あー何もしないでピチピチ爆乳褐色清楚姉さん女房がほしー!

はーほしいな20前後のワンコ系メス男子嫁がよ(誰も読まないところに本音を書く)
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帽子男 @alkali_acid

イケオジのバーテンダーが尋ねる。 マコト君はぽかんとした。海外旅行とか出張とかしてそうに見えるだろうか。 「…海外とか、行かないですね。パスポートも持ってないです」 「そうでしたか。ずいぶん発音が慣れていらしたので」 「そうですか?」

2019-08-18 22:34:10
帽子男 @alkali_acid

店内で向こうの音楽が流れている。店の客はそう多くない。でも単価が高いしな。だいたいかなり年配。ただ、ほかの人は普通にウィスキーとかを頼んでいる。 話しかける勇気とかはない。本を手に取って開いてみる。たくさんの見知らぬ文字。アルファベットでもない。ぜんぜん解らない。

2019-08-18 22:36:25
帽子男 @alkali_acid

でもつい指でなぞって読もうとする。 「ご興味がおありですか」 「あ、すいません」 「いえ、読んでいただいて結構です。お貸しします。よければこちらも」 なんと辞書。しかしちょっと古い。こちらの言葉が旧字。

2019-08-18 22:38:09
帽子男 @alkali_acid

勉強とか好きではなかったのに、仕事のあいまに本を解読するようになった。単語の意味だけだんだん拾えるようになる。するとどうしてか文法はするっと入ってきた。かなり独特なのに。 戸惑いつつ気づくとバーで流れる音楽を口ずさんでいる。 ガススタで店長にいびられても以前ほど落ち込まなくなった。

2019-08-18 22:40:28
帽子男 @alkali_acid

何の話だっけ。 そうそうピチピチ褐色巨乳姉さん女房キャサリンの話だった。 マコト君にその縁談を持ち掛けたのはバーテンダーだった。 「結婚されていますか」 「いや、独身です」 「実は…ちょうど独身の地元の男性を探していまして。あとでお時間をいただいても?」 「…十時ぐらいまでなら」

2019-08-18 22:42:57
帽子男 @alkali_acid

「むこうからこちらに越境されたいという女性がいまして。あの黄金酒を作っている蔵元の方なのですが」 「そうですか」 「ただ滞在が長引くと、不正行為という扱いになりかねませんので」 「そうなんですね」 「かたちだけ、といっては大変恐縮なのですが、キダ様に配偶者になっていただければ」

2019-08-18 22:47:10
帽子男 @alkali_acid

マコト君は汗を掻いた。もしかすると何か犯罪にかかわろうとしているのかもしれない。ウェイなら度胸で引き受けたかもしれず、オタクも想像をたくましくして期待をしたかもしれない。だがマコト君は友達がいない無趣味な人間で、今の暮らしを守るのさえやっとだったから、厄介は御免だった。

2019-08-18 22:48:44
帽子男 @alkali_acid

「当店で何か報酬のようなものをお支払いできる訳ではないのですが…引き受けていただければ、お酒のお代の方、少し引かせていただきます」 「…ちょっと考えさせて下さい」 「解りました。お返事は急ぎません。今日明日の話ではありませんので」

2019-08-18 22:50:19
帽子男 @alkali_acid

しばらくバーに行くのはやめた。 心臓がどきどきしたからだ。 仕事に出るとガススタの店長にのろまさを叱られた。年はそう変わらないが向こうは大卒で、ちゃんとてきぱきやれる。 マコト君はたいして何もできない。憂鬱に帰宅して布団に転がって外国の本を開いて読もうとし、借り物なのを思い出す。

2019-08-18 22:52:58
帽子男 @alkali_acid

返しに行く。 バーテンダーは特に嫌な顔もしない。 もうあの話は立ち消えたのかなとほっとしている。 「本、ありがとうございました」 「いえ。楽しんでいただいたようで何よりです」

2019-08-18 22:54:31
帽子男 @alkali_acid

やはりあやしげな外国女性との結婚について言及はないようだ。 すこし拍子抜けもした。 「おや、本に染みがありますね」 急に褐色のイケオジが話しかけてくる。 「キダ様。何か落とされませんでしたか」 「いえっ」 そんなはずはない。丁寧に扱っていたつもりだ。

2019-08-18 22:56:50
帽子男 @alkali_acid

食べ物や飲み物のそばには置かなかった。 あるとすれば染みはもとからのはずだ。 などと主張する勇気はマコト君にはなかった。 「あの…もし汚れてたら、弁償します」 あまり考えずに口にする。 「そういわれましても。こちらで市販しているものではないので」 「いくらぐらい…」

