ぱすイカ二次創作⑭

ぱすかる❄ @pascal_syan

『それでは、フライ・オクト・フライのメンバーの皆さんもご紹介しましょう！』 アナウンスが話題を変えようとした、そのとき。 「ハチーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッッッ！！！！！！！！！！！」 爆音が、フィールド上に鳴り響いた！

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音響装置を通した大爆音は、その場にいる全ての人の悲鳴をもかき消した。耳を塞いでも、全く意味がなかった。鼓膜が死んでしまいます！ その災害級の大声の持ち主は、観覧席に突如追加されたライブステージに立っていた。 人気音楽ユニット・テンタクルズのヒメだ！

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『え、ええ～っ……？』 爆音の余韻のなか、アナウンスが困惑する。 『な、なんということでしょう！あの謎のライブステージに、テンタクルズのお二人が立っています！こ、こんなの予定にはなかったはず！いったいなぜ……？』 「決まってんだろ！ダチの応援に来たんだよ！」

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ダチ。友達。誰の友達？そういえばさっき、ハチって言ってなかった？観覧席がざわつく。 「ダチが初めて大会出るって聞いたから、無理やりスケジュール変えて駆けつけてきたんだ！」 『で、ではこのライブステージも？』 「パパに言って作ってもらった！」

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ヒメの「パパ」は、大富豪であるとの噂が絶えない。こんな無茶苦茶をするくらいだ、大富豪でないとおかしいだろう。 「ハチさん、頑張ってください！」 イイダも出てきた。 すごい交遊関係だな、とサキは驚愕した。まあ自分も、王者と同じチームに入ってる庶民ですけど。

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当のハチはというと、困惑したような、それでいて嬉しそうな顔で、テンタクルズたちに向かって手を振っていた。 テンタクルズと友達なら、もっと有名な人でもおかしくないのに。ハチって人も、フライ・オクト・フライというチームも、サキは知らない。驚きの連続である。

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そして、観覧席は……フライ・オクト・フライ一色だ！知名度で言えば、テンタクルズのほうが圧倒的に上だし。そのテンタクルズが応援する謎のチームに注目が向くのは、当然と言ってもいいだろう。 「……私たち、めちゃくちゃアウェイじゃないですか……？」 サキは恐る恐るシグルイに話しかけた。

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「ハチーーーーッ！あんなやつら、ぶっとばせーー！なんならアタシが……」 「せ、センパイ！だめですよ飛び入りは！」 ライブステージから飛び出そうとするヒメを、イイダが必死に止めている。 アイドル的存在に、「あんなやつら」と言われるシグルイたち。こんなこと滅多にないぞ。

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「あんなやつら、か……」 シグルイは呟く。だが、そこに苛つきはない。むしろちょっと、笑っているようにも見える。 「ワタシたち、悪者みたいなのね……」 ヨーコの眉毛がハの字になる。どちらかというと逆の立場……悪者を倒す側が多かったので、ショックを受けているようだ。

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「いいではないか。このような展開には、悪者が必要だ。それもとびっきり、強い『悪』がな」 王者は意にも介さず、むしろ不敵に笑う。 「いつも通り、全力を尽くせ。俺たちで前夜祭を大いに盛り上げてやろう」 シグルイに続き、三人はブキを構える。

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「だが……主役は俺のものだ。全力で奪わせてもらおうか！」 王者の高らかな宣言。未知のチーム一色の観覧席に、畏怖が走る。 「……行くヨ」 ハチの呼び掛けに答えて、彼女のチームメイトも構えた。 『それでは、試合開始です……！』

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バトルミュージックは、当然テンタクルズが歌う。曲名は「フライ・オクト・フライ」、チーム名と同じだ。名曲の名前をつけるぐらいだ、相当な「ダチ」なのだろう。サキは羨ましくなったが……でも、こっちだって、あのシグルイの仲間なんだ。そんなもんなんだ。私だってすごいんだぞぉ！？

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完全に小物臭い心情である。虎の威を借る狐とはこのことだ。でも。 勝てばいいんだ！勝てば！ 小物なら小物らしく、地味～にキツい支援をしてやると、開き直った。 中央の小高い丘を、あっという間に自インクの緑で埋め尽くす。さあ来い！

