- akuochiken
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「あら、あなたの身体……」 その女性は、目の前の青いスライム娘に語り掛ける。 「溶けて、液体が滴り落ちてしまってるじゃない。だめよ、そんな身体じゃ好いてもらえないわよ?」 びくり、と、そのスライム状の少女は身構えた。 身体の構成がうまくいっていないのか、未だ青い液体を滴らせながら。
2019-05-20 23:18:47彼女の右手がそっと少女の右肩に触れる。 「んっ……」 それは驚いた声でもあり、触られたことを悦んでいるような嬌声にも聞こえた。 「あら、いい感触ね。素材がいいのだからもっときれいにならないと」 彼女は少女の胸に顔を埋めるように近づけた。 ぺろり、と彼女は舌を出して胸元を舐める。
2019-05-20 23:21:52「んあっ……!」 今度のそれは、彼女の舌が触れたことによって快感を感じているような声であった。 しかし彼女は、その様子に興味が無いようにして話を続けた。 「う~ん、ちょっと不純物が多いかしら? マンガンに硫黄……リンなんかかなり多めね。これじゃああなたの身体はきれいに保てないわ」
2019-05-20 23:26:28「わた……わたし……」 少女の、青い液体で満たされた顔が、青く透き通った瞳が、胸元の彼女の顔をじっと見つめる。 「心配しなくてもいいのよ。私があなたを変えてあげる。だからあなたは私を受け入れて? いい?」 こくり、こくりと少女が頷く。 それを見届けて、彼女は右手を少女の胸に触れる。
2019-05-20 23:31:09少女の胸元に触れた彼女の右手がぷるん、と震えたかと思うと、彼女の肌の色がどんどんと赤くなっていく。 いや、彼女の全身が、目の前の少女と同じくスライム状に、赤いスライム娘へと変化していっているのだった。 「驚かなくていいのよ。だってあなたは本能的に私という存在を理解しているのだから」
2019-05-20 23:34:11スライム状になっていく彼女の身体が、右手の先から少女の胸元へと沈んでいく。 青色の液体の中に沈んでいく赤色の液体、そういう液体が混ざり合っている様を、ゆっくりと、じっくりと、お互いの身体で実現しているスライム娘たち。 「あっ……んはっ……はっ……はぁ……」 少女が吐息を漏らす。
2019-05-20 23:39:42「ごめんなさい、ちょっと苦しかったかしら?」 「ちがっ……ちがうの……」 「違った?」 「うん、とけて……わたし、とけていって……きもちいいの……」 「あらあら、確かに。見てみなさい、あなたの身体、溶け始めてるわよ。私を受け入れるのがそんなに気持ちよかったのね。ありがとう」
2019-05-20 23:45:03彼女はそっと少女の額にキスをする。 かぁっと、少女の全身が熱くなっているのか、全身から液体が蒸発して水蒸気のように上昇しているのが見えた。 「わた、わた、わた、わたし……ああぁ……」 少女は混乱していたが、はにかんで蕩けた顔で、必死に言葉を紡ごうとしていた。
2019-05-20 23:52:17その動作が引き金となったのか、少女の身体の中へ、彼女の赤い液体が一気に吸い込まれていく。 そして…… 「あ……れ……?」 そこにあるのは少女のグニャグニャに溶けかかった身体ではあるのだが、もう1人、目の前にいたはずの女性の姿が消えていた。 「どこ……? まさか、わたし、たべて……?」
2019-05-21 00:16:15そう少女が言い終わらない内に、少女を構成する液体の各所から、大小の気泡が出現して身体の中をなぞって行く。 手から発生した泡が腕を抜けて肩から外気へ放出される場合もあれば、足から太腿を通って上昇してくる泡が、腹部を、胸部を、そして首から頭部へと移動し、身体を専有していくものもある。
2019-05-21 00:22:27「がはっ……げほっ、げほっ」 いくつかの気泡は互いに混ざり合って体積を増して少女の口から吐き出される。 そしてそれは少女を大いに苦しませていた。 「(あら、ごめんなさい。やっぱり苦しかったみたいね)」 「わたし、の、なか……?」 「(ええ、あなたの身体の中にいるの)」
2019-05-21 00:56:47「……きもちいい」 「(あら?)」 「くるしいけど、おかあさんのような、そんな、あたたかいから」 「(それは嬉しいわね。私もあなたの中、あなたの身体がとても気持ちよくて癖になりそうよ。このまま出たくないくらい)」 「えへへ」 「(どう? このまま私たち混ざり合っても私はいいのよ?)」
