裏のメッセージによるコミュニケーション
- ShinShinohara
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その学生さんは、明らかに疲弊していた。研究が楽しくて仕方ない先輩の熱血指導についていけず、研究嫌いになっていた。 七月になって私が研究指導を引き受けることに。最初の指導は「七月、八月は研究室に来るな、遊んでこい」というもの。疲れきった心を回復させないと、研究どころではない。
2019-08-26 18:11:21九月に入って顔を見せると、かなりリフレッシュできた様子。けれど、研究への嫌悪感、拒否感が残っているらしい。そこで次なる指導は「たとえ実験の途中でも、時間がきたら終わり。とっとと帰るように。」
2019-08-26 18:14:18毎朝、今日は何をするのか尋ねた。「あれとこれをします」これまでの習慣から、多めの仕事をするという宣言。私は「これ、時間内にできないだろ。明日以降に後回し。これもちょっと無理がある。途中であっても、時間がきたら手を止めて帰るように。」ともかく私からセーブ。
2019-08-26 18:17:16もうちょっとやった方がキリがいいのに、という場面でも「はい、時間切れ。帰りなさい」。すると、学生さんの、研究への嫌悪感が徐々に薄れ、むしろ「やりたいのに最後までやらせてもらえない」というフラストレーションがたまってきた様子。
2019-08-26 18:19:07ある日、「この実験はどうしても終わらせたいです。時間内に終わることができませんが、どうしてもやらせてほしい」と学生さんから訴えてきた。 私は「仕方ない。でもそのかわり、ビッシリ実験しないように。休みを必ず入れるように。疲れないようにね」とセーブ。
2019-08-26 18:21:15それから怒涛のごとく実験をするように。私は「あかん!やりすぎ!土日は来るな!キチンと休め!」と制止。常に八割程度に出力を抑えるようにさせた。すると、八割ギリギリ、実験にのめり込むように。
2019-08-26 18:23:18「やれ」「やった方がいいよ」という言葉には、「お前はやるべきことをやっていない人間だ」という裏のメッセージが伝わってしまう。それが自己イメージの低下につながり、モチベーションをダダ下がりにする。
2019-08-26 18:25:05「やるな」「休め」という言葉には、「お前は制止しないと頑張りすぎて体を壊してしまうほど、働き者の人間だ」という裏のメッセージが伝わる。それがポジティブな自己イメージの確立につながり、意欲を回復させる。
2019-08-26 18:26:39人間は下手に言葉が通じる生き物だから、言葉の額面通りに相手に伝わるし、相手を言葉通りに動かせると信じてしまいやすい。 しかし多くの場合、言葉の裏のメッセージが伝わる。それ次第で意欲的にもなれば、無気力にもなる。人は、人から認められて初めて気力を維持できる生き物。
2019-08-26 18:28:58ならば、その人の心に直接響くことになる「裏のメッセージ」で、「あなたはほっとくと頑張り過ぎる人」という信頼を伝えた方がよい。そんな風に評価されてることが嬉しくて、心に受けた傷も、時間をかけて癒されるかもしれない。
2019-08-26 18:30:57