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続けて二撃、三撃、空気を震わせ、舗装路に無数の蜘蛛の巣状の亀裂を走らせながら天使修道会の精鋭は容赦なく神敵の残骸を打ち据える。 イヤホンから流れ込むホーリーメタルがアウトロを迎え次のさらにアップテンポなナンバーに。 「…クソ悪魔が」 クレーターのようになった攻撃地点に吐き捨てる。
2019-08-26 22:08:34「すごいすごーい!いまのは!余、消滅するかとおもったー!」 楽しげな声が響く。 するとためらわず尼騎士はまたフレイルを打ち込む。 「あっちっち!」 瞬時に再生した王子が燃える鉄球を手でつかみ取る。触れたところから煙が上がる。 「そちー…天使?」 「人間だよクソ悪魔!」
2019-08-26 22:11:52「人間!強いなー!天使かと思った!」 「そうかい!」 パワードスーツ、つまり甲冑をオーバードライブさせ、関節から黄金の炎を噴き出させながら、ネフィリムの女丈夫は渦巻く聖なる気をまとった拳を放つ。 「くたばれ!!!」 「ぷぎゅっ」
2019-08-26 22:13:53またしてもあどけない面差しはひしゃげ、拷問塔の壁面にめりこみ、どんな外部からの干渉にも傷つかないはずの素材を窪ませる。 「そちー…まことに人間?」 「てめえこそそこまでしぶといのは、悪魔じゃなくゴキブリじゃねえか?」 「悪魔ぞー!余の名は」 フレイルがまた鎖を鳴らして食い込む。
2019-08-26 22:16:06がっと謎の紫体液を吐きながら、少年は無邪気に尋ねる。 「スクセ…そちはー?」 「ゴキブリに名乗ってどうすんだ」 ホーリーメタルを最大にしてさえ悪魔の誘惑は耳に届く。 闇の族(うから)は、その声を聴き続けるだけで魂が腐る。 尼騎士はもう一度スーツの限界を試すことにした。
2019-08-26 22:18:09あと一発で滅しきれるのか。確信はない。 だが押し切る。 甲冑は先ほどと異なり左右非対称に金の炎を噴き出し、やや安定を失いながら、神の僕を加速させ、標的に驀進させた。 神の敵はかわそうともしない。 「ぷぎゅううう!!!!!!」
2019-08-26 22:20:16またしても王子は圧潰した。人間ならぬ存在の核が傷つき、砕けるかと思えるほどひどく。 「終わりだああ!!クソ悪魔!!!!!」 「あははー!!!あははははー!!」
2019-08-26 22:21:27ネフィリムの全力をじりじりとデーモンは押し返し始める。 「ぐおおおお!!!」 「にゃはー💛」 「ちいいいい!!」 ゴールデンファイアー頭突きをキメる尼騎士。何発もぶつけるとヘルメットがひび割れ、ずれ、つるつる頭の粗削りな美貌があらわになる。 防具が完全になくなっても、なお続ける。
2019-08-26 22:23:27「おっるああああ!!!」 「あははあー!あ、あーんっ」 頭突きのタイミングを読み切った王子がぎりぎりのところで首を引き、勢いをそいだところで、いきなり接吻を奪う。 「んぅううっ!?」 「んふぅ💛」
2019-08-26 22:24:41童形の闇が貪る口づけは甘く、どんな人間の女、いや男でも、蕩かさずにはおかない巧みさだった。 「んぅう!!!!」 尼騎士は唇をもぎはなすかわりにねじ入って来る舌を噛み切ろうとする。だが過ちだった。悪魔の得意とする方法で争うというのは。
2019-08-26 22:26:52パワードスーツの関節がきしみをさせ、限界まで稼働した機械の甲冑はついに、動力源とするネフィリムの炎に耐え切れず、暴走を始める。緊急離脱機構がはたらき、薄く滑らかな装甲は脱げ落ちる。 たちまち彼我の膂力の差が開いた。 今や小柄な少年は大柄な女にのしかかり、さらに押し倒そうとする。
2019-08-26 22:30:04嬉しそうに尾を振り、羽をぱたつかせ、熱い口腔の中をねぶりつつ、かみつこうと閉じては開く歯をかわして、王子は目を細める。 「ぷはっ…そちー…名前ーなんという?」 「クソ…悪魔がぁああああ!!」 蹂躙された口から山吹の気炎を吐き、両の瞳から火花を散らす尼騎士。
