10周年のSPコンテンツ!
1
イカゴジラ @pascal_syan
まだまだ、まだ予選は続く。いい加減飽きてくる頃合い……じゃなくて、敗退チームが続出し、実力のある者たちが炙り出されくる頃合いになってきた。 強豪チームたちも、徐々に手応えを感じてきている。油断すれば逆転されかねないラインだ。ここからが、本番といってもいいだろう。
イカゴジラ @pascal_syan
フシチョー・ウィングスに代わる強豪チームは、誰だ。街の若者たちの話題の中心は、それだ。様々チーム名が挙がる中に、チーム・カマトットもひっそりと…… 本当に、ひっそりと話題になっていた。大会前にフシチョー・ウィングスに勝っていたし。
イカゴジラ @pascal_syan
カマトットの姉弟は、今、病院にいた。 今世間を騒がせている謎の体調不良騒ぎに巻き込まれたから、ではない。巻き込まれたには巻き込まれたが、本人たちではなく…… かつての敵が、巻き込まれたようなのだ。
イカゴジラ @pascal_syan
病室のドアが、やや乱暴にノックされる。 「……どうぞ、お入りくださいませ」 弱々しい声が、姉弟を出迎えてくれた。 フシチョーのリーダー・マリコがベッドに横たわっている。少しだけ痩せたように見える。声色と顔色から、調子が悪いことがすぐに分かる。
イカゴジラ @pascal_syan
「調子、どうだい……?」 いつもの威勢はどこへやら。アカネはマリコのことを心底心配していた。久しぶりに見た顔に、ボリュームをかなり抑えて声をかける。 「ぼちぼち、ですわね……」 微笑みが、弱々しい。痛々しくもある。シローは、かける言葉を探すのに必死だった。
イカゴジラ @pascal_syan
「倒れたって聞いて、いてもたってもいられなくってさ……」 「ご心配をおかけして、本当に……申し訳ありませんわ……」 「ほ、本当だよっ!大事だったらどうしようかと思ってたわっ……!」 アカネは、カステラの袋を突きだした。
イカゴジラ @pascal_syan
「こ、これ食って、元気出せよ。あんた、普段から飯食ってねーんだろ?これを機会に、食生活とか見直せよなっ!?」 説教臭さの中に、激励と優しさが隠れていた。姉はこういうところがある。 「ありがとう、ございますわ。早く復帰して、みなさまにも……元気な姿を、見せなければ」
イカゴジラ @pascal_syan
袋を受けとる手の動きが、ひどく弱々しい。力がうまく入らないようだ。体力の衰えが、こんなにはっきりと目に見えるなんて。 そんな中でも、マリコは微笑みを浮かべていた。なんて、強い人なんだろう。シローは、彼女の姿に胸を打たれた。 「カマトットのみなさま、どうか、ご武運を」
イカゴジラ @pascal_syan
「てめえもな。絶対元気になれよ!」 「そ、それじゃ、失礼しました」 手を振って、ドアを閉める。 少し廊下を歩いてから、アカネはため息をついた。 「……あんなに弱ってるなんて、思わなかったよ」 シローは俯く。 今流行りの体調不良は、熱中症じゃないか、なんて囁かれているが……
イカゴジラ @pascal_syan
「ありゃ、どう考えても熱中症じゃねえよ。一体何なんだ?」 「分からないけど……また別の病気なのかな?何にしても、早く元気になってほしいな……」 病院から出る直前、見知った顔とすれ違った。 「あ!」 「おお!」 フシチョーのメンバー3人だ。
イカゴジラ @pascal_syan
「てめえらも見舞いか?」 アカネから切り出す。 「そうだぜ。そういうあんたらは、見舞いの帰りってとこか?」 「まあな。……すげえことになってんな、マリコ」 3人の表情が、曇る。 「……快方に向かっては、いるらしいんだけどなあ」
イカゴジラ @pascal_syan
軽く状況を説明してもらった。 サキモリとの試合後、三時間ほどしてから、突然マリコが倒れたそうだ。手足が痙攣しており、すぐに病院に搬送された。意識を取り戻し、命に別状はなかったが……手足に力が入りにくい状況が続いているんだとか。 原因は、未だに不明とのこと。
イカゴジラ @pascal_syan
「マリコ様、気丈に振る舞ってるけど……見てるの、すごくつらいのです……」 セティアが悲痛な表情で語る。 「だろうな……」 「でも、俺たちは信じてるぜ。マリコ様は強いからな。絶対に復活する!」 元気づけるように、ネイリスが明るい声で言い放つ。
