思いもよらないの恋

好きになったらあかんの恋の安田と梓先生のスピンオフ長編です
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よつげ @Eight_os

25 「じゃあ、今は楽しないん?」 「楽しいよ?」 自然とそう言ってしまって、ああ、私この仕事楽しいんだ、と気づく。 …というか、今、この瞬間が楽しいのかも。なんて。 「そーなんや… 仕事ない日は何してるん?」 「本屋行ったり、CDショップ行ったり」 #エイトで妄想

2019-10-18 22:02:26
よつげ @Eight_os

26 「本…ってどんなん?」 「んー…だいたいは小説。タイトルとか作者とかで買っちゃうかな あとは料理の本とか」 「へー」 安田くんは大して本には興味が無いのか、「CDは?」と話題を変える。 「クラシック。 JPOPとか最近のやつは配信で聴いちゃうからね」 #エイトで妄想

2019-10-18 22:02:29
よつげ @Eight_os

27 「クラシックはあんまり聞かへんなぁ…JPOPは広く色々?」 「うん」 「そっかぁ」 その後も様々な質問が続いた。 「家どの辺?」 「教えないw」 「犬派?猫派?」 「どっちも好きだけど…猫かなぁ」 「高校の頃部活何やってた?」 「吹奏楽 …今日すごい聞いてくるねw」 #エイトで妄想

2019-10-18 22:02:38
よつげ @Eight_os

28 流石に痺れを切らしてそう言うと 安田くんはぶはっと噴き出して 「やー、ごめんごめんw 梓せんせって分かりづらいから どんな人なんやろって思って」 それはこっちのセリフだよ。 安田くんの方が数倍分かりづらい気がする。 「ほんなら次、梓せんせ、質問してええよ」 #エイトで妄想

2019-10-18 22:02:41
よつげ @Eight_os

29 「へ!?」 いきなり振られて面食らう。 そもそもそんなに他人に興味を持たない人種だから、こういうことを言われると一番困る。 「ほら〜」 「え、えと…」 「ほぉらぁ〜」 「えっと…」 必死に考えあぐねていると キーンコーンカーンコーン… チャイムが鳴った。 #エイトで妄想

2019-10-18 22:02:54
よつげ @Eight_os

30 「あーあ、時間切れ」 安田くんはぴょんっと椅子から立ち上がると 一旦机に腰掛けて 私に顔をぐいっと近づけた。 突然のことに思わず身体を後ろに引く。 当の安田くんは気にする事もなく。 じっと私の目を真っ直ぐ見つめて #エイトで妄想

2019-10-18 22:09:57
よつげ @Eight_os

31 「じゃあ、俺また火曜日来るから、それまでに質問考えとくこと これは安田からの宿題です もっと安田に興味を持ってくださいw」 見透かされたような気がした。 色んなこと聞かれたけど 自分が大して他人と関わらず生きてきたなんてことは言ってなかったはずなのに。 #エイトで妄想

2019-10-18 22:10:36
よつげ @Eight_os

32 安田くんが去ってしまってから 「…質問かぁ」 私はそう呟く。 幸い五時間目は授業がない。 このまま安田くんの宿題を考える時間に充てさせてもらおうか。 そんな馬鹿なことを大真面目に考えてしまった午後一時であった。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/yWD4hzK9Dt

2019-10-18 22:11:18
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よつげ @Eight_os

33 「やほー」 果たして火曜日安田くんは現れた。 「宿題は?」 「やって来ました!」 質問を書いた五線譜帳を見せる。 「書いたん!?わざわざ?ええのにぃw」 う、だ、だって。 言い訳する間もなく安田くんは私の手から五線譜帳を奪い取った。 #エイトで妄想

2019-10-19 20:07:00
よつげ @Eight_os

34 「好きな食べ物、趣味、好きな色…ってなんこれ、小学生のプロフ帳?」 「な、しょ、しょうがないじゃない そんな思いつかないわよ…」 「ふーん、まあええわ」 そう言うと安田くんは机の向かい側に座って、購買の弁当を広げた。 箸でご飯を摘みながら五線譜帳に目を落とす。 #エイトで妄想

2019-10-19 20:07:00
よつげ @Eight_os

35 「えーと、一番、好きな食べ物…カレーとか?基本何でも食べる気がするなぁ。あ、でも納豆嫌い」 答えるんだ。 「…ふふ」 「何笑ってんの」 「や、律儀なんだね」 「俺が出した宿題ですからねー」 はい次、と弁当を食べながらまた目を落とす。 「趣味は先生と同じ音楽」 #エイトで妄想

2019-10-19 20:07:01
よつげ @Eight_os

36 バンド系がほとんどかな、と安田くんは答える。 「好きな色はー…緑とか青とか」 「部活は帰宅部でーすw」 「好きなスポーツ!?んー…あっ、ダイビングとか好きやで」 色々次々に答えていく安田くん。 質問が尽きた。 「他は?」 聞かれて戸惑う。 #エイトで妄想

