ぱすイカ二次創作⑦

ぱすかる❄ @pascal_syan

サイキョー杯開催まで、あと三週間。チームメンバーが続々とプライベートで絡み出した。良質なチームワークには、良質な人間関係……いや、良質なイカタコ関係が必要不可欠だ。 チームとして、この動きは非常に良いものだ。まずは個々の絆から。そして、全体をまとめあげる。理想的だ。

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さて。優勝候補と謳われるシグルイの元に、三人の強者(うち一人は候補だが)が集ったわけだが…… 実を言うと、チーム名もチームリーダーも、明確に決まってはいないのだ。 チーム申請手続きには必要ないので、問題視はしていなかったのだが……

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端末が震える。自分に直接電話を掛けてくる人物など、そうそういない。だいたいオクトーを通してくるものだが。 「……もしもし？」 「オハヨー、ナノネ！」 「ヨーコか。……今回はちゃんと、確認したんだろうな？」 「モ、モチロンネ。シグルイ、オ話シタイノネ。ダイジョブ？」 「ああ。用件は？」

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「ミーティング、シタイノネ！」 「ミーティング、ねえ……いいじゃないか。そろそろ、全員集まる機会があってもいいな」 「ヤッタ！イイ店、ワタシ、知ッテル。サキ、イツデモイイ。ワタシモ、イツデモイイ。アトハ……」 「俺とオクトーだな」 「ソーナノデス！」

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「スケジュールを調整しておこう。決定までには少し時間をもらうぞ」 「リョーカイデス！」 「それで、ミーティングの内容については考えてあるのか？」 「スゴイ、大事ナコト。スゴイスゴイ大事ヨ。ナイショ、シトク？」 「いや。そこまで大事なことなら、事前に考えをまとめておきたい」

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「ジャア、発表、スルノネ…………………………」 やけに、溜める。なんだか、試験の合格発表を聞かされているような気分だ。 「…………チーム名！」 「っ、……チーム名、か？」 電話の向こうで、ヨーコはニヤリと笑った。 珍しく、シグルイが動揺している。完全に予想外だったようだ。

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「チーム名、大事ヨ。他ノトコ、ミンナ、決メテル。イカしたナマエ、ツケタイ！ダメ？」 「……ふふ。確かにそうだな。チームなど組んだことがないから、全く気がつかなかったな」 「チーム、ハジメテ？」 「ああ。今までは雇われだったからな」

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多額の報酬金をもらい、一時的にチームに所属するフリーランス・スタイル。シグルイとオクトーはそういった形で公式大会に参加してきたのだ。 自分で一からチームを創立するのは、実は初めてなのだ。 意外な事実に、ヨーコは驚愕する。

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「ワオー……」 「チーム名、……考えておこう。では切るぞ」 「ヨロシクネー」 通話を切る。背後にオクトーがいるのは、先ほどから分かっていた。 「心配するな。間違い電話じゃなかったぞ」 「……そのようで」 「聞いていただろう？チーム名を考えたいそうだぞ」 「チーム名、ですか……」

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オクトーは困惑している。無理もない。シグルイでさえ思案しあぐねているのだから。 「申し訳ありません。案が浮かばず……」 「まず、日程を調整しておこうか」 「最短ですと、明後日の16時からとなります」 「おっと……随分、期限が短い宿題になりそうだ」 困ったような笑みを浮かべる。

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「遅らせることもできますが」 「いや。あまり待たせるのも、向こうに失礼だ。明後日だと伝えておけ」 「かしこまりました。後程連絡しておきます」 「……しかし、チーム名か」 シグルイがこれほど困惑した表情をオクトーに見せたのは、初めてだ。

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「ボス……」 「思えば、名付けという経験はあまりしたことがなかった」 確かに、よく考えてみれば、人生において名付けをすることなんて、あんまり無いような気がする……ペットを飼う、子供を作るなどしない限りは。 「ボスは、名前にこだわらない主義ですからね」 「ああ」

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「ヨーコさんやサキさんの案に乗る、という手もありますが」 「そのほうがいいかもな。だが、１つくらいは対案を考えておくのも礼儀というもの……」 ソファーに深く腰掛け、ため息をつく。 「……チーム名……」 いつも決断が早いボスが、こんなに悩むなんて。

