エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~7世代目・その9~

白の錬金術師、OUT~ ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ
4

シリーズ全体の目次はこちら

まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 21852 pv 167 2 users

前回の話

まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~7世代目・その7~ 白の錬金術師の反撃がはじま…はじま… ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ 6454 pv 7

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ あけましておめでとうございます。(これは2020年の新年のあいさつでした) 皆さんの新年のエルフ染めはなんでしたか? え?まだエルフを摂取していない? それはよくない。一年の計は正月にあり。 運悪く三が日にエルフを採れなかった皆様は、ぜひこの物語をどうぞ。

2020-01-03 14:15:52
帽子男 @alkali_acid

エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー 略して #えるどれ 今は七代目キージャの話。黒の繰り手。あらゆる美服を織り裁ち縫い上げる影の国の縫匠。乙女(おとめ)にしか見えぬ丈夫(ますらお)。

2020-01-03 14:17:18
帽子男 @alkali_acid

キージャは父から、妖精の婢(はしため)ダリューテを譲り受けた。 老いと衰えを知らぬ種族のうちにあってもひときわ優れた美貌。無敵の武芸、至高の魔法を備えた森の妃騎士。先祖が戦で捕虜にし、過去六人の当主が時間をかけ調教を施し従順に躾けた、使いべりのしない骨董家具のようなもの。

2020-01-03 14:24:06
帽子男 @alkali_acid

だが男親は息子へ奴隷を引き渡す際に、ある条件をつけた。 エルフの女奴隷のためにこしらえた魔法の牢獄、内部に緑豊かな谷を閉じ込めた鋼鉄の巨釜の中にとどまり、外へ出てはならぬと。

2020-01-03 14:28:00
帽子男 @alkali_acid

父の命ある限り、子は奴隷とともにずっとそこで暮らせというのだ。 しかも念には念をと、昔から家系と縁のある竜の帝に牢番を任せ、巨釜を外側から抑えつけた。

2020-01-03 14:30:55
帽子男 @alkali_acid

五色の鱗を持つ長虫は、魔法の牢獄をとらえて幾重にもとぐろを巻き、百万の軍勢にも動かしようのない大力と神通でもってしっかりと封じ込めた。 おかげで中から蓋をあけようとしてもびくともしない。 キージャはしなやかな体つきにもかかわらず剛腕だが、さすがに竜の帝と押し比べをしては勝てない。

2020-01-03 14:34:17
帽子男 @alkali_acid

「父様!父様は死ぬるつもりじゃ!敖閃!解らぬか!」 竜の帝の名を呼びながら、黒の繰り手は懸命に訴える。 "おっほっほ。麿はやんごとなき雅な竜故、うるさきものは嫌いじゃ。あまりやかましいと釜ごと食べてしまうでおじゃる" 「敖閃!…この!」

2020-01-03 14:36:36
帽子男 @alkali_acid

透き通った玻璃(はり)の蓋を蹴りつけると、キージャは蜘蛛の糸をつたって巨釜の底へと降りる。あたりは花と果の緑の葉の匂いがただよう美しい庭園。木立や花畑に鳥や獣が遊び、小川に魚が泳ぐ。 気候は春の終わりののどかさで、大樹の陰にある四阿には家具も調度もそろい、暮らしに不足はない。

2020-01-03 14:39:53
帽子男 @alkali_acid

それでも牢獄ではあった。 奴隷の自由を奪うための場所だ。 「ダリュ!力を貸すのじゃ!敖閃をどけねばここを出られぬ!」 暗い膚をした美丈夫が乳房を揺らして訴えると、明るい肌の乙女は目を伏せる。 「キージャ。お前は私が欲しいのではなかったか」 「欲しい!なれど今は父様を止めるのじゃ!」

2020-01-03 14:42:17
帽子男 @alkali_acid

「お前の父ダウバが生き続ける限り、私は真の意味でお前のものにはならぬ。ダウバが自ら死を望むなら、なぜ止める」 「父様に死んでほしくない!!!ダリュもそうであろう!」 「私は…奴隷だ。戦で捕われ、この境遇に堕ちた。主人を…敵の死を願うのが当然だ」 「なれどダリュは父様が好きじゃ!」

2020-01-03 14:44:27
帽子男 @alkali_acid

キージャはダリューテの肩を掴む。 「こなたは…父様とダリュと一緒に暮らしたいのじゃ!ダリュが奴隷でなくてもよい。こなたの友でも伴侶でも…皆で一緒がよいのじゃ!」 「…キージャ…お前は…だが呪いがある。お前達の家系に伝わる魔法の指輪が…そうはさせぬだろう」 「呪いなど蹴散らす!」

