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落馬の衝撃に呻きながらも、なお苦闘し、組打ちに持ち込む。 しかし何をどうあがいても、生身の男がたちうちできる相手ではなかった。 銀の兜の魔女は抑えつけた騎士にまたがり直すと、身を守る鎧を力づくで引きはがす。
2020-01-04 02:17:56「デルーヘナ…済まぬ…」 思わずつぶやく丈夫に、裸身の乙女は動きを止める。 「…デルーヘナ…なのか…やはり…」 騎士は腕を伸ばし、魔女の兜に触れると、ゆっくりと脱がせた。
2020-01-04 02:20:04長く伸びた髪とともに、洗い清められたような美貌があらわになる。姫騎士の肌をおおう魔王の加護はあらゆる穢れさえも遠ざけていた。 「…兄…上…」 「私だデルーヘナ…無事だったか…お前は死ぬはずがないな…我が妹…おかしな格好をして…はっ…だがよい…よい…生きていてくれれば」
2020-01-04 02:22:48妹は兄にすがりつく。 「兄上が…俺のご主人様か…あいつよりずっと弱いけど…仕方ない」 「うむ。ともにかえ…ん?」 「ちゃんと…飼えよ…俺を」 「ん?んん?デルー…ヘナ?」
2020-01-04 02:24:39なお霧けぶる峰々の西、寂し野の片隅では、小さき人々の女長が父知らぬ子を産み落とした。やがて大きい人を思わせるほど背が高く育ち、あれこれの噂を呼んだが、どうやら東にいるあいだに何らかの魔法にかかったという結論に落ち着いた。
2020-01-04 02:27:58影の国では黒の繰り手がエルフの女奴隷を愛でて過ごしていた。 本物そっくりの猫の尾のついた玩具を双臀の間に咥え込み、肉球のついた手袋と靴下を履き、頭に三角の耳のかたちの飾りをつけたダリューテは、四つん這いになって皿から真白な凝乳を嘗めている。
2020-01-04 02:32:45すべてキージャ手製の装束だった。 「ダリュおいで」 「にゃう♪」 雌猫は素早い身ごなしで飼い主の膝に飛び乗って、向かい合うかたちでしがみついた。明るい乳房と暗い乳房が押し合い潰し合う。
2020-01-04 02:35:24「明日は兎じゃ。上手に兎になれるかや」 「にゃ…はいご主人様。ダリュはちゃんと練習しています」 「ならよいのじゃ。だがつまらぬの。前のように恥じらわぬのでは仕置きはできぬのじゃ」
2020-01-04 02:42:43かつての妃騎士はわなないてから黒の乗り手にしがみつく。 主人が代替わりするたび、奴隷はいつも何かと体面を繕い、ためらいを示すので、従順になるよう躾け直すのが常だが、七代目は過去六代に比べても徹底していた。
2020-01-04 02:43:59「初めてこの装束を見せた折、ダリュがこなたをにらんで、叱りつけた時はとても怖かったのじゃ。でもこなたは負けなかったのじゃ。ちゃんとダリュに“解らせ”たのじゃ。HENTAIらしゅうなったのじゃ」 「たいがいにせよ…この…うつけめ」 「ぴゃっ…」 「申し訳ありませんご主人様」
2020-01-04 02:47:09雌猫は飼い主の膝の上で尾とともに尻を振ってみせる。 「どうか折檻は…あまり痛くなさらず」 「むむむ…ちゃんと加減するのじゃ。こなたの大事なダリュじゃ!」
2020-01-04 02:49:57とまあエルフの女奴隷を受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジーは続くのであった。 呪いの指輪は黒の乗り手を未だ捕えたままに。
2020-01-04 02:52:42狭の大地の船作りの港には一艘の船が入る。 西の果てから。妖精を迎えに来たのではない。 精霊を運んできたのだ。 ひょろりとした痩せがちの老女と、むっくりした太りじしの老女。 一方は灰色、もう一方は茶色。 遅れてきた、いや本来の刻限にやってきた光の諸王の使節。
2020-01-04 02:56:33光と闇の、世界をかけた大勝負の幕が上がる。 灰色と茶色の魔法使いが、影の国の滅びを導く。 半丈も小人も妖精も西方人もまとめ上げ、黒の乗り手に牙を剥く。 呪いの終わりは近い。
2020-01-04 03:02:30次の話
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