ほっとくと暴れる引きこもり息子のために毎日たまったものを処理してあげる母親とかいいよね

帽子男 @alkali_acid

はーほっとくと暴れる引きこもり息子のために毎日たまったものを処理してあげてる母親とかいいよね。

帽子男 @alkali_acid

母親は元スーパーヒロインとかがいいな。 今は引退して専業主婦。育ての親である老夫婦が残した財産があるので食べるには困らない。だから息子のために全時間を費やせる。

帽子男 @alkali_acid

ぴちぴちつやつやですごく若く見える。もちろんナイスバディ。 でも息子はさあ。 「家にいんな！」 「あっちいけ！！」 「じゃまなんだよ！」 と扉ごしに怒鳴り散らし、めちゃくちゃ遠ざけようとする。 DV引きこもり最低だな。

帽子男 @alkali_acid

医者に見せようとしても医者がが死にかかかるから無理。 遠隔治療も暴れて機械を壊すのでだめ。 病院になんて連れていけない。 そもそも、精神病とかじゃないから。 診断したとしても正常というかよく解らん。 ただ暴れるだけ。ほんと最低だな。

帽子男 @alkali_acid

でも母親は毎朝朝食の用意をして持っていくんだよね。 けなげだな。 ちなスーパーヒロイン時代のコスチューム。 ほかの服だと息子がびりびりに破るから。

帽子男 @alkali_acid

「ヨウちゃん。朝ごはんできたよ」 「はいってくんな！」 「ここに置いとく？」 「いらない！」 「ご飯食べないと病気になるよ」 「いいよ！」 「だめだよ」 「いいよ！そのまま死ぬから！」 めんどくさいなーこの引きこもり。

帽子男 @alkali_acid

「だめだよ」 「いいよ！死んだら母ちゃんもおれの面倒みなくてすむだろ」 ひがんでるひがんでる。 「だめだよ。そんなの」 しかたなくスーパーヒロインのコスチュームで母親は、えーと名前はリオさんとしておこう、リオさんは両開き扉二枚ととおろし戸二枚をゆっくり開けて部屋に入る。

帽子男 @alkali_acid

室内には裸の息子が丸くなっている。 壁、床、天井があるだけでほかは何もない。 いや虐待じゃないよ。あると暴れて壊すから。 息子も要らないと言ってるし。 母親だって本当は普通の暮らしがさせてあげたいけど、引きこもりはめんどくさいから。

帽子男 @alkali_acid

「くんな！あっちいけ」 あわてふためいて息子、ヨウちゃんは叫ぶ。 「私はへいきだから」 「うっさい！くんな！くんなあ！！」 リオさんの髪が逆立ち、肌にぴったりしたコスチュームの周囲に静電気が起きる。 でも母親は恐れず息子に歩み寄って、抱き起こし、もがく体をしっかり押さえてキス。

帽子男 @alkali_acid

稲光みたいなものが親子の周囲を取り巻き、やがてへたへたとヨウちゃんは座り込む。リオさんはちょっと息を弾ませる。 「今日は…ちょっと…多いね」 「うっさい…」 「ごはん食べる？」 「…べる」

帽子男 @alkali_acid

がつがつとスプーンで皿からシリアルを平らげる。 途中でスプーンがねじれて皿はひしゃげ、それぞれがばらばらになって無数の小さな玉になる。 ヨウちゃんが頬を引きつらせるのを、リオさんは頭を撫でて、また首をちょっと傾けてキスをすると、玉は全部床に落ちる。 「歯磨いたら勉強する？」

帽子男 @alkali_acid

「おれいいよ…母ちゃん外いけよ」 「ヨウちゃんのそばにいるよ」 「いなくていいよ！」 「よくないよ」 それからもらったカリキュラムをこなす。 すっかり先生役も板についた。生徒役はむっつりした表情だがおとなしくする。教科書はないので完全に暗記でこなす。算数も理科も国語も社会も。