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対するは、桃色の敵インク。ハチではない。別の人だ！ショートヘアーが愛らしい、可憐そうな少女。手には、L3リールガンD。ホースをぐるぐると巻きつけたボディが特徴の、変わった仕様をもつシューターだ。 1トリガーで弾を3発発射する、三点バーストが特徴だ。

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連射するにはタイミングよくトリガーを引かなければならないが、射撃精度や動きの軽快さなどに優れるブキだ。使いこなす人は、なかなかに厄介。こちらで狙いを引き付けておこうと、サキはあえて姿を晒した。 やれるものならやってみろ。 この無言の挑戦状を、相手の少女は受け取ったようだ。

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三弾撃ちが、サキを狙う。右へ左へかわしながら、サキはその軌跡を塗り返す。シグルイさんの攻撃に比べたら、そよ風みたいなものだ。 「やるね！」 少女はその様を褒め称える。 「私、ナナイ。あなたのお名前は？」 「サキだよ！よろしく……ねっ！」 ナナイの足元に、キューバンボムを張りつける。

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キューバンボムの爆風を避けるために、ナナイが少し下がった。 キューバンボムが炸裂する。丸い塗り跡の上に、敵インクの滴が落ちる。 聞いたことのない射撃音。スプラシューターに似ているが、ちょっと低い。これは……なんだ？ オクタシューターだッ！

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「サンキュー、ハチ！一緒にやろう！」 ナナイとハチがコンビを組んだ。さすがに2対1はまずい！ 「ぬおおおおおーーーーーっ！！！！！」 敵インクに足をとられる。もがきながら、サキは叫んだ。ヒメほどじゃないが、大声なら他のイカより強いぞ！ただし、その声色は、ちょっと情けないけど。

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「スケダチ、なのねッ！」 親友のピンチに駆けつけるヨーコ。ポイズンミストを投げ込んで、ナナイの動きを止めた。そのままスライド射撃で仕留める！ 「ナナイ！」 「ごめぇん……」 やっちゃった、という顔で散っていく。 「サキ、外、おねがい。左、ナニかきてる。気をつけるのね！」 「分かった！」

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外周トラックの左側が、敵インクに染まっている。塗り返しがてら、囮になって引きつけておこう。 敵インクを塗りつぶしていると、敵影がひとつ。あの射撃音と、ブレが全くない射撃精度は……シャープマーカーだ！ ボールドマーカーの元となったブキで、射撃精度と連射力は、全ブキトップクラスだ。

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でも、敵はまだ遠くにいる。サキはカーリングボムピッチャーを発動した。この距離なら、安全に投げられるだろう。カーリングに乗りながら距離を詰めて、運が良ければ仕留められるかも。 「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーっ！！！」 カーリングの嵐が、四方八方から襲いかかる。

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「やると思ったぜ！」 シャープマーカーの使い手は、オールバックがイカしている少年だ。 「こいつを食らいなーっ！」 少年は大きく飛び上がる。シャープマーカーのスペシャル、ジェットパックだ！ 「しまった……！」 この高度、そして、このタイミング。撃ち落とすことはできない！

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カーリングの投擲をやめて、すぐさま回避体勢に入る。食らえば即死だ。覚えたての雷神ステップで、うまく翻弄する。 「やっぱすげーな、サキちゃん！」 少年は上空から叫ぶ。 「さすが、地獄から生き残った、伝説のアルバイターだぜっ！」 「……は？なにそれ……？」

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聞いたことのない称号に眉をひそめる。 「ま、つい最近つけられたっぽいし、知らなくてもしょうがねーよな！」 少年は地に降り立つ。 「オイラも最近まで知らなかった。バイト常連なのに、情けないよなー」 「あーっ！」 サキは、少年の顔に見覚えがあった。割といつも見る顔。常連！

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「ロックくん……だっけ？」 「そう！覚えててくれてサンキューな。大会終わったら、また一緒の船乗ろうな～」 「うんうん、よろしくね～！」 撃ち合いをしながらも、両者の開和は非常に和やかだった。 だが…… 「バトル中の私語は禁止だっ！」 その間に割り込む、桃色の射撃。