ニンジャスレイヤー二次創作小説【ニア・ザ・ウェイ・オブ・デス】

忍殺二次創作です。
0
shinsokku @shinsokku

◇ただ今より本アカウントで、ニンジャスレイヤー二次創作SSのツイートを行います。短編です。短い時間ですが、お目汚し失礼いたします。良ければ楽しんでね◇

2019-12-09 21:01:05
shinsokku @shinsokku

川の畔に、その人影は佇んでいた。(サンズ・リバーだ)人影は直感する。自分が死んだこと、あるいは死につつあることに。 1

2019-12-09 21:02:25
shinsokku @shinsokku

川幅も、流れの元も先も、何もかもが川霧で見通せない。湛えているのも水なのか、何か得体の知れない液体なのか判然とせず、そもそも川かどうかも怪しいと言える。(それでもこれが、サンズ・リバーなんだ)と。ソーマト・リコールの先にある景色。その川の名を、頭の中で繰り返す。 2

2019-12-09 21:03:17
shinsokku @shinsokku

不思議がるでもなく、ただ現実を噛みしめるように。(サンズ・リバーなんだ……)伝承にあるカロン・ニンジャやダツエ・バーバの姿は見えないが、人影の心は確かにそうなのだという実感に満たされていた。これまでの人生に由来する、途方もない安堵への希求が為せるものであった。 3

2019-12-09 21:04:38
shinsokku @shinsokku

【ニア・ザ・ウェイ・オブ・デス】

2019-12-09 21:05:28
shinsokku @shinsokku

「如何ですか、コトダマの世界は」川向こうへと目を向ける人影に、声をかけるものがあった。「あの乱雑な街よりも余程良いでしょう。静けさ……落ち着きます」続ける声に、人影は振り向く。 4

2019-12-09 21:06:32
shinsokku @shinsokku

自我科患者めいた浮わついた話し方を、その見た目が裏付けていた。ふざけた紫色の装束に、口を覆うメッシュの入ったマスク。否、あれは……メンポ?忙しなく踊る瞳が、時折人影を捉える。獲物を射竦めるバイオミミズクのように鋭く、ネオサイタマ下水の汚濁のように凝った目。 5

2019-12-09 21:08:38
shinsokku @shinsokku

目が合う度にチリチリと、ニューロンに熾火の走る感覚。「貴方は……リミテッド=サン?」口をついて出た名前を、訝りながら反芻する。紫装束の人物が笑いかける。「フフ。ドーモ、アガナ=サン……リミテッドです」 6

2019-12-09 21:11:00
shinsokku @shinsokku

それはアイサツであった。人影……アガナは衝撃に打たれていた。名を呼ばれたことに、ではない。それがアイサツであると自分が理解した、できてしまったことにである。それではまるで……。 7

2019-12-09 21:12:11
shinsokku @shinsokku

「オメデト、アガナ=サン。貴方はニンジャです。アイサツを返されては?」リミテッドがにやにやと言う。うっすらと抱いた危惧は、自覚するよりも早く明示された。アガナはぎこちなく手を合わせ、頭を振るう。「ド、ドーモ。アガナ……ヨウゴです」 8

2019-12-09 21:12:41
shinsokku @shinsokku

ニンジャ。遥か昔、日本を支配していた半神的存在。アイサツをされれば、返さねばならぬ。それは古事記にも書かれていること……。滝のように流れ出した記憶がアガナを翻弄する。 9

2019-12-09 21:14:01
shinsokku @shinsokku

記憶。ニンジャなるものについて。アガナがそうなった経緯。情報量による、強いめまいが襲った。「ア、アイエ……オゴーッ!!」「おやおや!」 10

2019-12-09 21:14:51
shinsokku @shinsokku

自分が自分でなくなるような悪寒。うずくまり吐き気に堪えるアガナを、リミテッドは戯画的に笑った。「これはいけませんよ!アガナ=サン、貴方ニンジャなのですから、それらしい威厳とか要るでしょう。ヒ、ヒ、嘔吐とは!」けたたましく不快な笑いに抵抗しながら、アガナはリミテッドを見る。 11

2019-12-09 21:16:02
shinsokku @shinsokku

リミテッド。そのニンジャもまた、アガナを見ている。二人のニンジャが、どことも知れぬ場所で向かい合っているのだ。悪夢としか思えなかった。「……ニンジャナンデ」「そろそろ思い出されたのでは? ニンジャソウル、来たでしょ?」 12

