60式自走106mm無反動砲の試作車まとめ
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参考・出典一覧
ガリレオ出版社「グランドパワー」
・2011年9月号 島内慶太 著
・2003年11月号別冊[陸上自衛隊の装備車輌Vol.1] 高松武彦 著
アルゴノート社「PANZER」
・1993年9月号 高橋昇 著
・1993年10月号 高橋昇 著
・1993年11月号 高橋昇 著
・2002年12月号 高松武彦 著
デルタ出版社「戦車マガジン」
・1978年11月号 近藤清秀 著
・1991年11月号別冊[陸上自衛隊車両装備史1950〜1991] 斎藤浩 著
潮書房光人新社「光人社NF文庫」
・戦後日本の戦車開発史 林磐男 著
大口径砲を積んだ小型装軌車両の構想
小型軽量車体に大口径砲を搭載した装軌車両の構想は1953年1月頃から生まれました。これは旧軍のテケ車に代表される「豆タンク」に影響を受けたようです。この豆タンクと米軍の105mm無反動砲を結びつけて自走無反動砲の開発は始まりました。
2020-03-07 16:29:01開発にあたり、砲は米国から入手した無反動砲弾を元に技術研究本部の昭和29年度研究開発項目として、日本製鋼所が検圧砲身を試作。そして同年中に設計図とモックアップに関する予算が承認され、11月に防衛庁から各メーカーに提案書が送られました。
2020-03-07 16:40:15防衛庁から提示された要求は以下のものでした (1)無反動砲は双連装備。砲架は油圧または手動による昇降式で、隠顕式とする。 (2)乗員は3名、全備重量は5tを目標とする。 (3)搭載エンジンは空冷ディーゼル。 (4)路上最高速度はM24戦車と同等(55km/h)以上とする。 (5)雪上用履帯を装着可能とする。
2020-03-07 16:51:38年末期限だったこの提案書に応答したメーカーはいずれも戦時中に装軌車両を制作していた小松製作所(コマツ)・三菱日本重工(三菱重工)・日野自動車工業の三社でした。
2020-03-07 17:01:30各社の提案内容はいずれも砲架を中央に据えていたのですが、足回りがコマツはフロントエンジン/リアドライブ。三菱がリアエンジン/フロントドライブと両者真逆になっており、日野はミッドエンジン/フロントドライブで操縦席が前方に隔離されるなどそれぞれの個性が出ています。
2020-03-07 17:11:32ただエンジンは三社とも面積の小さい水平対向エンジンの装備を提案していたようです。 しかし日野はこの時点で落選、以降の開発はコマツ・三菱の二社で行うことになりました。そして試作名としてコマツにはSS-1(社内名称KT50)、三菱にはSS-2の名前が与えられました。
2020-03-07 17:21:14ちなみにSSという名称/略記号は装軌装甲車の頭文字で、AFV第一番目の車両だからだそうです。(他にも装甲戦闘車、装甲装軌車など諸説あり)そして次に開発が始まった61式戦車には安直にもS「S」の次ということでS「T」が付けられ、その後の略記号も…
2020-03-09 23:23:16SU:試製56式装甲車 SV:試製56式自走81mm迫撃砲 SW:試作で終わった地雷処理車(詳細求) SX:試製56式自走107mm迫撃砲 SY:試製56式105mm自走砲 SZ: 試製56式特殊運搬車 とアルファベット順に付けるもすぐにZまで埋まってしまい、結局Sの後ろにその車両の役割の頭文字を付けることになったそうです。
2020-03-10 19:25:51それとたまに見る「試製56式自走(105mm)無反動砲」という名前ですが当時の図面には「試製自走105mm無反動砲(SS○)」と載っています。ただこの名前は試作車の完成後(制式採用後?)に名付けられたそうなのでキ100の五式のように便宜上付けられた名前では無いらしいです。