2019-08-18 22:58:36
帽子男 @alkali_acid

金額を教えてもらう。ちょっと寒気がする。 「…あの…ちょっと…待ってもらえれば…分割で」 「そうですね。こちらも不注意でした」 息が苦しい。どうしてこんな高い店に入り浸ってしまったのだろう。 身分違いだというのに。あまりになじんで。

2019-08-18 23:00:19
帽子男 @alkali_acid

「…キダ様、キダ様」 「はい」 「ところで先日お話した件ですが。覚えていらっしゃいますか」 「…はい…あ、はい。結婚の」 「いかがでしょう。最長で…おそらく二年程度」 「…はい…あの…はい…僕で…よければ…」

2019-08-18 23:01:53
帽子男 @alkali_acid

かくしてピチピチ褐色巨乳姉さん女房がやってきた。 やや釣り目。なぜか汚らわしそうに見つめてくる。 二人でバーの奥の意外に広いスタッフルームでぶあつい、ごわごわした材質の紙に、羽の筆で署名をして、指を小刀で少し切って拇印を押した。 「届けの方はこちらでやっておきますので。それでは」

2019-08-18 23:04:20
帽子男 @alkali_acid

バーテンダーとキャサリンはむこうの言葉で何か話している。 意外にもイケオジの方が姉さん女房にへりくだっているようだ。 ケ・カヴァーヴァという単語が混じる。奥様とか身分の高い既婚女性を指す言葉。

2019-08-18 23:06:06
帽子男 @alkali_acid

店を出る準備が整いそうだったのでマコト君はわずかばかり頭に浮かぶ向こうの言葉を交えて話しかける。 「荷物とかはありますか…えーと、ドパジ、パジありますか」 「ありません」 キャサリンはバーテンダーと同じぐらい流暢なこちらの言葉を話した。ただし切り捨てるように鋭かった。

2019-08-18 23:08:31
帽子男 @alkali_acid

バーテンの呼んだタクシーでとりあえずアパートまで帰宅。新妻はずっと外の景色を見ていた。支払いはバーテンがアプリで済ませてくれたみたい。 「…どうぞ」 いちおうできる限り掃除はしておいた。もともとたいして家具がない部屋なので、ゴミさえ全部捨ててしまえばがらんとしている。

2019-08-18 23:10:44
帽子男 @alkali_acid

だがキャサリンは明らかに狭くて汚いなという反応をし、形のよい眉をひそめた。不機嫌そうだが、とても美しい。 マコト君は一瞬目を奪われた。 まるで本の挿絵に出てくる女神のようだった。異国風の褐色の肌を大胆に出した服の上から半ば透ける薄絹をまとって、艶やかな黒髪もゆるやかに覆っている。

2019-08-18 23:14:33
帽子男 @alkali_acid

「…鳥小屋」 と向こうの言葉で感想を述べられてもすぐには気を悪くできない程だった。

2019-08-18 23:14:46
帽子男 @alkali_acid

とりあえず買っておいた新品の布団を指さす。 「メナメド。布団…メナメド」 「使いません」 「…はい」

2019-08-18 23:16:30
帽子男 @alkali_acid

「壁を借ります」 断ってからキャサリンは、びたん、びたんと、金具のついた蜜蝋のようなものを壁に貼り付けて、間に蓑虫みたいなハンモックをさしわたした。 「ここで寝ます」 「はい」 じゃあ布団は買わなきゃよかった。

2019-08-18 23:18:12
帽子男 @alkali_acid

キャサリンは変わっていたが、あまり邪魔さえしなければそう怖い態度もとらなかった。マコト君はコミュ障なので、邪魔をしないのは得意だ。

2019-08-18 23:19:29
帽子男 @alkali_acid

向こうは単刀直入に要求を伝えてくる。 「これを借ります」 ユニットバスを指さす、 「どうぞ」 家主は許可する。すると輝石の小さな甕を取り出して、中からさらさらと砂のような何かをふりまき、水を張る。 「出て行ってください」 睨みながら告げてくる。 「はい」

2019-08-18 23:21:20
帽子男 @alkali_acid

何をしているのかなと思ったらどうやら洗濯らしい。きらきらの砂がどういう仕組みか衣服をきれいにし、また甕に戻る。 「あの、洗濯機あります」 と義務感から一応使い方を説明しようとしたが、アパート備えつけのおんぼろ家電をひとめみて、またいかにも汚くて役に立たなそうという反応をするだけ。

2019-08-18 23:23:09
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