[R-18]拷問塔の悪魔王子と尼騎士の物語

映画の「プリースト」見た?見た?
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帽子男 @alkali_acid

可愛いものに思えても、くすぐりはしかしまったく止まなかった。尼騎士が疲れ切ってうつらうつらしても、また慣れた場所とは別の部分をいじってくる。 最後は痙攣し、汗みずくになり、ホーリーメタルもただの雑音にしか思えないほどぐったりして、なお強いられた笑いをこぼす。

2019-08-26 22:59:36
帽子男 @alkali_acid

少しの休息もないまま、三日、四日とくすぐりが続くうち、とうとう、ただ撫でられるだけでしゃっくりのような笑いが出るようになった。同時に達したくても達せないぎりぎりのところで官能の熱がたまっていく。

2019-08-26 23:01:36
帽子男 @alkali_acid

悪魔王子は時折、口移しで水分を与えようとした。尼騎士ははじめ拒み、吐き捨てた。 「しぬとーつまらんぞー」 「…てめえを殺すまで…死ぬか…ひゃはは!ちぃ…あはは」 「なら飲めー」

2019-08-26 23:03:51
帽子男 @alkali_acid

少年は狡猾だった。接吻で水分を与えているあいだはくすぐりを止めるのだ。 女はいまいましげに喉を鳴らして流し込まれる冷たく甘い何かの汁を干しながら、徐々に次の口づけを心待ちにするようになった。

2019-08-26 23:05:57
帽子男 @alkali_acid

だがそれ以外の時ではずっとくすぐりが続いた。 睡眠を断たれて数日すると、さしものネフィリムも朦朧とし始める。天使の部分は耐えられても、人間の部分が保たないのだ。 水分の補給も仇になり、とうとう笑いながら失禁すると、制御できない涙と鼻と涎が落ちる。 「がぁっ…」

2019-08-26 23:09:36
帽子男 @alkali_acid

悪魔王子はくすくす笑いながら、くすぐりを止め、どこからか出してきた清潔な消毒布で全身をふききよめてやる。 「ごろ…して…やる」 「じょーぶ!じょーぶ!」 女丈夫の頭を撫でながら男児はうれしげに褒めてやる。

2019-08-26 23:11:53
帽子男 @alkali_acid

学習とは恐ろしいもので、泣いて漏らすと休息でき、優しく全身を清めてもらえると無意識に刻んでしまうと、くすぐりが始まったとたん、逃れようとして粗相してしまうようになる。

2019-08-26 23:15:53
帽子男 @alkali_acid

イヤホンから流れるホーリーメタルも助けにならない。むしろ逆効果で、今では曲が流れ込むとくすぐりの始まりを予期して体が構える。 心身を極限まで鍛え上げた天使修道会の精鋭にあるまじき醜態だが、しかし男児は女丈夫がぶざまをさらしても嘲るよりは慰め、なだめるようだった。

2019-08-26 23:17:35
帽子男 @alkali_acid

「人間のあかんぼなら、よくあるぞ」 「だれが…」 「余からみれば、そちら人間はみーんなあかんぼぞ」 「くそ…悪魔が…かならず…ふひゃっ!?」 スクセの指がそっと脇をくすぐると、女は裏返った声とともに身をよじり、あちこちを決壊させる。 「ぐう…ぅうう」 「うむ。あかんぼ」

2019-08-26 23:19:25
帽子男 @alkali_acid

十四日目ぐらいだろうか。とうとう完全に錯乱した尼騎士は泣きじゃくり、暴れもがき、だだをこねるようにしてくすぐりをやめろと要求した。 「えーたのしーのに」 「くそ…あくま…くそぉお!!」 「スクセというに。ほーれこちょこちょ」 「んっぐうう!?」

2019-08-26 23:22:12
帽子男 @alkali_acid

失神した天使修道会の精鋭はもはやどんな微妙な羽の動きにも反応しなくなった。しかたなく悪魔王子は拘束具を外して、やや筋肉が落ちた巨躯を軽々と抱えると、やわらかなしとねに運んだ。あたりに散らばる僧騎士の躯を蹴りどかしながら。

2019-08-26 23:25:14
帽子男 @alkali_acid

あとは繰り返しの日々だった。 ホーリーメタルの激しい旋律とともにくすぐりが始まり、あれこれを決壊させると止まり、甘やかしがあってからまた最初に戻る。 そうして過ぎ去ったのは一月。年。いや十年。百年。わずか数日やも。 常に一定の明るさを保つ拷問塔の中では昼夜さえ解らない。

2019-08-26 23:28:28
帽子男 @alkali_acid

悪魔王子は人間とは時間の感覚が違うのか、同じ拷問(あそび)にちっとも飽きないようだった。 尼騎士もだんだんと麻痺してきた。はっきり把握できる変化といえば体の衰弱ぐらいだ。口移しで飲む甘い汁のせいで栄養と水分は足りているが、鍛錬ができず筋肉は落ち、脂肪が増えた。

