[R-18]拷問塔の悪魔王子と尼騎士の物語

映画の「プリースト」見た?見た?
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帽子男 @alkali_acid

イヤホンをもって尋ねる男児に、女丈夫は食いつかんばかりに吠えた。 「ぶっ殺す!!」 疾風と化して襲い掛かった聖なる兵を、邪なる仔はぎりぎりでかわす。 「がぶっ」 スクセはすれちがいざま尼騎士のうなじを一噛みする。 「ぐうう!」

2019-08-26 23:58:41
帽子男 @alkali_acid

かゆみが伝わって、動きがにぶったところへくすぐり。 「ひはあ?」 「ほら、おんがく」 耳にイヤホンをねじこんでプレーヤーの曲を最大音量で聞かせてやると、尼騎士は崩れ落ちた。あちこちを決壊させながら。 童児は初戦が嘘のようにたやすく女丈夫を攻略してのけた。

2019-08-27 00:01:05
帽子男 @alkali_acid

かゆかゆもこちょこちょもすっかりやりつくすと、今度は王子はあつあつとひえひえを持ち出してきた。 「こっちのミントのやつはひえひえ。でこっちのトウガラシのやつはあつあつ」 青い液体と赤い液体を指さして説明する。 「両方一度につかう」 「くそがっ」 「じっけん!」 「自分で使ってろ!」

2019-08-27 00:04:05
帽子男 @alkali_acid

ミントもトウガラシも、外の砂漠にはもはや育たないが、どうしてか拷問塔には作り出すしかけがあるらしい。あるいは似て非なるものか。 ちなみに同時に色々なところから入れてみたところ、七転八倒し、さらにこちょこちょとかゆかゆで余計おかしくなった。

2019-08-27 00:06:19
帽子男 @alkali_acid

がくがくと痙攣する長躯を隅々まで拭き清めてから、悪魔王子は尼騎士を抱き寄せ、イヤホンを外した耳元でささやく。 「そちー。すごーくすごーくじょうぶぞ。余は感心した」 「が…う」 「でももーそんなにがんばらなくてもよいぞ。名前を教えてくれたらな」 「俺は…負け…」

2019-08-27 00:09:43
帽子男 @alkali_acid

「いままで余があそんできた人間とか天使の中で一番がんばったぞ。えらいえらい」 「…負け…ねえ…ぶっ殺」 「もういいぞ」

2019-08-27 00:10:45
帽子男 @alkali_acid

どうやらこれが新しい拷問らしかった。 悪魔王子はいつもの責め苦のあとにとろけるほど甘い言葉を注ぎ込み、尼騎士のけなげさ、かわいらしさ、可憐さを讃え、撫でさすり、口づけの雨をふらせ、倍ほども大きな体を抱いて子守歌をつぶやきつつゆする。

2019-08-27 00:12:42
帽子男 @alkali_acid

「がんばりやさん。そちは地上で一番のがんばりやさん」 「る…せえ」 「ほら、みんなもそういっておるぞ」 すっかり白骨化した僧騎士の頭蓋を振って見せながら、きゃっきゃと少年ははしゃぐ。女はうなるが、絞め殺そうとしてもただきつく抱きしめるかたちになるだけ。 「おー。やわらかい」

2019-08-27 00:15:16
帽子男 @alkali_acid

「御子を抱く聖母のむねのよー。うむうむ」 「…てめぇ…いいかげん…死ね…んっ…」 かすかにくすぐるような指の動きに、たちまち尼騎士はひるむ。 悪魔王子はくすっと笑って首を振る。 「今はあまあまゆえ、いじめたりせぬー」

2019-08-27 00:16:46
帽子男 @alkali_acid

「でも、そちがたたかいたいなら、またしてもよいぞー?」 「…せいぜい油断してろクソ悪魔」

2019-08-27 00:17:38
帽子男 @alkali_acid

「んふふー」 段々と悪魔王子は拷問のうちかゆかゆやこちょこちょやあつあつやひえひえやびりびりやねちょねちょを減らして、あまあまの比重を増やし始めた。 尼騎士はすこしでも休息を得て体力を養える機会と己に言い聞かせつつ受け入れる。 「ちゅっちゅ…そち。やわらかくなった」

2019-08-27 00:20:27
帽子男 @alkali_acid

男児は女丈夫の尻だの胸だのを揉んでは接吻を重ねながら指摘する。 「かわいい」 「殺す…」 虜囚は口ではそう応じながらも、まだ看守に戦いを挑もうとはしない。拙速が無駄なのは身に染みていた。

2019-08-27 00:22:49
帽子男 @alkali_acid

少年はおとめのすっかり伸びた髪をていねいに櫛で梳き、三つ編みにしてやる。肌に透けるフリルだらけのベビードールを着せ、天蓋つきのシルクのベッドに寝せ、ぬいぐるみで周囲を埋め尽くす。壁紙はユニコーンカラー。 「…この塔は…どうなってやがる」 「ごーもんごーもん」