2020-03-09 23:30:14本まとめでは試作車名称はあくまで「SS-○(第○次試作車(第○案))」としますが、仮にそれぞれの試作車を名付けるとしたら「試製56式自走(105mm)無反動砲第○次試作車(第○案)」もしくは「60式自走(106mm)無反動砲第○次試作車(第○案)」あたりでしょうか。
2020-03-09 23:33:18コマツ製SS-1(第一次試作車第一案)
これが今まとめの目玉となるであろうSS-1の写真です。キャタピラや操縦手席などから旧軍の濃い遺伝子を感じますね〜5式なんちゃらとか付けても違和感なさそう pic.twitter.com/Rvcy34uOqW
2019-07-28 21:41:45新しく手に入ったSS-1の四方からの写真。車体後部のアクセスハッチみたいなやつが砲弾入れで、ここに二発収納されています。 #ミリタリー #60式自走106mm無反動砲 pic.twitter.com/aBao8TE6P4
2019-08-16 22:08:56SS-1はコマツ粟津工場で旧軍出身の前島隆夫氏を中心に製作されましたが、当時の粟津工場は装甲車両の設計生産のノウハウが乏しかったので製作に苦戦、SS-2より納入が遅れてしまったそうです。写真はコマツのブルドーザー工場の片隅で作られたSS-1のモックアップ。自衛隊黎明期の肩身の狭さが伝わる。 pic.twitter.com/XT6yR0KwSX
2020-04-13 13:49:51SS-1のシャーシ?各部品装備のため上面が開いた状態。操縦席の丸みがテケみたいでかわいいと思う。 前部のクソデカスペースからフロントエンジンだということがわかりますね。ただこのスペースが後に剛性上の問題になった模様 pic.twitter.com/xp0lttc6qW
2020-02-20 12:33:28SS-1の車体は鋼板溶接構成で、完成を急ぐため6~16mm普通鋼板が用いられました。操縦席は曲面構成で、ユニークな点が一撃離脱を容易にするため後部座席にも後ろ向きに運転装置とキューポラが設けられています。 pic.twitter.com/b9CsaVDbVR
2020-03-07 21:12:10SS-1とSS-2の共通する部分は乗員3名、日本製鋼所製の105mm無反動砲を双連装備、直視式光学照準器を備え、75mm測遠機を装備、間接照準眼鏡も搭載可能、操向機はクラッチ・ブレーキ式、足回りはソリッドゴム付きの転輪が下部4個、上部3個、履帯は鋳鋼製でゴムブッシュ入り、などであった。
2020-03-07 20:37:09SS-1に搭載された6T110エンジン。 水平対向6気筒4サイクルでスペックは ・ボア110mm、ストローク130mm ・排気量7400cc ・105㏋、2300rpm 左右のファンで気筒に冷却風を送り、上面左右が排気管、中央が燃料噴射ポンプ、その右側がセルモーターという構成になっている。 pic.twitter.com/p2MF3L04hJ
2020-04-13 13:51:15SS-1のナイトハルトゴム式懸架装置。 転輪の揺腕につながる角形外筒と固定角型軸の隙間に円柱型ゴムを挿入しており、ゴムの変形弾力を利用し衝撃を吸収する。照準に悪影響を与えることも無くそれなりに優れた衝撃吸収性を持っており、トーションバーと違って併装アブソーバーも必要無かった。 pic.twitter.com/cl0A30WdsZ
2020-02-20 12:06:26舗装道路用ゴムパッドを取り付けたSS-1の履帯。旧軍車両の履帯に類似しており、防滑鋲を付ける孔が左右についている。材質はシリコンマンガン鋼で履帯幅は250mm、接地圧は0.53kg/cm2だった。 pic.twitter.com/SbHS4dhcVL
2020-03-12 21:34:36SS-1の狙いは低姿勢による遮蔽性の高さと高機動でした。地上高300mm.全高1250mmと小さく、機動性は山岳地帯の多い日本のために踏破性能も ・登板能力31度 ・超壕幅1800mm ・超堤高550mm ・旋回半径は信地旋回 ・水深700mmまで渡河可能 ・航続距離100km となかなか優れたものになっていました。
2020-03-13 11:32:06