よしざわひでおさんによる「AC3クロニクル」

よしざわひでお @yoshi_clonoa

打合せの場に、ふらっとやってきた石川光久社長は意外なことを仰ったのです。 pic.twitter.com/3iqSnHJEhh

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「みなさん、開発の人？」 「あ、そうです。全員開発のメンバーです」 「ふぅ～～ん、やっぱりさ、開発の人って『ミツバチのささやき』とかって観るの？」 「えっ？　あ、あぁ、観ますね、あれはよかったですねー」

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『ミツバチのささやき』というのは、ビクトル・エリセの映画の事です。 「ふぅ～～ん、そうなんだぁ～。じゃ、よろしく」 と言って石川さんは出て行ってしまったのでした。

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するとプロデューサーの寺川さんが 「それじゃ、詳しい作業内容をお伺いして、見積り出しますね」 というのです。

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わたしは驚いて 「受けていただけるんですか？」 と聞くと、寺川さんは微笑みながら、 「社長もOKみたいなんで」と言うのです。

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それからはトントン拍子に話が進み、機体のデザインからムービーまで担当してもらえる事になりました。 つづく

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プロダクションIGに引き受けてもらえることになったことに気を良くして、プロジェクトスタッフの夢は広がります。 pic.twitter.com/oPF48WUcsU

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シナリオをフロッグネーションの佐藤大さんにお願いしたいというのです。 佐藤大さんというのは秋元康さんの下で構成作家などを経た後、ゲームに傾倒、田尻智さんのゲームフリークに所属し、ゲーム評論の執筆などをしている脚本家の方でした。

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脚本家としては『カウボーイビバップ』、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』、『交響詩篇エウレカセブン』、『FREEDOM』（カップヌードルのCFのアニメ）などで活躍されています。最近では『ドラえもん』の脚本も手掛けられていますね。

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彼と会っていろいろな話をしている内に、電脳世界の話になって、すごい盛り上がりました。その中で一番面白かったのは当時日本テレビでやっていた「進め！電波少年」のコーナーの懸賞生活の話でした。

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懸賞生活というのは、タレントのなすびがアパートの一室に閉じこもって、ひたすら懸賞に応募するハガキを書きまくって、それで当選したものだけで生活するという企画でした。

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この懸賞生活は究極の未来かもしれない、一歩も外に出ないで文化的な生活が成り立ってしまうって話で意気投合したのです。今ではアマゾンをポチるだけで生活が成り立ってしまうので、すでに実現しているとも言えますね。

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その後、これが元になってか、エースコンバットでありながら未来の話で、すべて情報端末を通じたコミュニケーションで成り立っている世界を描くという、すごくぶっ飛んだものになりました。 つづく

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脚本に佐藤大さんが参加してくださることになりました。 pic.twitter.com/RKN0gp6dEN

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私はシリーズ作品でやるからこそ、今までにはない要素が必要だと思っていたので、佐藤さんのセンスがエースコンバットシリーズに注入されることに非常にワクワクしていました。

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すると佐藤大さんからある提案が来たのです。 それはスタッフの人達と温泉に泊まり込んで合宿をやりたいというのです。

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当時ナムコでは外部の方と温泉に寝泊まりして仕事をするなんていう前例がなかったので、会社側に認めてもらうのに結構苦労しましたが何とか認めてもらいました。

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１日目はただ一緒に生活して温泉入って飯食って、互いの事が身近になった所で遠慮なく話ができるようになる、というのがこの温泉合宿の趣旨なのです。

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結局残念ながら私は行かれなかったのですが、２度に渡る温泉合宿を行なってついにシナリオが完成しました。

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でも完成したシナリオを読んで、私は鳥肌が立ったんです。特にラスト。 とっても好みの話でした。クロノアにも通じるものがあって。 発売してみると賛否両論でしたけど、ね。 つづく

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佐藤大さんとのコラボでストーリー部分のシナリオが完成しました。 pic.twitter.com/6PyDLOC9Hl

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佐藤さんのシナリオに対してプロダクションＩＧから絵コンテが上がって来ました。 でも当初予定していたより、量的に多くなってしまっていて、予算オーバーが懸念されました。

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そこで、もう少し削ってもらうように話をしたのです。 そして第２稿の絵コンテが上がってきたのですが、なんと前回よりさらに増えているんです！

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びっくりしてプロダクションＩＧの寺川さんに電話すると、 「スタッフが乗ってしまって、やりたがっているんで、これでお願いできませんか？」 と反対にお願いされてしまいました。

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しかし、予算もあるのでその旨伝えると 「予算でしたら、最初の見積り通りで結構ですから」 と言うのです。