ストレイトロード：ルート140（44周目）
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Rista_Bakeya
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Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
先日立ち会ったインタビュー記事の原稿が届いた。藍が記者を気に入ったせいか様々な話を披露していたが、テーマの都合上ほとんどが割愛されていた。「あの海のこととか、すごく食いついてたから使うと思ったのに」残念がる彼女の手元で携帯端末が震えた。載せきれない余話が連載になるとの一報だった。
2019-09-17 18:43:42
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
獄中から来た封筒が、以前利用した宿から転送されてきた。長い手紙のほとんどは藍が巻き込まれた誘拐騒ぎについての弁明だった。勢いでやったことではない、乱暴な行動に見えるが相応の訳柄があったと主張している。「でも何故それを貴女に？」「助けてほしいのよ、魔女でも何でもいいから。断るけど」
2019-09-18 18:41:46
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
テニスコートを囲む観客席はラリー中だけ静まり返る。誰もが試合を追う中、携帯端末を正面に向ける藍を後ろの男が気にしていた。「何してるの」得点が入り歓声が上がると、男が話しかけた。「それ動画？」「通話」「誰と」「病気のママと」藍は豪速球の嘘を返しながら、別の席の人物を撮り続けていた。
2019-09-19 18:50:26
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
地元の人々が作戦を組み、必要な場所へ伝えて準備を整えてもらった。軍と警察への根回しも済んだ。ついに出発の時。貴重な薬の箱を受け取った藍が愛車に乗り込み、私はハンドルを握った。「ほどほどに急いでね。これ割れ物なんだから」命を繋ぐためのリレーに競争相手はいない。だが失敗は許されない。
2019-09-20 18:50:52
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
人通りの途絶えた道から一つ角を曲がると、全く違う町並みが現れた。多くの都市で怪物に破壊された繁華街の景色だ。「まさか被害を免れた場所があったとは」「でも人がいない」よく見ると電飾なのに配線が見当たらない。古い物が残っていたのではなく、近年誰かが一から造り上げたレトロの装飾だった。
2019-09-21 19:12:31
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「研究所の偉い人と会ってくる」眠そうな様子で出て行った藍が、不機嫌剥き出しで戻ってきた。用意していたロールパンを渡すと静かになったが長くは続かない。「ロールモデルって何。わたしを何だと思ってるの」不思議な力を得た子供たちの模範になれと言われたらしい。つまり最近の大暴れへの苦言だ。
2019-09-22 19:25:53
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
二つに折れた摩天楼が墓標のようにそびえる都市を二人で訪れるのは何度目か。地下化が進んだ居住区で、前に共闘した役人と再会した。「あの人、会うたびに名刺もらってる気がする」記憶力の不足を疑う藍に求め、前回の一枚を出させた。肩書きと所在地が違う。トップを目刺し着実に累進しているようだ。
2019-09-23 19:14:14
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、2194。累進。 今回の個人的テーマ投稿はここまで(リクエスト回の後は2101から通常ルール再開)。 現時点でお題枠が2つ余っている。何書こうかな。
2019-09-23 19:14:14
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
廃墟の街を歩いていると声が聞こえてきた。「あれじゃない？」藍が指したのは上方。割れ窓の奥に人がいて、虚空に語りかけている。次第に見えない相手がそこにいるように思えてきた。恐らく彼は役者だ。言葉と身体表現で観客に魔法をかける技術を磨いているのか。「不法侵入ね。居場所ない人なのかも」
2019-09-24 19:40:08
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
姿形も生態も異質なそれは誰にも阻まれず空を進む。通り道となった村は雑草を払うように破壊され、囲いを失った家畜はこぞって逃げ出した。生じた遺失の規模は計り知れない。「人間多すぎ。どっちの方角にも誰かいる」乱雑に拓かれた道の上で藍は空を仰いだ。「高く飛べないなんて、太りすぎなのよ！」
2019-09-25 18:42:09
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
布を織り染色する工程を一通り体験した後、藍は斑模様のハンカチをじっと見ていたが、突然顔を上げた。「思い出した！この色！」青い大きな染みを、同じ色に染まった指先で指す。「見たことあるわけだわ。これ木の実でしょ、裏の山にある」逃げる足音を聞いた。食料を盗む少年との遭遇が頭をよぎった。
2019-09-26 19:09:35
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
宿の客の大部分が寝静まる頃になっても、隣の建物の窓に一つだけ灯りがついていた。藍が少し窓を開けたのは風を送る為か。「こんな時間に仕事してる」書類に埋もれかけた部屋で何かを書き続ける人がいると言う。「残業かもしれません」「昼も夜も寝ないでいつ寝るの？」あまり心配には聞こえなかった。
2019-09-27 18:49:53
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
宿泊の手続きを終えたロビーに戻ると、藍は壁に飾られたレプリカの剣を見つめていた。「あなたもこういうの必要かもね」冗談だろう、と視線で答えると、楽しそうな笑みが返ってきた。「昨日わかりやすい武器持ってる人に絡まれたこと、もう忘れた？」あのとき迫ってきた刀は本物だ。威嚇にもならない。
2019-09-28 20:02:56