【wlw二次創作SS】2人の「前歴持ち」

コラボキャラが来たのならゲーム設定と童話原典をクロスオーバーさせればいいじゃない! (※ジュゼはwlwドラマCD準拠ではなく原典童話「ピノッキオの冒険」準拠です)
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童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「あー…ごめん。ボクはいいや」 いいやって何だ。ここに捕まったのは冤罪なのだろう。ならばここにいる道理は無い筈だ。 「なんか…ボクはもういいかなって」 この時、俺はやっと気付いた。ずっと寝転んでいて見えにくかったが彼女の手には禍々しく鋭い爪が武器として備わっていた。

2019-06-20 23:38:44
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

この子は戦闘用のオートマタだ。その気になれば最初から鉄格子など簡単に斬り裂き、自力で抜け出せたのだ。だがそうしようとはしなかった。 「ボク、バカだから何度も騙されるし、お父さんやラ・ファータさんにどんな顔して会えばいいか分かんないし。もうこのままココにずっと居ようって決めたんだ」

2019-06-20 23:41:53
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「もう4ヶ月前から決めてたんだ。だからさ、バイバイ。久々に誰かと話せて楽しかったよ」 本人の意思は硬そうだ。だがこれで本当に良いのか。俺はこのまま一人で脱出していいのか。俺は… →諦めるのか? ・そっとしておこう ・どうでもいい pic.twitter.com/hTwY5ty9bK

2019-06-20 23:42:15
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「諦めるのか?ジュゼ」 「えっ?」 ダメだ。こうして心の中で考えてるだけではジュゼの心を動かさない。俺の思いの丈をぶつけるんだ。 「悪い事もしてないのに牢屋に入れられて『理不尽に思わないのか』?悪い大人に『不条理に騙されて悔しくないのか』?」

2019-06-20 23:44:05
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「そ、そんなの…仕方ないじゃん。ボク、バカだから騙されたし、大人は誰も信じてくれないから…」 「それが諦めだと言っている!騙されて喰い物にされたままでいいのか!?何もしてないのに一方的に悪と決めつけられていいのか!?お前に『叛逆』の精神は無いのか!?」 「ハ、ハンギャク…?」

2019-06-20 23:45:25
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「…な、何さ何さ!昨日まで一言二言しか話さなかったくせにいきなり熱血ぶっちゃって!バーカ!バーカ!」 ジュゼはムキになって言い返してきた。だがそれは俺の言葉が響いているからだろう。先程までの無気力さはどこへやら、牢屋ごしでも噛み付くように言い返してくる。

2019-06-20 23:47:24
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「何がハンギャクのセーシンだよ!バッカみたい!気持ち次第で現実が変わるとでも言うの!?この牢屋から出る事もできない口ばっかりで弱っちいニンゲンのくせにさぁ!」 フーフー唸りながらジュゼは俺の顔を睨みつけている。その通りだ。ここは認知世界ではないからナイフは玩具。銃もモデルガンだ。

2019-06-20 23:48:56
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

だが、そんな口ばっかりで弱っちい人間の俺だからこそ、この諦めきった哀れな人形に見せつけねばならない気がした。踏み躙られ、虐げられた人間の「叛逆の精神」を。 俺は作ったキーピックを鉄格子の外へ投げ捨てる。せっかく作ったがこれでもう拾えない。 「それ、カギ開ける道具じゃなかったの?」

2019-06-20 23:49:28
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

俺は鉄格子を両手で握り締め、昔の事を思い出し始めた。問答無用で警察に連れていかれた事。相手を怪我させたと取調室で一方的に決めつけられた事。鮮明に思い出せる。 あの時と今の状況、恐ろしいほどによく似ている。理不尽さに怒りが沸々とこみ上げてくる。 そうだ。この感覚だ。

2019-06-20 23:50:27
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

(我は汝、汝は我…) ここはパレスの中ではない。だが同時に現実世界でもない。 (己の信じた正義の為に、あまねく冒涜を省みぬ者よ…) ここが御伽噺と伝承の世界だと言うのなら、『ヤツ』だってここにいる筈だ。 (その怒り、我が名と共に解き放て!) 「アルセーヌ!」

2019-06-20 23:52:41
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「うわあああ!?な、何それ!オバケ!?」 できた!アルセーヌ、俺が最初に呼び出したペルソナだ。 (どうした、随分と手間取っていたではないか) 「いつまで呼び出せるか分からない!早くやれ!」 言い終わるより先にアルセーヌは目の前の鉄格子を一撃で破壊する。確証は無かったが呼び出せた…。

2019-06-20 23:54:27
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「ジ、ジョーカー……?それは?」 ジュゼは尻餅をついて呆然としている。口はあんぐり開いたままだ。 「ジュゼ、お前は自分で言っていた。学校に行って賢くなれば騙されずに済んだのかもと。それが分かっているならお前は今からでも良い心の持ち主になれる筈だ。 …俺が心を盗んだりしなくてもな」