帽子男 @alkali_acid

また何回かキスをする。 「…なんでこれすんの」 「なんでって？」 「手でちょんってすればいいじゃん」 「これが一番効率いいんだよ」 「恥ずかしーじゃん！」 「恥ずかしくないよ。親子だもん」 「恥ずかしーの！」

帽子男 @alkali_acid

引きこもりはめんどくさい。 「はい今日の分終わり。ヨウちゃんは賢いね。私の百倍ぐらい賢い」 「いみねーし」 「そんなことないよ」 「ねーよ。おれずっとここにいるもん」 「お外、いってみる？」

帽子男 @alkali_acid

息子はあとずさる。 「いかねーし！」 「だいじょうぶだよ。私と一緒なら」 「やだ！」 「怖くないよ」 「やだ！！！！」 「ヨウちゃん…」 母親は諦める。

帽子男 @alkali_acid

「じゃあ体育ね。体育。ほら、かかってきなさい。お母さんが相手してあげる」 「…やんない」 「なんで？」 「やんねー！」 「お、お母さんに負けるのがこわいのかー？」 「ちげーし！」

帽子男 @alkali_acid

息子が立ち上がると、母親の髪が逆立つ。 周囲に静電気がぱちぱち弾ける。 「知らねーかんな！」 ヨウちゃんがとびかかると、衝撃で部屋が揺れる。 リオさんはしっかり受け止める。 「ほらね？」 「…っ。うああああ！！！！」 息子めっちゃ暴れる。母親は拳も蹴も頭突きもすべて受け止める。

帽子男 @alkali_acid

反撃もする。投げ飛ばし、絞め、転がし、抑えつける。 「どうだー！お母さん強いでしょ！」 「ぎぎぎぎ！！」 いきなり母親のナイスバディが宙を舞って天井にぶつかる。何かよく解らん素材が波打って衝撃を逃がすが、室内ははげしく鳴動する。 「お、おいっ！？母ちゃん！？」 「っつー…」

帽子男 @alkali_acid

「ちょっときいたな。ヨウちゃんたまるの速くなってるかも」 「…でてけよ！！！」 急にキレる息子。またしても最低。 母親はにへら笑い。 「平気だって」 「でてけ！でてけ！！そばにいんじゃねーよ！！！」 手も触れないのにリオさんの体は部屋からはじき出される。

帽子男 @alkali_acid

おろし戸と両開きの扉合計四枚が勝手に閉じる。 「もうくんな！」 「ヨウちゃん待って！待って！」 「うるさい！にどとくんな！」

帽子男 @alkali_acid

母親は頭を掻く。 「お母さんのこと、もっと信じてくんないかな…」 でも引きこもりモードが強まると押し入るのは相当大変なのだ。

帽子男 @alkali_acid

とりあえず地下から地上へ出る。 そこはふつうの居間。テレビもあるしソファーもあるし、テーブルもあるし冷蔵庫もあるし、オーディオもあるし、亡くなった育ての両親の写真もある。スーパーヒロイン時代の皆の集合写真も。息子の写真だけがない。カメラもスマホも壊れちゃうから。

帽子男 @alkali_acid

いちおう定期報告をする。 「うちのヨウちゃんは今日も元気です、っと」 適当に。 「お昼ご飯何が良いかな」 無線が入る。 “レッドクイーン、レッドクイーン聞こえるか。こちら協会のジャックだ” 「はいサニタですけど」 “コードネームで呼びかけてるのに本名を明かすな…” 「どうしました？」

帽子男 @alkali_acid

“君のいい加減な報告は目に余る” 「じゃあ報告やめます」 “馬鹿な。我がままも大概にしろ。協会最強戦力であるレッドクイーンが” 「引退したんで」 “だが人類の平和は” 「がんばって」 “…とにかく君は人類の脅威となるスーパーヴィランを監視する自覚をもってほしい”

帽子男 @alkali_acid

「あの。ヨウちゃんはそういうんじゃないんで」 “三年前の事件を忘れたとは言わせないぞ。もし再びあのようなできごとが起きれば” 「私が起こさせないですよ」 “だったらもっと真面目にやりたまえ”