2020-01-03 14:46:17
帽子男 @alkali_acid

黒の繰り手の言葉に、妃騎士はわななき、やがて白鳥のような首をもたげ、まっすぐ見つめ返した。 「私はずっとお前達の家系を見てきたが…お前のうちにある力は…誰よりも強い」 「そうじゃ!ダリュが加勢してくれれば、敖閃にも…竜の帝にも勝てる!」 「…あるいはな…だが…やめておけ」

2020-01-03 14:49:47
帽子男 @alkali_acid

奴隷は肩をとらえる主人の手を優しく外した。 「あの大食らいのでかぶつを傷つけてはダウバが悲しむぞ」 「敖閃がどかぬのが悪いのじゃ!」 「…ほかにも術はある。離れていろ」 キージャが素直に退くと、ダリューテはゆっくり呼吸してから左手の薬指にはまった指輪を掲げた。

2020-01-03 14:51:22
帽子男 @alkali_acid

閃光が迸ると、妖精の貴婦人らしく緩やかな裳裾をまとっていた肢体は、瞬く間に肌もあらわな姿に変わっていた。 胸や尻は最前より遥かに肉置き豊かになり、尖った耳や形のよい鼻、股の叢の奥には真銀の鍍金を施した黒鉄の輪飾りが通って、あいだを真銀の細鎖がつなぎ、無数の鈴を吊るしている。

2020-01-03 14:56:28
帽子男 @alkali_acid

喉首、足首、手首にはそれぞれ細かな象嵌を施した環が嵌り、それぞれが甘やかな香煙をたなびかせている。 臍には金剛石が埋め込んであって、周囲に火炎とも蔓草ともつかぬ不思議な紋様が燃える。生きた刺青の如き何かは、よく見れば乳白の肌理(きめ)の隅々まで伸び、四肢の先や頬にまで這っていた。

2020-01-03 15:01:52
帽子男 @alkali_acid

「ダリュ…綺麗じゃ…」 黒の繰り手が焦りも忘れて告げると、妃騎士は睫を震わせて切なげな喘ぎをこぼすと、なよやな手つきで虚空をまさぐり、一振りの剣を引き出す。鋼でも銀でもない、磁器の刃を持つ得物だ。 「…マーリ…許せ」

2020-01-03 15:04:24
帽子男 @alkali_acid

かつてエルフの女奴隷のために武器を鍛え、また巨釜を作り上げた男の名を呼んでから、高々と切っ先を天へ掲げる。膚をおおう紋様は光を増しながら、うねりのたうち、鎖につながった鈴が一斉に澄んだ音色を響かせ、言葉なき歌を織りなすと、薫煙は一層濃さを増す。

2020-01-03 15:07:08
帽子男 @alkali_acid

瘧(おこり)に似た震えがしなやかな長身を走ると、肩や腰や胸に汗のかわりに浮かんだ貴腐酒が馨(かぐわ)しき宝珠となって弾ける。 ダリューテは低い声で詠唱を始めた。頬は官能の疼きを示して紅潮しているが、誦句にはわずかのつかえもよどみもない。

2020-01-03 15:10:58
帽子男 @alkali_acid

破壊の呪文。 かつて森の妃騎士が光と闇との決戦において切り札とした術。 あらゆるかたちあるものを微塵に砕く攻撃の魔法を剣に伝わせると、柄を握る指にいっそう力を込め、大上段から振り下ろす。 滅びの波動は、そのまま見えざる刃と化して奔り、虚空を過る。

2020-01-03 15:17:32
帽子男 @alkali_acid

巨釜の作り上げた偽りの天地に縦一文字の裂け目が生じ、外界から吹き込んできた烈風が木々を揺らし、花を散らす。 キージャはダリューテを抱きすくめて地に伏せた。 しばらくあたりは鳴動していたが、やがて最前と変わらぬ景色が戻る。 いや一つ違う。

2020-01-03 15:20:17
帽子男 @alkali_acid

五色の鱗におおわれた蛇身が緑の谷の空いっぱいに広がっている。 下には真っ二つに割れた巨釜が転がっていた。 「ダリュ!巨釜を!マーリの作ったそなたの牢獄を斬ってのけたのかや?!」 「ああ…この私を、奴隷の身から自由にするため黒の鍛え手が作った…世に二つとない贈物をな」

2020-01-03 15:23:43
1 ・・ 12 次へ