日向倶楽部世界旅行編第83話「前へ進むもの」

拭き荒む嵐の中、足柄と利根の激闘が続く。強さと強さがぶつかり合う中、両者の瞳に映るものは。
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三隈グループ @Mikuma_company

そして最後の一つ。 利根がこの技の参考にした那珂という艦娘を、足柄は、誰よりも知っていた事! 「くっ…!」 大きな隙を晒した状態へ叩き込まれる足柄の猛攻に、利根は防戦に徹する他ない。だがその防御は崩れない、鉄壁と言える守りを利根は見せる!

2019-05-07 21:28:45
三隈グループ @Mikuma_company

だから、足柄も次の手が必要となっていた、リスクを承知で、更に接近するしかない! 「来るか、しかし…!」 対する利根は距離を取ろうとする。 されどそれは叶わない、嵐に荒れる海で、足柄は波の流れを利用し尽くしていた、利根は不利なポジションを背負わされ続けていた!

2019-05-07 21:30:05
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そして距離が縮まった時、遂に足柄が動いた! だが動いても、彼女はこれまで通り主砲を放つ。それは単調、行動が変わらない!それに対し、防戦一辺倒であった利根が切り返す! 「森羅の光、命の輝き…晴嵐、波紋天衣ッ!」 固めていた守りから、攻勢に転じられる守りへ!淡く赤い光が利根を包む!

2019-05-07 21:30:54
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対する足柄にも策があった!彼女は利根の動きに対し、主砲を放ちつつ魚雷を射出!利根の波紋天衣も足元から迫る魚雷を防ぎ切る力は無い、これは有効な攻撃である! されど利根、この魚雷を避ける! 「この程度は当たらんよッ!」 砲撃と雷撃の合わせ技、足柄の攻撃はどちらかが当たる必中の撃!

2019-05-07 21:31:58
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しかし利根は、波紋天衣によって砲撃に対する守りを固めている、雷撃さえ避ければ問題が無い!波紋天衣という技の真骨頂が現れる! そして足柄へ肉薄した利根は、拳を構えた! 「唸る波紋が汝を揺さぶる…!」 波紋掌底が来る!もつれ込んだ戦いにおいて、この一撃は大きな意味を持つ!

2019-05-07 21:32:49
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だがそれは、足柄にとってもチャンスであった!波紋掌底を放つということは即ち、波紋天衣は解除される! この機を逃さない、足柄は利根に対し砲撃を放つ、先制して潰しに行く! が! 「…!」 彼女の砲撃は利根に届く事なく、弾かれ爆ぜた!波紋天衣が解除されていない!

2019-05-07 21:33:53
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「ククク…波紋技を使うか否か、そう簡単に判断はつくまい!」 利根がしたのは、晴嵐の波紋など微塵も関係ないただの掌底打ち! これまで利根は、散々技名を言い放っていた、その行動は知らず知らずのうちに、名を言えば発動すると周りに刷り込ませていた。 今初めて、足柄は術中にいた事に気付く!

2019-05-07 21:34:46
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それと同時だった。 「この距離ならただでは済むまい…!」 利根は纏っていた波紋エネルギーを、一気に解き放った!赤い閃光がほとばしる、防御の能わない足柄は衝撃に大きく弾き飛ばされる! 「ぐっ…!」 弾き飛ばされた足柄の制服が、最早原型を留めぬほどズタボロになる。

2019-05-07 21:36:14
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そこへ利根は迫撃、追撃!ここで試合を決めに行く、足柄へ突撃する!それでも足柄は怯まない、素早く態勢を立て直し迎え撃つ! しかし蓄積したダメージは大きい、彼女の状態は万全ではない。灰狼爪も既に一丁がその機能を喪失した、魚雷も無い、副砲も無い、残されたのは満身創痍の身体と主砲一丁!

2019-05-07 21:37:26
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万事休す、手負いの足柄!そこを利根が、叩く! 「…負けるかァァァッ!」 「ぬうっ!?」 接近した利根に対し、足柄は残された一丁の灰狼爪を振るう!風の切り裂かれる音が響く、まだ、キレがある! (此奴、まだこれ程に動けるのか!一体何なのだ!) 利根は避けつつ思考する。

2019-05-07 21:38:15
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この試合、もっと早く終わらせるはずだった、筑摩と共に勝つつもりだった。 しかし目の前の艦娘足柄は、それを覆す圧倒的な強さと、何度追い詰めても跳ね除ける粘りを見せてきた。故に、利根は彼女の一挙手一投足に対し、これまで以上に警戒を強めていた。

2019-05-07 21:39:14
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されど! (いや、ここで奴に時間を与えてはならん!我輩の方が体力には余裕がある、痛み分けの形となっても我輩が勝つ!) ここに来て迷いを振り切る!一気に決めに行く! 「集えよ蛍火、我が敵を討て!晴嵐、波紋弾ッ!」 利根は波紋弾を放ち、自らも突進!