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一方、サキはというと。 「……チーム名……っ」 こっちはこっちで、ものすごく苦悩していた。 ウデマエが同じくらいの人同士だったり、ヨーコぐらい仲の良い者同士だったら、どんな名前をつけても良いだろう。 その辺に置いてあったものとか、その時食べたかったものでも、大いに盛り上がるものだ。

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だが、このチームには、シグルイがいる。 あの、シグルイ。 他の誰でもない、あのシグルイが。 半端な名前をつけられないじゃないか……！ だが、「名前がない」というのが、一番半端だ。それだけは何としても避けなければならない。

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ヨーコめ、厄介なことを……と、思いかけてしまう。いやいや、チーム名は大事だ。優勝したとき、チーム名があったほうが、イカしていると思う。 遅かれ早かれ、この問題にぶち当たっていただろう。それなら、早いうちに解決してしまった方がいい。 そういう点では、ヨーコの動きは正解と言えるだろう。

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「やっぱり思いつかないよぉぉぉぉ……！！」 先ほど、オクトーから連絡があった。ミーティングの日が明後日16日に決定したそうだ。明後日……明後日だ。明後日！２回寝ただけで期限が来てしまう！ 「こういうときは……」 こういうときは。 「……瞑想しよう！」 瞑想のしかた、全く分からないけど。

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ヨーコはヨーコで、苦悩していた。いずれ直面する問題なのだから、時間があるうちに片付けた方がいい。それに、一度メンバー全員で集まった方がいいとも思ったし。いい案だとは思ったのだが、 肝心のチーム名が、思いつかない！

ぱすかる❄ @pascal_syan

しかも、予想よりも早く期日が迫ってくると来た。プランがあるようでノープラン。これほどマズいことはない。それに、自分が言い出しっぺだ。気の利いた案のひとつやふたつ、考えておかなければならない。

ぱすかる❄ @pascal_syan

仲良しの友達同士なら、たとえば、「チームたいやき」とかでも、なにそれウケる～いいかもね！となれる。サキとか割とその傾向にある。 だが、チームにはシグルイがいる。 あのシグルイが。 そしてオクトーもいる。 シグルイは寛容だ。ちょっとくらいヘンテコな名前でも受け入れてくれる……かも？

ぱすかる❄ @pascal_syan

問題はオクトーだ。彼の主君への忠誠心はとても高い。変なチーム名をつけようものなら、……どうなるか、分かったものじゃない。 オクトーはあまり怒らせたくない。もちろん、シグルイもだ。いや、シグルイのほうが絶対怖い。うん。 どうしたものか……ヨーコは机に突っ伏した。

ぱすかる❄ @pascal_syan

オクトーもオクトーで、やっぱり苦悩していた。「お前はお前で考えておけ」と、ボスからは言われたが…… 名付けの経験が全くないのは、オクトーも同じだ。その上、ボスが名乗るにふさわしいチーム名でなければならない！ この点については、オクトーが一番頭を抱えていた。

ぱすかる❄ @pascal_syan

ボスはとても寛容な方だ。少しくらい変わった名前でも、「面白いじゃないか」と言って受け入れてしまうだろう。 そこだ、そこが問題だ。その「面白いじゃないか」がどういった方向性で、どんな時に発動するのかが、腹心であるオクトーにすら読めないのだ！

ぱすかる❄ @pascal_syan

それに、……あんなに困った顔のボスは、見たことがない。ここは、右腕である自分が、ボスの分まで働かなければならない場面だ。いつも以上に気合いをいれなければならない。 考えろ。考えろ。考えろ……！ チームメンバー全員が苦悩するという、誰も得をしない地獄絵図が、ここに完成してしまった。

ぱすかる❄ @pascal_syan

そして迎えた当日。いや、「迎えてしまった」と言った方がいいか。 待ち合わせ場所は、この間ヨーコとオクトーが訪れたカフェだ。予約をすれば、2階にある個室を貸し切りにできるのが、なかなか便利だったりする。 ヨーコとサキが、先に到着した。個室へ案内される。