書評: 澤田次郎著『徳富蘇峰とアメリカ』

拓殖大学、2011年3月刊の書評。
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SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

澤田次郎『徳富蘇峰とアメリカ』(拓殖大学、2011年3月)。マハン、シーパワー、プロパガンダなどキーワード。徳富蘇峰の生涯を通じたアメリカについての言説の変遷。旧蔵書=洋書に残る書き込みから蘇峰がどう読んだかを。マハン『アジアの諸問題』へ蘇峰の赤鉛筆での書き込みの分析が圧巻。

2011-04-04 18:24:25
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

国民国家を成り立たせ、変遷絶え間ない国際情勢に対処するため、外国からの思想浸透に対抗し、国民思想・道徳の涵養を図る。言論人としての責務は、時事報道/評論・歴史叙述を通じた国民の思想をコントロールすることであると思い定めた人物。澤田次郎さんの新著からはそうした徳富蘇峰像が見える。

2011-04-04 19:01:01
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

澤田次郎著『徳富蘇峰とアメリカ』についてはつぎのように短評した。http://bit.ly/i1blSX http://bit.ly/gjeHFc @KEIOUP 徳富蘇峰とは、明治・大正・昭和の三代を通じて活躍したジャーナリスト、歴史家 http://bit.ly/hmSSYI

2011-04-15 13:35:00
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「生涯を通じてアメリカと心理的に格闘した蘇峰の体験は、現在のアメリカと日本の関係はもちろんのこと、アメリカと中国、あるいはアメリカとイスラム世界の関係を考える上でも、比較の素材をもたらしてくれるのではないか」、澤田次郎著『徳富蘇峰とアメリカ』拓殖大学、2011年3月、本文末尾。

2011-04-26 15:33:32
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「大蔵省鉄道局長、運輸相、蔵相としてロシアの極東政策に大きな影響力をもち、シベリア鉄道の推進者であったセルゲイ・Y・ウィッテは、アルフレッド・T・マハンの『海上権力史論』に呼応するかのように鉄道の力を信じ、陸路の支配による世界的栄光を求めた」(澤田『徳富蘇峰とアメリカ』135頁)

2011-04-26 15:37:00
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

『アジアの問題』は「蘇峰にランドパワーとシーパワーの対立にもとづく地政学的概念を明確に認識させた上で、ロシアに対抗するための日本とイギリス、アメリカ、およびドイツの提携の可能性を示すことによって、結果的に蘇峰の日英米同盟論をアメリカ人の側から、裏付ける形となった」澤田259頁

2011-04-26 15:44:19
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「マハンからすればロシアという敵の、さらに敵である日本は味方となる。これはアメリカとの海上権力競争を予感しながらも、日英米同盟を説く蘇峰と好一対である。マハンも蘇峰もロシアの膨脹を抑止するため、お互いに日米共同を望み、相手国に対して好もしい文言を用いた」澤田262~263頁

2011-04-26 15:52:43
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「マハンも蘇峰もロシアの膨脹を抑止するため、お互いに日米共同を望み、相手国に対して好もしい文言を用いたが、裏面においては黄禍論者(マハン)、反黄禍論者(蘇峰)として相手国に潜在的脅威、不安を感じていたのである。」澤田263頁

2011-04-26 15:53:17
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「『アジアの問題』読了後の蘇峰は、アメリカをライバル視する見方をさらに進めるようになる。その際、彼が触れたのは、これまでくり返し述べてきた海運、または海底ケーブルのような通商、通信ネットワークに関するアメリカの商業的攻勢であった」澤田263頁

2011-04-26 15:59:15
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

蘇峰は「サンフランシスコ・ハワイ間の電線がフィリピンまで達するのは遠くない、わが国も太平洋横断の電線に多少の権利を保つ必要があり、費用を投じて米国線に接続をもとめるべきだとして、アメリカに取った遅れを少しでも埋め合わせるよう訴えている」澤田264頁

2011-04-26 16:01:23
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

「日露戦争を経て後年、蘇峰は日本、東アジアに対するアメリカの経済的脅威、圧迫をくり返し訴え、日米戦争に至るまでそれを避難し続け、開戦後はその圧迫こそが日本を対米戦争に追い込んだ主因であると力説するようになるが、そうした主張の原点は本章が対象とする日露戦争前の明治三十年代にあった」

2011-04-26 16:06:53
SHIBASAKI Rikiei|柴崎力栄 @rshibasaki

澤田次郎さんの近著『徳富蘇峰とアメリカ』は、アメリカをどのように認識しどのように対処したのかを、公開の言説だけでなく、蔵書への書き込みを素材として公言しなかった認識の在り方を探ろうとしている。視角の設定で対象外となったイギリス観、ランドパワーへの接近なども問題の所在を意識している

2011-04-26 16:10:39