お好み焼き屋浜風 浦風アナザーエンド編【艦これSS】

紅吏珠名 @chrishna_c2

「浜風ごめんね。ちょっと提督さんのことを借りる」 「はい。ではあなた……提督、私は少し風に当たってきます」 姉妹艦として浦風の言いたいことを察したか、浜風が頷いて河岸を変える。夏祭りの雑踏の中、そんな浦風の身を優しく撫でるような潮風が吹きぬけた。 #お好み焼き屋浜風

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浦風は提督の胸に飛びこみ、声をあげて泣いた。 その声はどこまでもどこまでも……花火の音にかき消されていく。 呉の空。暮れる空。艦娘達の日常は新たな一ページを刻んでいく。あの頃の記憶はやがて思い出に姿を変えていったとしても。 #お好み焼き屋浜風

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「ねぇ提督さん。終わったらすぐに忘れてくれていい、今だけでいい、提督さんとの思い出を作らせて。それがあれば、きっとうちはこれからも生きられるから」 浦風はそっと目を閉じて、浜風にもう一度だけ謝って心の中から締めだし、ゆっくりと寄り添うように提督の頬に手をあてる。 #お好み焼き屋浜風

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「――と、ちょっと待って」 唇と唇とが触れあうまであと数センチ、というところで提督が手のひらで浦風の唇を静止し、真顔で口を開いた。そして腕を組み、うーんうーんと深刻顔。 「それがね、ところがね、……大変な事態になったんだ」 「へ？？」 #お好み焼き屋浜風

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「いいかい浦風？　落ち着いて聞くんだ」 こくこくこく。提督の言葉に浦風は何度も首を縦に振ってそれに応じる。 「僕もほんのさっき知ったんだけど、参謀の大淀と仁淀からの報告によると、人類と深海棲艦との和平に難色を示した一派が出現したらしい」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「へ？？　へ？？」 「深海棲艦も一枚岩ではない、ということみたいだ。そこで浦風にも力を貸してほしいと思ってね」 二人に配慮していてか、さっきまで茂みに隠れていた艦娘や深海棲艦たちが、ここぞとばかりに顔を出す。 #お好み焼き屋浜風

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「今度は和平に応じてくれた深海棲艦が味方になってくれる」 「――強硬派ドモノ残党狩リカ　腕ガ鳴ル」 「言ッタハズヨ　我々ヲ脅カス者ドモハ　沈メテアゲルッテ」 「とまぁ、そういうわけだ。深海棲艦と手を結んで戦うなんて前例がないことだけど、まぁがんばるよ」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

やれやれ仕方ないなあ。という感じで提督が笑っている。 「働きたくない。でも帰ってこなかったら恩給もらえないし」 「またオリョクルの日々でち。給料あげろでち」 うそぶく初雪と伊５８の顔は、どこか嬉しそうだった。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「――呉教育隊推参。我が門下生たちの士気も練度も充分だ。いつでもいけるぞ！」 師匠の二つ名で呼ばれる日向教官とその弟子たちだ。艤装をまとった彼女たちの姿は皆キラキラと輝きをたたえている。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「この磯風がマイアミで鍛えあげた料理の冴えを披露してやろう。これで街の顔役になったほどだぞ」 「谷風さんの腕もポキポキなるねえ。このあたしが直々に揉んでやろうじゃないか。敵さんはどこにいるんだい？」 席を外していた浜風が、どこかからか磯風と谷風を連れてきていた。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「詳細は鎮守府に戻ってから順を追って説明するけど、僕たちの戦いはまだ終わっていない。現在ドックで艤装の整備を急ピッチで進めている」 まくしたてるような彼女たちをよそに。知ってか知らずか。 呉の空には、三千発の花火がなおも打ち上げられ続いている。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「は、はははは、ははははは……」 さっきのやり取りを見られていた恥ずかしさよりも、仲間たちとまたこうして一緒にいられることの嬉しさよりも、いろんな感情がない交ぜになって、浦風からはただただ乾いた笑いしか出てこない。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「それじゃ改めて。暁の水平線に、勝利を刻もう！」 花火の彩に負けないような、艦娘達からの鬨の声があがる。 呉の空は、どこまでも広がっていく―――― #お好み焼き屋浜風