2019-05-21 21:52:38「でも、それだとあなたが……」 「(いいのよ、元々私の身体なんて誰のものでもないし、それに私たちの本質は相手を取り込むことでしょう? 私たちが混ざり合ったらもっと気持ちよくなれると思わない?)」 「でも、わたし、うまれかわって、きれいになったわたしを、あなたにみてもらいたいな……」
2019-05-21 22:02:15「(そう、だから私はどちらでもいいの。このまま二人混ざり合ってみるのもいいし、あなたの身体を綺麗にしてあなたの中から出ていくのでもいい。保証するわ、あなたはとても綺麗なスライム娘になれる。だから、どちらにするかはあなたに任せるわ)」 「わたしは……
2019-05-21 22:05:47「わたしは……あなたとひとつになりたいな」 「(それがあなたの意思でいいのね?)」 こくり、と私は頷いた。 いや、頷けるくらいしっかりした頭部を保てていただろうか。 溶かされつつある意識の中で、私は彼女に肯定の意を伝えたくて、頷く素振りを思い描いた。 「(さぁ、始めましょうか)」
2019-05-22 22:20:56彼女の言葉とともに、私の全身はぞわっと身震いする。 これまでは、私の身体を彼女が愛おしく、丁寧に撫でてくれていた感じ。 私の身体の中から沸き立つ気泡に満たされてちょっと息苦しかったけど、それでも彼女の愛で私が包まれていたような感覚。 だから苦しくても、その優しさが心地よかった。
2019-05-22 22:27:53でも今は違う。 「ふ、ふわわわわ……」 私の隙間という隙間が埋められていくような感覚。 とても、包まれているという表現では言い表せない、強いて言うなら私の全身が侵食されているような感覚。 私の身体を構成する液体の、それこそ分子の隙間を彼女によって埋め尽くされていくような感覚。
2019-05-22 23:07:53「はうぅ……なに……これ……」 私がこれまで到底味わうことができなかった快感の波に、私が出したこともない言葉が漏れてしまう。 これまで、私の身体に取り込んで、溶かして、私の一部にしてきたことは何度もあった。 でもそれは、ただ、物体と物体が混ざりあうだけ。 “私”が食べていただけ。
2019-05-22 23:41:05でもこれは違う。 混ざり合うどころではない。 そう、化学反応という現象を、身をもって体験しているような感覚。 “私”自身が塗り替えられて、別の存在に変わっていく感覚。 「だめ……わたしが……わたしでなくなっちゃう」 「(じゃあ、やめる?)」 「やめ……ないで……」 咄嗟に反抗してしまう。
2019-05-22 23:43:45「ごめん、なさい」 「(いいのよ、謝らなくて。だって“私”が私に謝る筋合いなんてないでしょう?)」 「ふ、ふえぇ……」 どんどんと溶かされていく。 もう、どこから私の声を出しているのかも見当がつかないくらい、私の輪郭は崩れ去っている、はず。 外面も、内面も、“私”によって溶かされて……
2019-05-22 23:46:59「そう、だよね。わたしが、わたしとはなすなんて、へんなの」 「ほら、しっかり。“私”はどうしたいの?」 「このままねむりたいな」 「違うでしょ。私は?」 「私は……」 「“私”になるの」 「私になる」 「“私”になって」 「私の身体を手に入れて」 「そして」 「増やしたいな」 「そうよ、だって」
2019-05-23 01:51:03「私はスライムだから」 「そう、とても美しくて、綺麗な存在」 「えへ、えへへ……はぅっ」 どくん、と心臓が大きく鼓動する。 違う、私に心臓なんてないのに、心臓が跳ねて、全身に血液を送っているように感じる。 これは記憶? それとも心臓という概念を理解したの? 「う……うああ……」
2019-05-23 01:59:04苦しい。 息が上がる。 心臓が大きな音を立てて鼓動する。 勢いよく送り出される血液が、血管を押し広げて全身が張り裂けそうに痛い。 「はぁ……はぁ……」 気が付けば私は地面に座り込んで、両手で両肩を握りしめて、全身から汗を滴り落としていた。 「私は……」 ゆっくりと立ち上がる。
2019-05-23 02:06:22どうして、私は裸でここに座っていたのだろうか。 ふと、左手を前に突き出して、左手の甲を眺めてみる。 「そうか、私……」 突き出した左手の指先に右手を添えて、すっと表皮を撫でていく。 左手の指、甲、手首、前腕、肘、上腕、肩、へ。 右手で撫でられた部位が、ぷるんと透明になっていく。
2019-05-23 02:13:35「ふふ、綺麗ね」 青く透明な水晶のようになった私の左腕。 それは不純物もない、完全に透き通った私の身体。 私が恋い焦がれた、極めて純度の高い身体。 そういう美しい私の身体を見て、自然と笑みが溢れる。 べちょり。 少し力を抜くと、粘り気のある液体となって地面へと溢れ落ちる左腕。
2019-05-23 21:30:14