ぱすイカ二次創作21

一応最終回のつもり 要望があったら短編とか書くつもりなので要望がある方はちゃんと要望出してくれると助かります みんな読んでくれてありがとな!! 書いたもの https://togetter.com/id/pascal_syan 2019/11/24追記:つづきや短編はトゥギャってないけど、#ぱすイカ二次創作 で検索するといろいろ投げてあります!
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ぱすかる❄ @pascal_syan

「どこへなりとも、消えなさい。あなたと私はもう、関係ないでしょう。私が死んだって、どうも思わないくせに……」 「思うこと、ありますよ?」 「……え?」 アヤメは素っ頓狂な声を出す。 「え、普通にぐちゃぐちゃの死体見るの嫌なんすけど。ご迷惑だからやめてもらえません?」

2019-09-25 23:48:32
ぱすかる❄ @pascal_syan

「み、見なければいいでしょう、そんなもの……」 「やだやだ、人が死んだら野次馬したくなりますよ。でもお嬢様がぐちゃぐちゃなのは見たくないです」 「野次馬、しなければいいでしょう……!」 「……あーっもう、めんどくせ!真面目に返すなよ堅物!」

2019-09-25 23:50:34
ぱすかる❄ @pascal_syan

クライスは乱暴にアヤメの胸倉を掴む。思わず小さな悲鳴をあげる。 そのまま、フェンスに彼女の身体を叩きつけた。 「そんなに死にたいなら、望み通りにして差し上げますよ、お嬢様?ぐちゃぐちゃは嫌だから、こうやって……」 両の手で、華奢な首を掴む。 「締め上げてしまいましょうか?ええっ!?」

2019-09-25 23:53:28
ぱすかる❄ @pascal_syan

「う、ぐっ……!?」 息が、できない。 目の前が、チカチカする。 痛い。 苦しい。 嫌だ。 アヤメは、必死にもがいた。両の手で、クライスの手首を掴む。 「やめ……おねが、し…にたく、なっ……ぐっ……!」

2019-09-25 23:55:28
ぱすかる❄ @pascal_syan

「なんてねーっ」 ぱっと力を抜いて、アヤメを解放した。アヤメは地に倒れ伏して、咽る。咳き込む。 「殺すわけないじゃーん。捕まりたくないです〜、ごめんなさいねお嬢様〜?それに、死にたくないって言われちゃったし〜」 参った参った、とでも言いたげだ。

2019-09-25 23:58:41
ぱすかる❄ @pascal_syan

そう。 アヤメにはまだ、早すぎる。お父様しか知らないまま終わらせるには、あまりにも早すぎる。 本人も、無意識ではそれを自覚している。生存本能は、まだ尽きていなかった。 「……わたし、は」 咳き込む肺を抑えつけるように、絞るように声を出す。 「これから、どうしたら、いいの?」

2019-09-26 00:01:34
ぱすかる❄ @pascal_syan

クライスはそれに答えない。 「分からない……生きる意味が、わからないの……意味なんてなしに、どうやって、生きていけばいいの…?」 涸れ果てた涙が、奥底から蘇る。 「教えて……あなたしか、聞ける人が、いないの。他に誰も、いないの……お願い……」

2019-09-26 00:03:57
ぱすかる❄ @pascal_syan

「うーん、そんな目で見られたら、優しくしちゃいますよ。勘弁してください」 やれやれ、といった調子。 「そうですねえ。『償い』とかどうです?お嬢様、お父様の言いつけで、たくさん悪い事しましたもんねえ?悪い事したら、ごめんなさいじゃあ済みませんから」 「償い……」

2019-09-26 00:06:25
ぱすかる❄ @pascal_syan

「そうだなあ、手始めに、怖〜い目に遭ってみましょうよ!」 「……さっき遭ったわ」 「あれじゃ足りませんよ、もっともっと怖いやつでなきゃ。あ、そうだ、こういうのはどうです?」 閃いた、と言いたげに人差し指を挙げる。 「悪い大人に誘拐されちゃうとか!」

2019-09-26 00:09:10
ぱすかる❄ @pascal_syan

呆けるアヤメの、その両手をとる。 「な、な、なに、なにをっ、」 どこからともなく結束バンドを取り出し、慣れた手つきで両手を拘束する。 「や、やめなさい!や……うぐっ!?」 素早く背後に回られる。俊敏な手さばきで、猿轡を噛まされた。 「んーっ…!!んんん…!?」

2019-09-26 00:13:25
ぱすかる❄ @pascal_syan

「騒げば殺しちゃいますよ〜?はい大人しくする〜」 先程の光景を思い出し、思わず身動きを止めてしまう。その隙に、足も拘束された。 クライスは軽快な口笛を吹きながら、アヤメを抱きかかえた。フェンスを軽々と乗り越えて、ビルの谷間……路地裏の室外機や雨樋を辿るように、飛び降りていく。