2019-08-26 22:32:03まだ耳にはまったままのイヤホンが再生リストにあるホーリーメタルの最後のナンバーを鼓膜に打ち付ける。 女丈夫は、逆転して男児を抑えつけた。 「てめえに教える…名はねえ!!」 吐き捨てながら、残ったありったけの力をかき集めた頭突きを打ち込む。
2019-08-26 22:34:22◆◆◆◆ ホーリーメタルが最初の曲からまた再生をはじめて、天使修道会の精鋭はまぶたを開いた。 「目がさめたか?」 仲間の僧騎士の顔が覗き込んでいる。隊の三人のうち一番尼を崇拝していた青年。天使混血(ネフィリム)と並ぶ悪魔退治の資質、聖別(ナジル)を持つ豪傑だ。 「そっちこそ…?」
2019-08-26 22:38:38どこで寝てやがった、と聞こうとして同僚の表情が妙に虚ろなのに気づく。 「あははー♪」 僧騎士の生首を、ぽいと投げ捨てて、悪魔王子が今度は覗き込んできた。 「目がさめたか?」
2019-08-26 22:40:02「クソ悪魔!!」 「スクセというにー…そちー、そろそろ名前教えてー」 「ぶっ殺す!!!!」 だが腕が動かない。拘束具がはまっている。悪魔を閉じ込めるために昔の人間が作ったしかけ。なぜかネフィリムにも効くらしい。
2019-08-26 22:42:35服はすべて剥かれ、筋肉質の裸身があらわになっている。 ちなみに頭はつるつるだが、脇とか下とかはちゃんと毛があるよ。 「くだらねえ真似がしたいみたいだな」 「ごーもん!ごーもん!余はなーてかげんするからなー。しぬなよー」 「やってみろ!てめえの頭ま叩き潰して…あ?」
2019-08-26 22:45:04機械の関節につながった金の羽がいくつもあらわれて、尼騎士の脇の下だの横腹だの皮膚のうすいところをくすぐり始める。 「…なめてんのか?」 「なめるー」 少年はぺろりと頬を舌でなぞりあげ、暴れる女からさっと退いた。 「んふふー…強度アップー」 羽の動きが激しくなる。 「んだ…てめぇ」
2019-08-26 22:46:53こしょこしょ、こしょこしょ、こしょこしょ。 はじめは馬鹿にしきっていた尼騎士もだんだんとむずむずし始める。 「おい…てめ…」 「んんー?💛」 「…」 「んんー💛くすぐったいか?」 「ちっ」 「くすぐったかろー」
2019-08-26 22:48:03反応を探りながら悪魔王子が調整するにつれ、機械に接ぎ木した天使の羽はさらに巧妙になり、獲物はしだいに身をよじって避けようとする。 「く…んっ…ぁっ…」 しかもくすぐりは単にこそばゆいだけでなく、微妙に快感も刺激してくる。 「ふざっ…」
2019-08-26 22:49:33「ひっく…」 しゃっくりのような音をさせ、坊主頭の女は苦虫をかみつぶした顔になると、必死にイヤホンから流れる曲に意識を集中させた。 「ねばるなー。すごいぞ。そちー。えらい!」 小さな看守は思い切り虜囚の尻朶を叩く。くっきりと痕が残るが、悲鳴などはこぼれない。
2019-08-26 22:51:18「えらい!えらい!えらい!あはは!」 そのままたくましい双臀を交互に叩いて、楽しそうに笑う少年。女は怒りに燃えた眼差しを向けようとするが、すこしでも心が乱れると口から変な音が漏れそうになる。
2019-08-26 22:52:28尼騎士はこらえた。おそらく半日か、いや丸一日こらえたかもしれない。 しかしくすぐりは止まないどころか、ますますこまやかになり、とうとうこわばった面差しは崩れ、ひきつった笑いをこらえきれなくなった。 「ひゃ、ひゃははは!!ひゃはははは!!ひゃめ…ふひゃひゃひゃ!」
2019-08-26 22:55:08「あはは!あはは!そーれこちょこちょー!」 悪魔王子も拷問塔の機械と一緒になって獲物の足の裏をくすぐる。 「この…んひゃひゃひゃひゃっ!あひゃっ」
2019-08-26 22:56:35