地区/コーヒーショップまちねずみ 大山団地前駅店/ナレーション:友安ジロー pic.twitter.com/TSuIFYz41y

2019-04-20 18:00:00
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「ん?」駅近くのコーヒーショップ。角のボックス席に座る鉄ソラ(くろがねそら・女性/17歳/高校生)は電子ペンを回す手を止めた。一瞬、彼女が解く問題集の画面にノイズが走ったのだ。ソラは首をかしげ、氷が溶けて薄まったカフェラテを飲み干した。1

2019-04-20 18:02:00
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進路のことで親と大げんかしたソラは、最終的に「今年度は好きにしろ」という言質をとった。だから、好きにする事にした。今は進学クラスの放課後補講に混ざりながら、学校の自習室やコーヒーショップで自主学習をする日々だ。2

2019-04-20 18:04:00
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森【VR空間】の親友もソラを気遣い、森を介さない音声会話やテキストチャットで、日々の連絡を取り合うようにしてくれていた。その友達も最近は進級後の雑事で忙しいそうだ。3

2019-04-20 18:06:00
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ソラは大きく伸びをする。「帰るか……」家までは歩いて20分。19時の夕飯までには帰るようにしていた。端末をしまって身支度を整える。さて帰ろうかとリュックを抱えた時、バックヤードから、大きな物音と女性の声があがった。「えっ」4

2019-04-20 18:08:09
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店内の誰もが、音のしたスイングドアの奥を見ると、ドアを弾くように白い影が飛び出してきた。ヘイゼル社の清掃人形だ。「えっ」子どもの背丈ほどある50kgの人形は、仕様上の速度を遥かに超過したスピードで直進してくる。まっすぐ、ソラの座るボックス席へ。「えっ?」5

2019-04-20 18:12:00
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ソラは咄嗟にリュックを抱え、ボックス席の奥へ逃げる。人形がテーブルへ衝突した。「うわ」一切遠慮のない衝撃に店内がざわつく。「うそ」清掃人形は大きくノックバックした後、再びソラの席へ衝突。卓上のコップが倒れ、床で割れた。それでも人形は愚直な直進行軍を止めない。6

2019-04-20 18:14:00
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ソラは目を大きく開き、周囲を見た。スタンドとカウンター席の客はもう逃げ出している。誰もソラとは意図的に目を合わせない。一人だけ、手前のボックス席にいた中年女性と目が合った。「お姉さん、こっち!」女性が手招きする。「え」「おいで! もう、土足でいいから! おいで!」7

2019-04-20 18:16:00
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「あ、あ。はい!」ソラは意を決した様子でスニーカーを履いたままテーブルを這う。途中何度か人形の衝突で動きを止めながら、どうにか対面のソファに渡った。そして、手を伸ばしてくれた女性……相森糸(女性/49歳/靴屋)の手を取り、隣へ滑り落ちるように座った。8

2019-04-20 18:18:00
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「大丈夫?」ソラはリュックを抱きしめて小刻みに頷く。「びっくりしたねえ」糸はソラの背中をさすりながら、カウンターで固まっている女性店員へ声をかけた。「これ故障だと思うから、ヘイゼルの窓口に連絡して。で、遠隔で落としてもらいな。急いだほうがいいよ」9

2019-04-20 18:20:00
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ソラは糸に助けられながら階段を降り、少し離れた大通りで立ち止まった。「じゃあ、おばさん駅だから。お姉ちゃん気を付けてね」「あの、ありがとうございました。お……そちらも気を付けて」「どういたしまして。じゃあね」大股で駅へ歩き出した糸を見送って、ソラは携帯端末で親友を呼び出した。10

2019-04-20 18:22:25
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『アロー。メドちゃんどうした?』「あの、今話聞いてもらっていい?」『ぜんぜん! いいよいいよ~』ソラは、つっかえつっかえ、自分に降りかかった災難について話した。「助けてもらえたけど、すっごい怖かった……」『サンドリヨンが。メドちゃん怪我しなかった?』11

2019-04-20 18:25:26
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「大丈夫、なかった」『そっか! じゃあよかっ……あ?』親友の声が急に途切れる。「なに? なんかあった?」ソラはリュックのベルトを強くつかむ。『メドちゃん、早く家帰って。OZのサンドリヨン、一斉に挙動おかしいっぽい』12

2019-04-20 18:27:39
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「ええ……」『今調べてるけど、いろんなとこでサンドリヨンが急に動き出して、危ない動き方してるから。外よりお家のが安全だと思う』ソラは、この親友をリスペクトしていたし、何より信頼している。「分かった」13

2019-04-20 18:31:21
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ソラは周囲の建物を見る。近くの飲食店でも、サンドリヨンが店内を無軌道に走り回り調度品を壊す姿と、何か割れる音や逃げ出す客が見て取れた。「あのさ」『うん』「怖いから、通話つなげておいていい?」『もちろん! 無事帰るまで一緒だよ!』「……ありがと、あーちゃん」14

2019-04-20 18:35:15
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親友の頼もしい声に後押しされるように、ソラは団地に向かって走り出した。15

2019-04-20 18:37:06