日向倶楽部世界旅行編第83話「前へ進むもの」

拭き荒む嵐の中、足柄と利根の激闘が続く。強さと強さがぶつかり合う中、両者の瞳に映るものは。
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三隈グループ @Mikuma_company

足柄の、足下にある! 「しまった、次を…!」 空中に放り出された利根は、慌てて次の足場を作ろうとする。だが間に合わない、この一瞬では次を作り出せない! 足柄の目が、そんな彼女を映す! 「貴女はこれで私を攻撃して来た…なら、その破壊力やエネルギーは…」

2019-05-07 21:54:57
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足柄の足下で、利根の作り出した波紋エネルギーが 「私が利用する事だって、出来る…」 爆発した! 「あいつが、あいつが見ているこの瞬間に、この私が負けられるものかァァァァッ!!!」 足柄は爆発により空中で加速!その勢いのまま、墜ち行く利根を再度捕縛する!

2019-05-07 21:56:04
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共に向かう先は、目下にある、水面! 二人の身体は水面へと勢い良く突っ込もうとしている!そして下になっているのは、水面に叩き付けられようとしているのは! 「ま、まずい、このままでは…!」 捕縛されている、利根! (こうなれば、波紋エネルギーを下に…!) 利根は策を講ずる!

2019-05-07 21:57:28
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が! (ダメじゃ、もう間に合わ…!) 利根の身体は既に、水面へと叩き付けられていた!上がった大きな水飛沫は嵐に紛れかき消える! 「ぐあっ…!かはっ…!」 利根はずぶ濡れになりながら、海の中に半身を沈める! そしてその背後には!

2019-05-07 21:58:13
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「…!」 一丁の主砲を握る足柄が、立っていた。 「もう、後ろか…!」 振り向くまでもなく利根には分かった、砲口が自らの背にある、小さな艤装を捉えている事に。 そしてたった今。 「筑摩…すまん…!」 自らが、敗北した事に。 〜〜

2019-05-07 21:59:36
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〜〜 「クソッ、こんな天気に試合なんかやるなよ!」 嵐の中、サイレンの鳴る救護ボートの船員が悪態を吐く。 「仕方ないだろ、武蔵さんがどんな天気でもやるって言ったんだから」 「だからって嵐でやる事無いだろ!おかげで後半からは試合が全く見えてないんだぜ、空撮ドローンもダメになるしよ」

2019-05-07 22:00:34
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船員達は口々に言う。 結局、嵐で試合の様子はまるで分からなかったが、利根の艤装の破壊が知らされた事で、決着そのものは明らかとなった。 無論、どう決着したのかは分からない、どんな状況かも分からない。救護ボートで足柄と利根の元へ向かう彼等は、その最初の目撃者となるのだ。

2019-05-07 22:01:36
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「この辺りじゃないか?」 船員の一人がライトを照らし、足柄達を探す。視界は悪く、波もひどい、水飛沫で甲板の上はめちゃめちゃになって、嫌になりそうだった。 「ハァ…これじゃ大怪我してた時、応急手当てに手こずりかねないぞ…デカい怪我してなきゃいいんだがな」

2019-05-07 22:02:59
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そんな事をぼやいていると、ライトが人影を照らした。 「アレじゃないか?居たぞ!」 ライトの船員は合図を送り、人影の方へ舵を切らせる。早く収容して、こんな嵐の中から抜け出そう、彼の顔には少し気の抜けた笑みが浮かぶ。

2019-05-07 22:04:28
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やがて、足柄達の方へボートが近付き、その姿がはっきりと見え始めた。 「おい…なんだ、あれ…」 ライトを照らしていた船員が、息を呑んで呟く。彼の視線の先にいたのは、彼が救護に来た足柄という艦娘だったが、彼の眼に映るのは、何かもっと別のものだった。

2019-05-07 22:06:46
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瞬間、雷が鳴った、足柄の姿が雷光に照らされる。その時見えたのは、ズタボロになりながら、しかしそれとは真反対に真っ直ぐと立つ、 恐ろしき彼女の姿だった。 「おい、何してんだ!早く収容するぞ!」 「あ、ああ!」 男は同僚の声で我に帰ると、彼等を収容すべくせかせかと動く。

2019-05-07 22:09:13
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「チッ…嵐のせいか知らねえけど、なんだか寒気がするぜ」 「さっさと終わらせようぜ、スタジアムん中だってのに気味が悪くて仕方ねえ…おい、怪我の度合い教えろ!」 男達はぶつくさと言いながら、同僚と共に収容作業を開始した。 第83話 「前へ進むもの」 おしまい

2019-05-07 22:10:37