『○○〜こっちこっち!』「ごめん遅れた!」『待ちくたびれたわ〜』 シャツを着崩した忠義がネクタイを緩めながら笑う。 この人は私の飲み友達で、私の好きな人。これから先、忠義に想いを告げる事もないし告げる気もない。 『これからも親友でいてな、』 そう言われてしまったから。
2019-06-14 15:00:57『そんでさ〜またあの上司が…』 枝豆を口に放り込みながら上司の文句を言う忠義。それをレモンサワー片手にうんうん、と聞いてあげる午後23時。 『ま、るやま?誰?』「あ、ちょっと勝手に見ないで」テーブルの上に置いていたスマホを覗いて、怪訝そうな顔をする。 『で?誰?』「同じ会社の人」
2019-06-14 22:07:50『へ〜』LINEを返そうと携帯を開けば丸ちゃんらしい可愛い文字が並んでいて、思わず頬が緩んだ。[明日の飲み会行けそう〜?🥺]それに[行けるよ!☺️楽しみ~]と返して携帯を閉じれば不貞腐れたようにビールを飲む忠義と目が合う。…出たよその顔。 私が他の人と飲みに行こうとしたらすぐ不貞腐れる
2019-06-15 21:02:03『明日なんかあんの?』「会社の飲み会」『聞いてへん』「言ってないからね。あ、タコワサちょーだい」『ん』(間接キス…)自分の箸で私の口に放り込んだ忠義はまだちょっと不機嫌そう。『飲み会終わったら俺の家な』「えー…」『じゃあお前の家』仕方ない。「合鍵無くしてないよね?」あ、機嫌治った
2019-06-15 21:02:04「じゃあまた明日ね」『遅くなったらあかんからな』「はいはい」 少し火照った頬をドアに押し付けて、帰って行く忠義を見送る。 こうやって部屋の前まで送ってくれる優しさも、エレベーターに乗り込んで手を振る時のヘニャヘニャした顔も、全部私のものだったらいいのに。なんて。
2019-06-15 22:24:02丸「○○ちゃんそれ1口ちょーだい❤︎」会社行きつけの居酒屋で私からグラスを奪った丸ちゃんが、ごくんと飲んで。それに〈また丸山やってるよ〜〉〈本当△△の事好きだな〜〉なんて同期や後輩、そして上司にまで冷やかされる始末。 (ここに忠義が居なくて良かった…)絶対面倒くさくなる。
2019-06-16 00:16:42丸「難しい顔してどしたん〜」「丸ちゃん近い、そして飲み過ぎ」丸「やって久しぶりに○○ちゃんと飲むんやもん〜」可愛い顔で私を見つめるその目は優しくて。丸ちゃんって、あざといよな…忠義には無い可愛気がある。って、さっきから忠義の事ばっかりだ 丸(携帯鳴っとるけど言わんとこ〜♪)
2019-06-16 00:16:45飲み会が終わりに近づくと、周りの人達は二次会に行く準備をする人と、帰る準備をする人でほとんどになる。 勿論私は、今頃勝手に置いて行ったスウェットを着て私を待っているあの男のために帰る準備。 丸「え〜○○ちゃん二次会行かへんの?」「うん、丸ちゃんは二次会行くんだよね」
2019-06-16 17:29:08丸「ん〜迷ってるぅ」え、意外。だって丸ちゃん楽しい所好きだから行くと思ったのに。丸「○○ちゃん行かへんなら俺も行きたない〜🥺」ぐずる丸ちゃんは相当酔っているのか上目遣いで地団駄を踏む。〈駅まで送ってやれば?〉「え?いや、」丸「送る!!」「…」見つめ合うこと数秒。「…分かった」
2019-06-16 17:29:09丸ちゃんと居酒屋を出て、駅に歩き出そうとしたのになぜか丸ちゃんが向かったのはタクシー乗り場。 「?丸ちゃん、駅こっち…」丸「危ないから家まで送ってく」「いやいや、いいって」丸「何で?迷惑?」そんな潤んだ瞳で言われたらダメって言えないじゃん…「…丸ちゃん本当あざとい」 丸「え〜?」
2019-06-16 22:59:48半ば強引にタクシーに入れられて、仕方なく自分の住所を運転手さんに告げれば動き出した車。 「…、」丸「眠たい?」「…ちょっと」アルコールと車の振動に眠気が襲って私は素直に頷く。丸「僕の肩使い?」「…ん」こてん、と肩に寄りかかって私は重たい瞼を下ろした。
2019-06-16 22:59:51丸「…ちゃん、○○ちゃん」「…ん、ごめん」丸「気持ち良さそ〜に寝てたで?」「…忘れて」タクシー代を割り勘して(丸ちゃんが全部出そうとしたから全力で止めた)私達はタクシーから出た。外の空気が心地良くて、目を閉じて風を感じていれば 丸「なあ、あの人って○○ちゃんの彼氏?」「…え」