2019-08-26 23:31:28
帽子男 @alkali_acid

今でも隙をつけば少年を殴り潰すぐらいはできるはずだが、そうしたところで消滅させられる訳ではない。何より殺意を固めるようとすると、機先を制してくすりをしかけてくるのだ。 「ちぃっ…ふひゅっ!?」 「またあかんぼになったか?おんがくをきいておらぬに」

2019-08-26 23:33:20
帽子男 @alkali_acid

悪魔の誘惑を阻むためのイヤホンと楽曲は今や完全に敵の武器に堕した。 耳になじみのホーリーメタルをそそがれるだけでくすぐりを連想してしまい、ぶざまをさらす。 「ほれほれ」 爆音を鳴らしながら、イヤホンを左右の耳に近づけるだけで、尼騎士は脂汗をかき、身をよじる。 「てめえ…」

2019-08-26 23:35:11
帽子男 @alkali_acid

耳孔に入ると、何もしていなくても決壊が始まる。 しばらくイヤホンをつけたままにすると、それだけでもがき、ひきつった笑いをこぼし、拘束具にぶらさがったままぐったりとうなだれ、小刻みに痙攣する。 「すごーい」 「ぁ…はずせ…」 「そちのすきなおんがくぞ?」 「はずせええ!」 「やーだ♪」

2019-08-26 23:37:40
帽子男 @alkali_acid

「そーだ。そちが名前を教えてくれたら、くすぐりはやめてもよい」 「…っ…クソ…あくま…」 「スクセぞー。余が教えたのだから、そちも教えてくれねばふこーへー」 「なにが…こうへ…い…」 「むー」

2019-08-26 23:39:05
帽子男 @alkali_acid

くすぐりは終わった。天使の羽を植え付けた機械はひっこんだ。 今度は悪魔の歯を植え込んだ機械が登場する。 「…なにするつもりだ」 「んふふー。かゆかゆじゃ」 「ああ?」 「かゆかゆー!」

2019-08-26 23:40:35
帽子男 @alkali_acid

悪魔の歯が食い込んだ部分は皮膚の下にむずがゆさが生じる。 「んぐぅううう!!」 「かゆかろー。かゆかろー。名前を教えてくれたらかいてやるぞー」 「ぐ…っ…ぅう!!」

2019-08-26 23:41:47
帽子男 @alkali_acid

悪魔の歯は天使の羽がさわったところを順に触れていく。 「ぐぁあ!ぐうう」 「かゆ?かゆかゆ」 「るっせえええ!!あああ!!」 「かいてやろーかー」 指をわきわきさせて近づく王子を、尼がにらみつけ首を振って追い払おうとする。伸び始めた髪がかすかに揺れる。

2019-08-26 23:44:06
帽子男 @alkali_acid

けっきょく涙だの洟だの涎だの小水だのがあふれると、かゆみ責めは止まり、また男児が女丈夫をやさしく吹き清めて、よしよしよく我慢したと褒める。 「…よくも…おれの…なかまを…」 「すまぬー。てかげんしたはずがー」 「ころす…ぜったいに…ころ…」

2019-08-26 23:46:38
帽子男 @alkali_acid

神の僕は肌の下に虫が住むような感触に悶えあがき、神の敵の指のひとかきが、脇の下や足の裏、乳房の先端、臍の周り、さらには股のあいだの叢の奥をえぐるたび恍惚にむせんだ。

2019-08-26 23:49:18
帽子男 @alkali_acid

尼騎士が狙い通りの反応をするようになると、悪魔王子は今度はかゆみとくすぐりを交互にしかけるようになった。耳のイヤホンから流れる曲も別にして、あるナンバーがかかったらかゆみを、別のナンバーがかかったらくすぐりを連想するよう刷り込んでゆく。

2019-08-26 23:50:56
帽子男 @alkali_acid

「こちょこちょとーかゆかゆとー…つぎはなにがよいかー?」 「…たたかえ…てめえ…」 「ほむ…よし!」 少年は放り捨ててあった天使修道会の装備をかき集めて、女の前に積み上げる。 「ひさしぶりに戦うぞ!好きに使え」 「…いい…度胸してんじゃねえかクソ悪魔」 「スクセぞー」

2019-08-26 23:53:40
帽子男 @alkali_acid

身を覆う防具の類はあまりなかったが、両手両足を覆う装甲と、フレイルだけは使えた。乳房も尻もむき出しだがかまっていられない。 ひさしぶりに尼騎士の四肢に黄金の火がまといつく。 「…いける…か…」 歯を食いしばって軋ませ、凶暴な笑いを浮かべる。 「おんがくはー?」

2019-08-26 23:55:38