「ドラゴンボールAF」とは何だったのか振り返る

海外で作られたドラゴンボールの続篇?あるいは同人漫画?「ドラゴンボールAF」とは一体何だったのか総括します。
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『AF』という題名の起源

ΝΑΠΠΑ @nappasan

『ドラゴンボールAF』というと今時の若年層のDBファンはToybleこと現・とよたろう氏の描いたあの漫画を指すのだと思っている人が多いのでしょうが、元々は「GTの先の話が日本にあるらしい」という海外ファンの間で'90年代末~2000年代初期に広まったデマの集合体が「AF」です。 twitter.com/nappasan/statu…

2019-10-27 23:24:10
ΝΑΠΠΑ @nappasan

やたら上手いもんだから本物かと思って小学生の頃興奮してた懐かしのフェイク画像: pic.twitter.com/OIeQVqzOkx

2019-10-27 23:20:01
ΝΑΠΠΑ @nappasan

『AF』という題名が最初に表れたのは画像一枚目の当時「超サイヤ人5悟空」と噂された絵で、これの右下に「DRAGON BALL AF」と書かれていたことから、そういう作品があるらしいという都市伝説にまで発展しました。その後は既存キャラを超化したりしたコラ画像やイラストが量産されるようになります。 pic.twitter.com/TDrsozRmtY

2019-10-27 23:32:14
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ΝΑΠΠΑ @nappasan

ただこのイラスト、実は2012年に大元の出処が判明してまして、スペインのゲーム雑誌『ホビー・コンソーラス』'99年3月号に載っていた読者投稿絵だったことが判ってるんですね。作者はダビ・モンティエル・フランコ氏で、超サイヤ人5だとか悟空だとかいったキャプションは紙面には何もありません。 pic.twitter.com/Qfuhf8CpIJ

2019-10-27 23:39:16
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ΝΑΠΠΑ @nappasan

このイラストの作者自身がブログにこの『AF』の元イラストのスキャンを上げていて、実は「AF」とは "Alternative Future" の略だったことも判ります。そしてこのサイヤ人は「タブロス」という名前のオリジナルキャラであり、超5悟空でも何でもないことが明かされています。 af-dragonball.blogspot.com/2012/01/dragon… pic.twitter.com/rpuBE4nP00

2019-10-27 23:48:48
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ΝΑΠΠΑ @nappasan

『AF』は元々フランコ氏が自作していたドラゴンボールのファンフィクションを指すもので、続篇でもなんでもありません。しかしこのイラストの画像に妙な説得力があったが故に、主に英語圏のファンの間で「『AF』という続篇がある」という都市伝説にまで発展してしまいました。

2019-10-27 23:57:23

補足すると、そもそもこの画像が爆発的に広まった背景として、「GTの続きがある」という噂が元々存在したというのも大きいようです。GTの放送が終了した'97年頃から既に続篇の噂が海外ファンの間でまことしやかに囁かれていたという証言があります。

また、「続篇が日本にある」というよりは、「GTの次の作品が(日本で)始まる」といった形で噂が立ち始めたようです。

ラテンアメリカでの事例

JHAL 🍊 🇪🇨🇪🇦🇵🇹🇮🇹 @JHAL920

@nappasan Here in Latin America, Dragon Ball AF was so "credible" that they sold stickers, posters and t-shirts with only fan-arts of the original series. Even pirate DVD sellers offered "AF" but it was just pure trailers and flash animations 😅

2019-10-27 23:53:36

翻訳:こちらラテンアメリカではAFを真に受けるあまり、ファンアートを流用したステッカーやポスター、Tシャツまで売られる始末でした。「AF」の名の付いた海賊版DVDすら出ましたが、内容はただのトレイラー映像やフラッシュアニメに過ぎませんでした。

そして都市伝説は日本へ

ΝΑΠΠΑ @nappasan

結果として『ザイコー篇』だとかいった存在もしない“続篇”のストーリーを書き記した「あらすじ」という名のファンフィクションが出回るようになり、尤もらしさの増したAFの噂は雪だるま式に膨れ上がっていきました。日本にAFの噂が逆輸入されてきたのはこの辺りです。

2019-10-28 00:05:46
ΝΑΠΠΑ @nappasan

まずは先程のようなインチキ画像が出回ったのですが、この際に尾ひれが付いて「海外には『ドラゴンボールAF』という勝手に作られた続篇(or同人作品)があるらしい」という、真逆の内容に変わってしまいました。当時の無邪気な海外蔑視も合わさって「さすが外人は変なもん作るなあ」と受け止められます。 pic.twitter.com/Za6hnMTzJm

2019-10-28 00:15:21
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Toyble氏による漫画版『AF』の登場

ΝΑΠΠΑ @nappasan

元々は「日本にしかない続篇」という噂だったことを考えれば皮肉な話ですね。この後はぼちぼち「あらすじ」の内容を日本語訳し始めるサイトも現れ始め、AFの話題が国内ファンの間でも盛り上がっていきます。2006年になってそこに彗星のごとく現れたのがToyble氏のコミカライズ版AFです。 pic.twitter.com/6I1KLUFME0

2019-10-28 00:20:46
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ΝΑΠΠΑ @nappasan

これがファン制作の漫画としてはとても良く描けていたため、瞬く間に漫画版『ドラゴンボールAF』は人気を博すことになります。Toyble版『AF』は巷に出回ったザイコー篇のストーリーに基づいて作られており、ザイコーのデザインも海外で出回っていたコラ画像を元にしています。 pic.twitter.com/angKS4iLJE

2019-10-28 00:33:45
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ΝΑΠΠΑ @nappasan

そしてこのToyble版漫画で先述の「タブロス」のビジュアルが悟空の服装として使われたことで、超サイヤ人5悟空のイメージが決定的なものになります。大元の作者の思惑とは全く無関係に。 pic.twitter.com/yjTtwSoL1Q

2019-10-28 00:41:53
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公式側に波及するAFの影響

ΝΑΠΠΑ @nappasan

『ドラゴンボールZ Sparking!』シリーズにおける超サイヤ人4ゴジータの別カラーは、この「超5」のビジュアルを意識したものであるとも言われています。他のキャラクターのものと比べて明らかに異様な配色でしたから。 pic.twitter.com/X9unH7l9aH

2019-10-28 00:52:44
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ΝΑΠΠΑ @nappasan

なお、この頃に公式側がAFに言及して存在を否定する記事があったと記憶しているのですが思い出せません。どなたかご存知でしょうか。

2019-10-28 01:04:31
ΝΑΠΠΑ @nappasan

そしてToyble氏はゲーム『ドラゴンボールヒーローズ』の漫画を集英社に持ち込んだことを切っ掛けに、漫画家「とよたろう」として2012年にプロデビューすることになります。今では皆さん御存知のとおり、シリーズの新作『ドラゴンボール超』の漫画版の作画を行うまでに至っています。 pic.twitter.com/bQ5qjY5uAX

2019-10-28 01:15:30
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なお、現在最強ジャンプにて『ドラゴンボールSD』を連載中のオオイシナホ氏も、元々はドラゴンボールの同人誌を出していた同人作家でした。

総括

ΝΑΠΠΑ @nappasan

かくして一人のスペイン人による読者投稿イラストから始まったドラゴンボールの続篇の都市伝説は世界中を駆け巡り、それに触発された漫画家が本物の続篇を描くことになったわけです。考えようによっては「嘘から出た真」と言えるでしょう。実に面白い現象だと思いませんか。 pic.twitter.com/1ur4fPi83s

2019-10-28 01:22:22
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