2019-08-27 00:25:39
帽子男 @alkali_acid

「確かに…脳が腐りそうだ…」 食事にふわふわのお菓子をもらい、花を浮かべた風呂に入れてもらい、ちょっぴりせのびしたお化粧も許してもらい、おそろしく短いワンピースも着せてもらえる。 「てめえ…まじで…」

2019-08-27 00:28:11
帽子男 @alkali_acid

悪魔王子が上等の家具調度を手入れするように、丁寧に尼騎士の歯を磨き、爪の手入れをし、泡立てたクリームで毛をきれいにそり、さわりのよい肌着をつけさせる。

2019-08-27 00:30:43
帽子男 @alkali_acid

「まじで腐る…脳が…」 百九十センチの巨躯が小さく見えるような特大の縫いぐるみを抱きしめてベッドに埋もれ、遥か昔の時代に人間の女児を楽しませていただろうアニメを視聴しつつ、天使修道会の精鋭はつぶやく。隣に童形の邪悪がもぐりこんで、目を輝かせて番組を鑑賞する。 「ぷりてぃ」

2019-08-27 00:33:14
帽子男 @alkali_acid

「ぷりてぃじゃねえ!!」 「そちは地上で一番かわいい女の子だなー」 「この拷問は最悪だな!?」 「かわいい。余のおよめさんにしたくなってきた」 「ぐあああああ!」 「余とけっこんしよーな」 「やめ…ろおお!!!!」

2019-08-27 00:35:06
帽子男 @alkali_acid

悪魔王子の細腕がベビードールの中にすべりこんでくると、逆にほっとする尼騎士。 「んっ…くすぐりでも…かゆみでも…なんでもやれば…あぅっ…やめ…やさしく…すんな…っ」 「けっこんしよー。そちの名前教えて?」 「クソ悪魔…クソ悪魔がっ…態勢が整ったら…すぐ…んぅう!!?💛」

2019-08-27 00:37:10
帽子男 @alkali_acid

「いいか…俺は…天使修道会の尼僧だ…神と結婚したんだ!一生だ…てめぇらクソ悪魔を滅ぼすために…っ…そこ…やめ…」 「わかれればよいぞ?」 「神とわかれる選択肢はねえんだよ!!」 「あるぞー。悪魔と結婚すれば」 「しねえ!だいたいてめえも人間と結婚するつもりもねえだろうが!」

2019-08-27 00:40:39
帽子男 @alkali_acid

「するー」 「くそみてえな拷問だな!!!」 好きなだけ眠り、好きなだけ食べ、責め苦を伴わないあまあまの拷問だけがずっと続き、尼騎士の失った体力は徐々に回復した。 「…もう一度だ…もう一度戦え」 「よいぞ!むふふ楽しいな!そちであそぶのは!」 「そうかい」

2019-08-27 00:43:14
帽子男 @alkali_acid

拷問塔の入口で、三つ編みにベビードール。身の丈より大きなぬいぐるみを抱えた巨女が、矮躯の男児と向き合う。 「おんがくはー?」 挑発するようにイヤホンを差し出す悪魔王子に尼騎士はかぶりを振る。 「いらねえ」 「では始めるか?ゆくぞ?ゆくぞ?」 「こっちから…いってやるよ!」

2019-08-27 00:45:11
帽子男 @alkali_acid

ぬいぐるみの腹をやぶって天使の羽の矢が飛び出し、少年を縫い留める。 「ぎ!?」 「らあああ!!」 さらに中綿から聖遺物の剣を抜きはらい、ナジル人に伝わる体術を織り交ぜて、ネフィリムは挑みかかる。

2019-08-27 00:46:42
帽子男 @alkali_acid

死んだ三人の僧騎士の装備と手法を引き継ぎ、すべてを一度に駆使して尼騎士は悪魔王子に必殺の絶技を送る。以前にも倍増して眩く熱い黄金の気炎をまといつかせながら。天使混血の力を増幅するパワードスーツを失った今の己に振り絞れるすべてを込めた捨て身の攻撃だった。

2019-08-27 00:50:07
帽子男 @alkali_acid

「すごーい!すごい!!かっこいいな!!!!」 刃が胸を裂き、拳が額を砕く。 スクセの人間ならぬ存在としての核がひび入り、揺らぐ。 「審判の日に…熾天使と戦ったとき…のよう…だ…」 「るぁああああああ!!!!!!」 「人間が…ここまで…強く…なるとは…」 「ああああああああああ!!」

2019-08-27 00:53:08
帽子男 @alkali_acid

悪魔王子は徐々に輪郭をばらけさせながら、ほっそりとした腕を差し伸べる。 「やはり、そちー。余とけっこんしよーな」 「…クソ!!悪魔!!!!!!」 山吹に煌めく灼熱の螺旋がぬいぐるみを燃やし尽くし、わずかに遅れて一刀両断の一閃が少年の頭のてっぺんから爪先までを裂いた。

2019-08-27 00:55:51
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