2019-05-07 21:40:19
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「滾る血潮が我が身を揺らす、唸る波紋が汝を揺さぶる!」 利根は構える、必殺の一撃! 「晴嵐、波紋掌底ッ!」 波紋弾と波紋掌底の二段構え、距離は近い、防御は能わない!満身創痍の足柄にはどちらも致命打、決着の一撃!

2019-05-07 21:41:13
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これに対し足柄は! 「…ッ!?なんじゃと!」 右に避ける事も左に避ける事も無く、正面から突撃した!しかし利根ももうブレない! (所詮は破れかぶれの行動に過ぎん、仕留めるッ!) 彼女はそのまま、波紋弾と共に足柄へ突撃、両雄は正面から激突する!

2019-05-07 21:42:27
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そしてそのまま変化はなく、波紋弾が足柄に命中する! が! 「…られるか!」 「なっ…!」 足柄は波紋弾を突き抜け、利根へと肉薄した!彼女はその速度も勢いも全く潰えていない、被弾など無かったかの様に、突き破る様に、利根へ迫る!

2019-05-07 21:43:36
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これには利根も驚愕する! (此奴、波紋弾が効いておらんのか!?何故、何故突っ込んで来られる!) 波紋弾は確かに直撃した、それは砲弾を真正面から受けた様なもの、普通ならもう動けるはずがないのだ! しかし利根も怯まない、この怪物にはもう慣れた!躊躇う事なく一撃を叩き込む!

2019-05-07 21:44:50
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「そうまで来るというなら、多少の怪我はしてもらうぞッ!」 利根の波紋掌底が、足柄の身体に叩き込まれる!確かな手応え、確実に入った一撃! それと同時だった! 「…!何!?」 足柄の手が、いや身体全体が、利根の身体を捕らえた!柔術の様に、いや獣が噛み付く様に、捕らえたのだ!

2019-05-07 21:45:50
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彼女は血を吐きながら、だが確かに利根を捕らえている!ここまでとなれば、流石の利根も動揺を隠しきれない! 「馬鹿な…!波紋掌底が入った、何故まだ動ける…!?」 思わず疑問が口に出る。何故、何故動けるのか、そうまでする理由がこの艦娘にあるのか、まるで理解出来ない。

2019-05-07 21:46:46
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否、初めからこの艦娘の事は理解出来なかった、だが今確かに理解したのは。 (化け物か、此奴は…!) 今自分が相手しているのは最早、艦娘ではないという事だった。 ここまで、一秒に満つか満たぬかの時間。刹那の思考が途切れた瞬間、利根は足柄に強く押し続けられている衝撃を認識する。

2019-05-07 21:47:49
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だがその衝撃は次の瞬間、強烈な浮遊感へと変わる! 「アポロ∞…起動ッ!」 それは足柄がここまで温存し続けていた飛翔機構「アポロ∞」!今や一丁の主砲だけを携える彼女が持つ、最後の切り札! リミッターの凍結された足柄の艤装が、限界を超える!彼女は利根を捕縛したまま、宙へと連れ去った!

2019-05-07 21:49:03
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利根はやはり驚きながらも、冷静に状況を見る。この切り札が一回使い切りである事はもう知っている、これが足柄最後の足掻きだと、分かっている! (このまま背中の艤装に主砲を突きつけると、そういう事か!そうはさせぬ!)

2019-05-07 21:49:49
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彼女の想定通り、足柄は自らの主砲で利根の背にある小さな艤装を狙っている。いくら利根でもここを破壊されてはマズい、艦娘である限り艤装は弱点なのだ! (波紋掌底で叩くか!?いや、此奴は一撃二撃は堪えて来る…!) 今自分を捕らえているのは化け物、彼女は常識を疑う。

2019-05-07 21:50:29
三隈グループ @Mikuma_company

(そして万に一つこのまま落下すれば、この荒れた海に不安定な着水をする羽目になる…そうなれば最早有利不利の話では無い、勝負が博打になる!) 足柄の狙う逆転の一手、それは武装の有利不利が消えるゼロ距離での、互いの執念と体力がものを言う戦い。利根はそう睨む、それを阻止しようとする!

2019-05-07 21:51:19
三隈グループ @Mikuma_company

(このまま滞空して、空中で仕留め切り、叩き落とす!) 着水後の有耶無耶な戦いを狙われるより、利根は自分がしっかりと戦える空中に留まる事を選んだ!一撃二撃は耐える足柄も、三、四と続けば分からないだろう、そう思う他なかった! 彼女は足元に波紋エネルギーを集め、空中を跳ぼうとする!

2019-05-07 21:52:28
三隈グループ @Mikuma_company

その時だ! 「待っていた…この、瞬間…!」 足柄は突然、利根の身体から手を離し、彼女を全力で突き飛ばした! 「なっ…!?」 元々利根も足柄を突き放そうとしていた事もあり、二人の身体は呆気ない程簡単に離れる!そして離れた結果、利根の作り出した波紋エネルギーは!

2019-05-07 21:53:39