イカゴジラ @pascal_syan
「あたいたちも信じてるよ!」 アカネの声に覇気が戻る。 「ありがとな。サイキョー杯、がんばれよ!カマトット!」 「おうよ!見てろよ、絶対決勝まで行ってやるからな!向かってくるやつ全部ボコボコにするぜぇ!」 明るく別れる。彼らの無念を晴らすためにも、カマトットは勝たねばならない。
イカゴジラ @pascal_syan
フシチョーのマリコは、その性格と慈善活動への積極的な参加のおかげで、多くの人から慕われる人格者だ。彼女が倒れたことを聞き、駆けつける人も、当然多い。彼女が今まで寄付した団体や孤児たちはもちろん、バトルで戦ったことのある人も。 彼女の病室に、また1人、足を運ぶ者がいた。
イカゴジラ @pascal_syan
「失礼します」 「あら、あなたは……オクトーさん。あなたのボスは……」 「スケジュールがなかなか合わず……代わりに、俺が来た次第です」 「あのお方は、お忙しいですからね。あなたも忙しいでしょうに、わざわざ……ありがとう、ございますわ」
イカゴジラ @pascal_syan
オクトーもまた、弱々しく微笑むマリコの姿を見て、胸を痛めていた。 「今日も、たくさんの方が、いらしてくれましたわ……わたくし、とても、幸せ者ですわね」 「お疲れでしょう。無理をせずに、面会を謝絶してもよいのでは……?」 心配からの一言。
イカゴジラ @pascal_syan
「ふふ、だめ、ですわ。せっかく来てくださった方を、悲しませるわけには、いきませんもの……」 「……相変わらず強い方ですね、マリコさん。ボスはあなたのそういう面を、高く評価されています」 「まあ、それは、嬉しいですわね……あのシグルイ様から、認められるのは……」
イカゴジラ @pascal_syan
「ボスも俺も、一日も早く快方に向かうことを、祈っています。……ですが、ご無理はされないよう」 「ええ。ありがとうございますわ」 「それでは、今日はここで」 踵を返そうとすると、 「……あなた方も、気をつけて」 オクトーの背に、マリコの声が。
イカゴジラ @pascal_syan
「聡いあなた方なら、きっとお気づきのはず……あのチームが、裏で動いていることでしょう」 軽く、何度か咳をしてから。 「わたくしの、二の舞にならないよう……どうか……」 「……分かりました。ボスにも伝えておきます」 病室を後にした。
イカゴジラ @pascal_syan
やはり。 やはり、ボスの読み通りか。マリコが倒れた件も、体調不良者が続出しているのも、裏で何かが仕組まれているのかもしれない。 この手の話題で真っ先に疑われるのは、やはりチーム・サキモリだ。確たる証拠を掴めさえすればいいのだが……
イカゴジラ @pascal_syan
考え事をしながら歩けば、やはり注意散漫になる。目の前から来る人影に気づかず、ぶつかってしまった。 「わっ……!?」 「おおっとぉ!?」 「す、すみません、不注意で……」 オクトーは見上げる。 巨大なアフロヘアーが、視界を埋め尽くした。 「……あ、あなたは……」 「トーエイだぜぇ」
イカゴジラ @pascal_syan
フシチョー・ウィングスは、三ヶ月前にメンバーを1人、交代していた。高齢のため、引退したとのこと。代わりに入ってきたのが、今目の前にいるトーエイという男性だ。 特徴的なアフロヘアー。その巨大さと丸さは、思わず二度見してしまう。
イカゴジラ @pascal_syan
「怪我、ないか?」 「いえ、こちらは大丈夫です。あなたは……?」 「アフロのおかげで助かったぜ」 アフロに一切ぶつかってないんですが、それは。 「あなたも、マリコさんのお見舞いに?」 「まあな。帰ろうと思ってたんだけど、トイレにケータイ忘れちゃってさあ、あっちょっと待って」
イカゴジラ @pascal_syan
そばにある男子トイレに素早く駆け込み、素早く戻ってきた。 「うおー、あったあった!助かったあ~」 その表情は、満面の安堵。片手には携帯端末が。 「よかったですね」 「ああ~、ほんとにな。それで……」 トーエイの声色が、切り替わる。
残りを読む(51)

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?

ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする