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【文法短編】第一話 ドイツ語の時制について

皆さま、英語には親しんでいる期間が長いかと思われますが、その基準を持ってドイツ語学習に臨まれるとびっくりすることもままあります。今回はそんなお話を創作してみました。
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ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

シーンはカフェに戻る。 ミツ「へえ、じゃあ『経験』の用法は?」 独語独文「『何回その動作をしたことがあるか』を『数詞 + Mal』で表現します。これは名詞として回数を表しますが、副詞として使う場合は『数詞 -mal』です。次の文は新約聖書からの引用ですが・・・」 ミツ「ええと、 どれどれ」

2019-11-06 12:23:10
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

ミツ「長い文章ね。 „Und der Hahn krähte zum andernmal. Da gedachte Petrus an das Wort, das Jesus zu ihm sagte: Ehe der Hahn zweimal kräht, wirst du mich dreimal verleugnen. Und er hob an, zu weinen.(Markus 14:72)“」

2019-11-06 12:23:10
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

独語独文「『するとすぐ、にわとりが二度目に鳴いた。ペテロは、「にわとりが二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、そして思いかえして泣きつづけた。(マルコによる福音書 第14章72節)』」

2019-11-06 12:23:10
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

独語独文「zum -mal で「n回目に」になりますが、状況は zum andernmal 「もう一度」、回想のイエスの言葉では zweimal 「二回」になっています。そしてニワトリが泣いたのは krähte と過去形、回想の中のイエスの言葉は „wirst du mich dreimal verleugnen“と未来形になっています」

2019-11-06 12:23:11
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

ミツ「つまり、英語に比べて『経験』をいう時の時制がそうハッキリとしない?」 独語独文「あくまで英語と比較した場合はそうでしょうね。もうあったことは、過去の出来事として考えるのです。未来に起こることは回数を未来形で言えばいいだけです」 ミツ「そうなんだ」

2019-11-06 12:31:11
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

ミツ「じゃあ、最後に『完了』の用法は?」 独語独文「過去にあったことなので、過去形に完了を表す副詞を添えます。 „Ich habe das grade gemacht.“ (『ちょうど今それをやり終えたところだよ』)とかですね」 ミツ「わかった。なんでも英語を基準にしてヨーロッパの言葉を考えちゃいけないのね」

2019-11-06 12:44:04
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

独語独文「その通りですよ。言語にはそれぞれ特徴がありますから」 ミツ「説明ありがとう。自分でも少し勉強してみるね」 独語独文「お役に立てたなら光栄です」 ミツ「ところでディーくん。このあと少し時間ある?」 独語独文「はあ。中の人が留守ですし、時間はありますが」

2019-11-06 12:44:04
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

ミツ「少しお出かけしない?」 独語独文「いいですよ。こんな日は散歩日和ですから」 ミツ「ディーくんはいつもその調子ね」 独語独文「ええ、なんですって?」 ミツ「なんでもない」

2019-11-06 12:44:04
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

夕方。 独語独文「ただいま戻りました」 中の人「おお、帰ってきたか。どこ行ってたんだ? 今日は鍋だぞ」 独語独文「町内会はいかがでしたか」 中の人「フッ。真の天才とはいつの時代にあっても孤高なものなのだ」 独語独文「いつも通りだったと。あまり皆さんにご迷惑をかけないでくださいよ」

2019-11-06 12:49:46
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

中の人「迷惑とはなんだ、俺はみんなのためを思って研究成果をだな・・・なんだお前、今日はやけに嬉しそうだな? 何かあったのか?」 独語独文「何もありませんよ。さて、料理を手伝いますね」 了

2019-11-06 12:49:46
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

今回のキャストを書いておきます。 独語独文:中の人によって創り出された語学たん。ゲルマニスととして生きるのが夢 ミツ:本名・月流 満(つきながれ みつ)。ドイツ語を勉強している大学生。独語独文のことを「ディーくん」と呼ぶ。彼が通っているカフェの常連。

2019-11-06 00:31:16
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

中の人:永遠の中二病患者。妄想を具現化する力により独語独文を作り上げた。 町内会長:町内会長。中の人のために苦労させられている。

2019-11-06 00:31:17
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan

ちょっと対応しなければならないことができて筆を置くために中の人に出てきてもらったが、「昼下がり」に出かけて「お昼休み突入」とはこれいかに? 時空が歪んだか?

2019-11-05 22:39:47