エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~6世代目・その1~
- alkali_acid
- 13149
- 8
- 2
- 0
「またツルギの好きなだけ注いでやる。胎の仔に障ねばな」 「…う…む…だが…オオタテの体こそ障りはないのか。これほど僕のために…」 「少しも。お前を抱けば抱くほど徳は高まる一方だ。天はこの契りを尊いものと、見そなわしている」 「そうか。もう僕はどうあがいても勝てないな…」
2019-11-24 23:07:19すっかり、なよやかになった己の腕を眺めてから、やや寂しげにツルギは目を伏せる。 「もう剣をとらなくなってだいぶ経つ…いや竜頭将だった頃の僕でも…きっと今のオオタテには勝てないな」 「ツルギはずっと朕のそばにいればよい。戦には出さぬ。不満か?」 「少しな」 「出さぬぞ」 「解っている」
2019-11-24 23:12:40清めた体を同じ湯船に沈め、竜人は天人の胸に背を預けて、けだるげな接吻と愛撫を交わしながら、ささやくような言葉を交わす。 「オオタテの徳が低まらずにいるなら…今の天子はどうなのだ」 「あの娘は徳なしで国を治めている」 「危うくはないか」 「いざとなれば朕が助けてもよい」
2019-11-24 23:15:42「…そうか…ならばいいが」 「あるいはもし、あの娘が天子にふさわしくなければ、朕が再び天命を革(あらた)めるまで」 「そうならない方がいい。いずれ竜の力も天の力もなく、人の力のみで国が治まる日が来る…きっとその方がいい」 「ツルギ。竜の力を宿したことを悔いているのか」
2019-11-24 23:19:34「そうではない…竜の力のおかげでオオタテの仔を孕めたし」 「きっとツルギが呑んだ竜の珠の、元の主は、多産の雌竜だったのだな」 「知るものか」 「今度の卵は幾つだろう。四つ?五つ?隠れて産もうとするな。朕はツルギが卵を産むところをまたちゃんと見守りたい」 「あれはっ……恥ずかしい」
2019-11-24 23:23:11「だが見たいのだ」 「ええい…」 「なぜすねる?子産みに立ち会いたいと親が願うのはおかしくはないだろう?朕はあの子等が卵から孵るのも見守った」 「いちいち言うな」 「案じずとも、子等は竜の力も天の力も継いでおらぬようだ。ツルギの願う通り、皆、人として生きるだろう」
2019-11-24 23:29:34「うん…武人でも…官吏でも…船乗りもよいが…やはり料り手になりたがっているな…」 「上の方は…父にならって味比べで花嫁を見つけると息巻いていたぞ」 「ふふ。ませたことを」 「母のような、料理のうまく気立てのよい男子がよいと」 「何!?」
2019-11-24 23:33:42そう。 先の天子と竜頭将。宿敵だった二人は祝福とともに婚姻し、予言の通り多くの子宝を得たが、うち一人はまだ年少にしてすでに料り手として大餐庁でめきめきと頭角を現していた。 「花嫁にするなら!世界一の料り手!この俺を技で超える男子でなくては!母上のようなよきますらおでなくては!」
2019-11-24 23:37:06ええ。 男と男の顔が近い展開は終わったんじゃないんですか。 そろそろ妙齢の婦人と年少の男児のあれそれはないんですか。 ま、そこはね。 ほら。何ていうのかな。 ここは竜を崇める国、もとい天子の国。 西の光の届かぬ東の果て、闇の地。 何でもありなのだ。
2019-11-24 23:39:13次の話
シリーズ全体の目次はこちら