2019-12-09 21:18:08
shinsokku @shinsokku

「来た、ような」「だからそれです」リミテッドの発言に連鎖するように、アガナは記憶と今とを照合させていく。自分はIRCで……ウシミツ・アワー……ケマル・ディストリクト……月とあの物体が……そしてリミテッドと名乗る人物。「見えますでしょ、アレ?」 13

2019-12-09 21:19:07
shinsokku @shinsokku

リミテッドは指差す。アガナは目を向ける。黄金立方体……今ならばわかる、キンカク・テンプル。ニンジャソウルが眠る場所。体が震える。あれから出でたソウルの一つが、アガナにも。 14

2019-12-09 21:20:23
shinsokku @shinsokku

我が意を得たり、と満足げに頷くリミテッド。「コトダマは雄弁。全て伝わりますよ、アガナ=サン。さあ、後はカラテするだけです」「カラテ……」虚ろな意識と朧な風景の中、二者は互いに構える。双方、基本的ジュー・ジツの構え。 15

2019-12-09 21:20:59
shinsokku @shinsokku

イクサが始まった。互いに近寄り数合の応酬。リミテッドが先んじ、踏み込みと共に槍めいた横蹴り。受けたアガナは後ろに吹き飛び、ウケミで衝撃を殺しながら低く構えると、片手で三度空を切る。否、それはスリケン投擲。小さく細かなチップ・スリケンが無数に飛び、リミテッドの追撃を牽制する。 16

2019-12-09 21:21:59
shinsokku @shinsokku

高く飛んで躱すリミテッド。アガナの迎撃を見破り、此方も空中からスリケン六枚。素早く暗黒カラテ奥義・サマーソルトキックの態勢を解いて、アガナが三連続バックフリップ。数瞬後、アガナの居た場所を抉るように降り来るリミテッド。衝撃。フォーリャ・セッカ。 17

2019-12-09 21:23:18
shinsokku @shinsokku

此岸の畔、シ・ベイの虚ろな白砂が巻き上がり、リミテッドの姿を覆い隠す。ドトン・ジツの類いか?警戒するアガナを、後ろからのカラテシャウトが襲う。練られたカラテを証明する、鋭く強く、重い声!「「イヤーッ!!!」」対し、アガナも無策ではない! 18

2019-12-09 21:24:10
shinsokku @shinsokku

「グワーッ!!?」頭を殴られ、うつ伏せに倒れるリミテッド!うつ伏せとはいかに!?パンチを決めたであろうアガナはリミテッドを見下ろす。殴った姿勢のまま、位置的には後ろである。一瞬の交錯で何があったのか? 19

2019-12-09 21:25:34
shinsokku @shinsokku

アガナは凝縮された時を反芻する。突如後方より襲ったリミテッド。極めて強烈な空中回転蹴り。アガナはカラテ圧力を背中に感じながら、しかし振り向かず、念じ、強く念じ、大きく踏み込んで、前方に渾身のポン・パンチを打った。その視界が二重にブレ、宙に舞うリミテッドの後ろ姿が見えてくる。 20

2019-12-09 21:26:40
shinsokku @shinsokku

ゴウランガ。多重ログイン・ポン・パンチ!こと物理ならぬコトダマ空間において、ブンシンするのにジツは要しない。切り替わった視界の中で、拳は過たずリミテッドの後頭部を打つ。致命打を受けた頭部が撓み、01の粒子を散らした。アガナは着陸する。 21

2019-12-09 21:28:38
shinsokku @shinsokku

リミテッドがアガナを後ろから襲ったのも、原理は同じ。だが、地上にあるコトダマ肉体は、未だポン・パンチの構えのまま残り……今正に消える。タイプ速度の差か、カラテ制動の関係か。ともあれリミテッドは敗れ、アガナが勝利したのだ。 22

2019-12-09 21:29:52
shinsokku @shinsokku

「ハァーッ、ハァーッ、約束……」「アバ……バカな……見事…」深く息をつくアガナを、倒れたままのリミテッドが睨む。「アバーッ……まさかこんな……無念です」「……約束だ……!」「アバ…オタッシャデー」 23

2019-12-09 21:30:54
1 ・・ 4 次へ