2019-06-20 23:55:28
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「やり直したいなら諦めるな。理不尽に負けそうなら抗え。見返したいなら立ち向かえ。それでもまだここに居たいと思うなら俺は止めない」 口が疲れた。こんなに喋ったのはいつぶりだろう。たしかに俺は無口なのかもしれない。 ジュゼはうな垂れてこちらを見ていない。だが大事な事はもう見せた。

2019-06-20 23:56:15
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

荷物をまとめて俺は建物の外へ出る。人通りの少なそうな場所を見極め、村から逃げ出すルートを考える。祭りの中心に人が集まっている。これなら楽勝だ。 行くアテは無いが帰る方法はある筈だ。乾いた風と共に俺は村の出口へと向かう。 俺の背後で怒りのままに鉄格子を斬り裂いたような音が聞こえた。

2019-06-20 23:57:58
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

(ひとまず今日はコレでおしまい。でも明日か明後日、ほんの少しだけ続きがあるかもね? 余談だけどボクが牢屋に捕まるエピソードは原典でも本当にあるよ。本当に4ヶ月いたんだ。誰も気付いてくれなさそうだから自分で解説しちゃうね)

2019-06-20 23:59:19
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「……というわけで、お父さんを看病しながらボクはワンダーランドで兵隊として働いてお金を稼いでるのでした。おしまい」 「うぅ、なんて良い話なんだ…!えらいなジュゼ…!立派だ…!」 「アシェンって厳しそうなくせに情にメチャクチャ脆いよね…そんなに泣かないでよ」

2019-06-22 23:40:40
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

今日、私はツイッターを更新する為の取材でジュゼに話を聞いていた。何気無い寄り道がひょんな事から家出となり、ラ・ファータ先生や大勢の人物、動物と出会い、最後にゼペット氏を助けて家に帰る「ピノッキオの冒険」のお話の顛末だ。 自分で一通り原典も読んだが、実際に聞くとまさに「冒険」だ。

2019-06-22 23:43:26
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「いいじゃないか、私も色んな童話が好きだが『ピノッキオの冒険』はその中でも指折りの作品だ。あれだけの悪ガキが世間に揉まれこんな立派に更生して」 「……あ〜、アシェン。あんまり『更生』って言葉は使わないでほしいな。その言葉はボクがこれまでに迷惑かけてきた人達に申し訳ないから」

2019-06-22 23:46:49
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「そんなものか?誰も気にしないと思うぞ。序盤で殺したコオロギだって何故か生きてたし」 「ホント、なんで生きてたんだろね?ボク、幽霊になったのまで見たのに」(※作中で理由が説明される事もなく『何故か』生きてた。詳しくは原典をチェックしてね) 「でもそうじゃない。ボクの気持ちの問題だよ」

2019-06-22 23:48:12
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「それにそれはボクが立派だったからじゃない。冒険の最中に沢山の人がボクに親切にしてくれたからこそ今のボクがあるんだ」 「……そうだな」 「人形芝居の人形達と親方、ボクを港まで運んでくれた鳩、助けてあげた犬、サメのお腹の中で出会ったマグロ。それと…怪盗ジョーカー!」

2019-06-22 23:49:18
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「ん?ジョーカー?誰だそれは」 「ジョーカーはジョーカーだよ。ハンギャクのセーシンを宿す正義の怪盗!」 嬉しそうにジュゼは話すが心当たりがない。道化師? 「ボクが牢屋で捕まってた時に励ましてくれたんだ。あの人がいなかったらボクあそこで諦めて一生あのままだったかもね」

2019-06-22 23:50:54
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

私は資料に持ってきていた「ピノッキオの冒険」を見返す。 たしかにピノッキオは沢山の動物を時に助け、時に助けられて危機を乗り越えてきた。また中盤では訴えを聞いてもらえず牢屋に閉じ込められるエピソードも本当に存在する。だがジョーカーなる登場人物は記憶してる限りじゃいないと思うのだが。

2019-06-22 23:52:54
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「これはもしや…ご存知の物語とは違う?ってヤツ?」 「怪盗はイタリアよりフランスって感じだな。別の童話世界の人物なのだろうか?」 「そういや神出鬼没っぽい人だったな。あれからもう会ってないけど、きっとジョーカーは今でも皆の為に戦ってるよ。ツヨキをクジキ、ヨワキをタスクって感じ」

2019-06-22 23:55:03
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「ほう?不思議な出会いもあったものだな。また再会できるといいな」 「そうだね。お礼も言いそびれたし。黒いコートと仮面でかっこよかったんだよ」 「ああ、今あそこでヴィルヘルムが連行してる少年みたいな感じか?」 「そうそう、あのいかにも暑そうなコートと仮面の子供……って、ええっ!?」

2019-06-22 23:58:27
童話に興味を持ったプテル(停止中) @manabuAschesama

「ジョーカー!ジョーカーじゃん!えっ何やってんの?」 「…!」 ジュゼは席を立つなりヴィルヘルムと少年の元へ駆けていく。私も慌てて追いかける。 「む、ジュゼ。貴様この少年を知ってるのか?」 「昔あった友達だよ。ジョーカーもしかして…あれ以来ずっと彷徨ってた感じ?」

2019-06-23 00:01:17