2019-09-26 00:16:20
ぱすかる❄ @pascal_syan

暗闇を、右へ左へぐねぐね曲がり、……拓けた視界に飛び込んだのは、一台の乗用車。 助手席にアヤメを放り込み、運転席へと回り込む。エンジンをかけて、これまた軽快に車を走らせた。 暗い車内に、街中のネオンサインが差し込む。目が眩む。

2019-09-26 00:19:19
ぱすかる❄ @pascal_syan

少しだけ、コーヒーの香りがする。あんまり好みではないので、思わず顔をしかめそうになった。 十分ほどしてから、クライスの片手がアヤメの口元へと伸びてきた。 猿轡が解けた。 息を、吸って、吐いて、整える。

2019-09-26 00:21:32
ぱすかる❄ @pascal_syan

「……これから、」 息を落ち着かせながら。 「これから、どうするの?」 「さあね〜。別の街にでも行きましょうか。お嬢様も俺も知らないような、うんと遠いところとか。そこから心機一転するの、アリだとおもいますよ?」 「……いいの?」 その問いかけの意味は。

2019-09-26 00:24:57
ぱすかる❄ @pascal_syan

「もしかして、『延命治療』のことです?」 「ええ。…サキモリを抜ければ、受けられなくなるわ。引き返すなら、今のうちよ」 「そのことならご心配なく〜」 ポケットから、小さな何かを取り出した。USBメモリだ。

2019-09-26 00:26:53
ぱすかる❄ @pascal_syan

「どこかの誰かさんが、悪事をバラすためにハッキングしちゃってえ。でもそのおかげで、セキュリティがゆるゆるだったんですよ。その隙に頂いちゃいました。これと、それなりの医療機関があれば、楽勝でしょうねえ」 「……抜け目ないのね」 「大人ですから、ふふっ」

2019-09-26 00:29:06
ぱすかる❄ @pascal_syan

しばらくして、車が止まった。暗闇の中に、建物と、その明かり。広い駐車場に、何台も車が止まっていた。この光景は、見たことがないけど知っている。これは…… 「サービス、エリア……?」 「よくご存知で。箱入りだから知らないと思ってました」 「馬鹿にしないで。常識くらいあるわ」

2019-09-26 00:31:21
ぱすかる❄ @pascal_syan

助手席の扉が開く。手足の拘束が、魔法のように解けた。 「……手慣れているわね」 「誘拐、初めてじゃないんで〜」 「なんですって?」 「お金のためなら何でもする、これも大人ってやつですよ。それよりおトイレ行かなくて大丈夫?」 「う……!」 我慢してたの、バレてた。

2019-09-26 00:33:59
ぱすかる❄ @pascal_syan

恥じらいを誤魔化すように、アヤメは足早に女子トイレへ。 お花を摘んだあと、きょろきょろと辺りを見渡す。 「どこに…?」 「わお、お嬢様はやーい」 向こうから声が。その方向へ歩み寄る。 クライスの両手には、ソフトクリームが握られていた。

2019-09-26 00:36:14
ぱすかる❄ @pascal_syan

「……食べないわ、そんなもの」 「食わず嫌いはよくないですよ?」 無言で、渋々受け取る。 「早く食べないと溶けますよー」 車へ戻りながら、クライスが呼びかける。白い液体が、コーンから一筋流れそうになるのを、舐め取った。

2019-09-26 00:38:24
ぱすかる❄ @pascal_syan

……甘い。冷たい。 あの冷酷そうなアヤメだが、所詮は年頃の女の子。甘いものは、やっぱり、どうしても、食べてしまうのだ。食べざるを得ないのだ。 「世の中広いんですよ〜、もっとおいしいものもあるんですから、食べ歩きしなきゃ損ですよ」

2019-09-26 00:40:59
ぱすかる❄ @pascal_syan

アヤメは何も答えない。 「それじゃ、出発しますか。とりあえず宿から探さないとなぁ」 「……車中泊ではだめなの?」 「駄目です事案です、ちゃんとお部屋取ります」 「もう、事案よ。気にすることはないわ」 「それもそっかー、あははは!」 「変態……」 「ええ〜…?どっちぃ…?」

2019-09-26 00:44:48
ぱすかる❄ @pascal_syan

車が、再び走り出す。 行き先は、誰も知らない。 彼らの行く末も、誰も知らない。 けれど、敗者の末路は、どこか、希望に満ちていた。 暗闇に光る、ひとつの星のように。

2019-09-26 00:46:29
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