2019-06-16 22:59:52丸ちゃんの視線を辿れば、スウェット姿で近づいてくる忠義が。 「彼氏じゃない…ただの友達」丸「…そうなん?」うんうん、と何度も頷いていれば『○○、誰?』低い声が直ぐ頭上から聞こえて心臓がドクンと高鳴った。 「忠義、」『あー…もしかして丸山さん?』丸「…は?」
2019-06-16 23:16:31なんか険悪なんですけど… 『送ってくれてありがとうございました、もう大丈夫なんで』 早口で捲し立て、私の手を掴んでマンションに入る忠義。 振り向く隙を与えないままエレベーターに押し込まれて。少し見えた丸ちゃんの顔は、俯いていてよく分からなかった。明日、ちゃんと謝らないと。
2019-06-17 19:16:49『…』「…」 掴まれた右手は離さないまま、慣れた手つきで鍵を開けて入る忠義に私も続けて入る。 「忠義、」『どんだけ飲んだん?』私の言葉を遮って、手の甲で頬を撫でる忠義に私は目を落とす。こんな赤い顔、好きだって言ってるようなもんだ。『…』(○○ってこんな可愛かったっけ…)
2019-06-17 19:16:49「…忠義、あの、」『…ん』「近い…」『だから顔赤いんや〜(笑)』私から離れて馬鹿にしたように笑うから腹が立つ。 「っ…着替えてくる!」『はーい、あ、風呂借りたけど良かった?』「泊まる気?」うん、と頷いた忠義に私は「…いいよ」と頷いて了承した。
2019-06-18 22:35:13部屋着に着替えて、寝室から出たら自分が飲んだ缶ビールやら何やらを片付けている忠義と目が合う。 やっぱり、合鍵交換してこうやって泊まらせたりするのって付き合ってない男女のする事なのかな。普通ならお互い好き同士で(早く言ってよ〜!)ってなるんだろうけど。悲しい事に脈無しだし。
2019-06-18 22:35:14( 忠義side. ) さっきからずっと考えてるのは、○○は俺以外にも仲が良い男がおって、いつか2人で飲み行くんかな、とか。丸山さんから香った香水のにおいが○○からもしてイライラしたり、今日電話に出なかったのは丸山さんとの時間が楽しかったからなんかな、とか。 こんなん、嫉妬してるみたいやん
2019-06-18 22:35:15『○○のベッドで寝たい』「じゃあ私ソファ?いいけど…」いや、良くないやろ。ていうかそういう事ちゃうくて… 『○○と一緒に寝たい』「…え」『そんな戸惑う?』○○が酔って帰って来た時、ソファの下で寝る俺にぴったりくっついて寝ていたり、逆に俺が○○のベッドに入って一緒に寝た時あったやん
2019-06-18 23:13:09(○○side.) 「…分かった、お風呂入ってくるから先に寝てていいよ」なるべく焦ってる姿を見られたくなくて、私は着替えを抱えて小走りで洗面所に向かった。 お酒は飲んだけど、もう酔いは冷めてるしほぼ素面に近い。 「…ん〜」忠義は良くても、私は良く無いんだよ。…この関係、心臓に悪い
2019-06-21 00:34:02シャワーを浴びて、いつもよりスキンケアに時間かけるあたり女子だな〜って思う。想いを寄せてるあの男は、きっと私のベッドでぐっすり眠ってるんだろうけど。 『あ、来た〜』(寝てなかった…)『布団入らんの?』「…寝てると思った」『○○の事待ってたから』本当、私いつか死ぬんじゃないかな。
2019-06-21 00:34:03ドキドキしながら布団に入って、なるべく距離を取るようにするけどやっぱりシングルベッドだから狭いし落ちそうになる。『落ちるって(笑)』「っ…!」私のお腹に回った腕と、同じシャンプーの香りで抱きしめられていると気づくのにはそう時間はかからなかった。
2019-06-21 00:34:04「ちょっ…」『…』「忠義?」『…』 返事が聞こえなくて、もう寝てしまったと思った私は、早くうるさい心臓の音を静めたくて瞳を閉じた。 忠義が寝たフリをしていて、(俺が○○の1番やねん…)なんて事を思いながら丸山くんに闘志を燃やしていた事なんか知らずに。
2019-06-22 00:05:29「おはよ、丸山くん」丸「…あ、おはよ」気まずそうに逸らされた視線に昨日の事が思い出されて「昨日は本当にごめんね」そう謝れば垂れ下がった尻尾と耳が見えて、上目遣いで私を見た丸山くん。丸「ほんまに彼氏ちゃうん?」「うん」丸「…でも、○○ちゃんは好きなんやろ?あの人のこと」…なぜバレた
2019-06-22 00:05:29