2019-10-19 20:07:01
よつげ @Eight_os

37 何か忘れているような気はするけど 他に聞きたいことなんて… 「安田くんは、」 「うん」 「……………えーっと」 「無理せんでええでーw」 ダメだなぁ こういう時ぱっと言葉が出てこないんだよね。 あ、でも、一つだけ。 「安田くん」 「はぁい?」 #エイトで妄想

2019-10-19 20:07:02
よつげ @Eight_os

38 私といて、楽しい? 安田くんは あの日何で、ここに来たの? 「…んーん、やっぱり何でもない」 「何やねんそれぇw」 口に出そうとしたその問いは、もう一人の自分が押し込めた。 そんなこと聞いて何になるの、と。 「あーせや、せんせも食べる?これ」 「へ!?」 #エイトで妄想

2019-10-19 20:07:02
よつげ @Eight_os

39 「今日は生姜焼き弁当ですっ」 そう言って生姜焼きを私に差し出す。 ちょっと待って。 その箸で差し出すの、関節キスだって分かってないのかな。 「い、要らないって!ほらその…カロリー高いし!」 「んーそうなん?」 生姜焼きはぱくりと安田くんのお腹の中に収まった。 #エイトで妄想

2019-10-19 20:07:03
よつげ @Eight_os

40 危ない危ない… 「あは、めっちゃ焦った顔してるw」 安田くんは頬杖を突きながらこっちを眺めている。 「…梓せんせって、何かイメージより飽きひんわぁ」 顔を上げるとニコッと微笑む。 そ…か。 楽しい…のかな。 キーンコーンカーンコーン… #エイトで妄想

2019-10-19 20:07:04
よつげ @Eight_os

41 チャイムの音と共に安田くんは立ち上がる。 「ごちそうさま!また来るな〜」 また来るんだ…………。 本当、私の何が楽しいって言うんだろ。 よく分かんないなぁ。 そんな気持ちからふふっと笑ってしまう。 この頃から 毎週火曜日と木曜日は 安田くんと過ごす日になった。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/ZneomhETZ7

2019-10-19 20:07:08
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よつげ @Eight_os

42 ある木曜日だったか。 安田くんに唐突に聞かれた。 「梓せんせ夢とかあるん?」 思わず仕事の手が止まる。 夢…なんて。大人になってしまえば持たないものなのかもしれない。 「考えたことなかった、どうしたの?」 「んー…」 安田くんは箸を一旦置いて #エイトで妄想

2019-10-20 21:03:11
よつげ @Eight_os

43 ちょっとだけ真剣な顔になった。 「進路調査票が配られてん」 ゆーてもまだ、大学進むか就職するかーくらいの軽いやつやけど、と安田くんは言う。 「一応、大学進学にはしておいたけど… 自分が何やりたいとか、そーゆーの特にないねんなぁ なるようになればええかなって」 #エイトで妄想

2019-10-20 21:03:12
よつげ @Eight_os

44 うむ…なるほど。 「んーと…だからって私に聞くのは違うと思うよ? 私は、ほら、もう仕事に就いてるから、夢も進路も考える必要ないし」 「んー…」 安田くんはまだ納得いってない様子。 「………ちなみに、ふ、藤木さんは?」 声が上ずった。 「近所の短大行くって」 #エイトで妄想

2019-10-20 21:03:13
よつげ @Eight_os

45 「へー」 「おーくらの嫁として生きたいから近所がええってゆーてたw」 うっ…実際言葉にして聞いてしまうとダメージ…嫁かぁ…。 安田くんの親友だし、こう、フラットに話題出したかったんだけど、やっぱり吹っ切れてないんだな…。 「せんせ 大学ってそんなええもん?」 #エイトで妄想

2019-10-20 21:03:13
よつげ @Eight_os

46 うーむ。それなら何となく答えられるか。 私はパソコンを一旦閉じて、真正面から安田くんと向き合う。 「『私にとっては』いいものじゃなかったよ」 「…」 「何となく分かると思うけど、私、他人に興味持つっていうのが苦手だから 大学時代はいつも一人だった」 #エイトで妄想

2019-10-20 21:03:14
よつげ @Eight_os

47 ううん。 ほんとは。 周りには沢山人がいた。 話せる、人は。 でも、深く関わったり特別仲良くなったり、四六時中一緒に居たり。 そういう人は居なかった。 「みんなからは一匹狼だって思われてたみたい」 一度大学の同窓会に行った時言われた。 もう同窓会は行きたくない。 #エイトで妄想

2019-10-20 21:03:15
よつげ @Eight_os

48 「…でも私、そういうのしてみたかった 友達と遊びに出かけたりとか、誰かの家にみんなで集まったりとか そういうのしてみたかったんだ」 周りは当たり前のようにしていて。 でも私は、何だかその輪の中に入ってはいけない気がした。 今でもほんとは飲み会が苦手。 #エイトで妄想

2019-10-20 21:03:15
よつげ @Eight_os

49 そこで一旦言葉を止めて 知らぬ間に俯いていた顔を上げる。 「私には大学は向いてなかった だけど、行ったことは後悔してないよ こうして教職にもつけてる訳だし それに、向いてる人は向いてるんだと思う 友達作るのが得意な人には」 そして、私が思うに。 #エイトで妄想

2019-10-20 21:03:16
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