日本漫画は非常に特異な「巨大ガラパゴス市場」という話/海外での辰巳ヨシヒロの受容

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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

ゴジラの海外展開がとやかく言われているが、日本のクリエイターとしては当然、「まず日本で」のヒットを考えるよね。その意味では「シン・ゴジラ」は日本で大ヒットしたのだから、文句はない。クリエイターはそれでいいと思う。しかし会社やプロデューサーは、本当はそれだけではいけない。

2016-09-17 17:28:26
バノイス @hkdic

@kentaro666 レジェゴジとのシナジーさえ期待できたはずの今回の本家ゴジラがこの状態というのはよくないですよね…。「ゴジラというipを世界で活用できてるのはハリウッド側である」と明確化されてしまう。この辺のアジェンダがさっぱり加熱してなくて頭抱えてます。

2016-09-17 19:44:47
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 出版界も、漫画家たちも、一部の例外を除いて「作品を海外で売る」ということにサッパリ乗り気ではありません。日本で売れているものが、海外では初版1万部で終わったとか、そんな話ばかりで、はっきり言って「儲からない」からです。しかしそれはまさに「コンテクストの問題」です。

2016-09-17 22:11:33
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 理由はいくつも考えられますが、最大の問題は、日本の漫画出版は20年間縮小し続けているとはいえ、未だに市場として世界第一位なので、日本国内のコンテクストに合致しているものが求められ続けているからです。わざわざ小さい市場の需要に合わせる必要を感じないからです。

2016-09-17 22:17:21
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 私はよく韓国や中国の漫画関係者と会うのですが、彼らは自国漫画の輸出に熱心で、アジア圏では韓国や台湾漫画がかなり進出しています。ところが、彼らは一様に「日本市場にどうしても食い込めない」とぼやくのです。日本漫画は非常に特異な「巨大ガラパゴス市場」なのです。

2016-09-17 22:22:25
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 近年の世界の漫画市場の動向を私なりに見ていて、私は遠からず、中国・韓国の漫画が世界市場を席巻すると見ています。彼らは「輸出」を第一に考えて、海外のコンテクストの研究に余念がないからです。日本は巨大なガラパゴス市場として、他を寄せ付けないまま老いていくのでしょう。

2016-09-17 22:26:41
バノイス @hkdic

@kentaro666 技術過信や海外への過小評価などを原因に破滅的衰退を遂げた携帯端末と構図は同じな気がします。「思うままに頑張れば結果に結びつく」と思い込むようになってしまって、その「思うまま」が実は狭まった文脈の上に乗ってしまってることに気づかない。

2016-09-18 08:28:15
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic バノイスさんの仰る日本映画の海外進出の失敗と日本漫画の海外進出の失敗は、根底は全く同じなのですが、ひとつ違うのは「日本の漫画市場規模は世界一」という点ですね。「世界一の閉じた市場」なのです。海外ではコミックフェスティバルが盛んで、日本作家もよく招待されますが、

2016-09-18 12:17:08
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic ほんの10年前までは、米国のコミコンの運営者が日本の作家に連絡を取ろうとして、直接雑誌編集部に電話をかけると、そこは大手企業にも関わらず英語ができる社員が居らず、電話で英語で話されても訳が分からず、電話をガチャンと切ってしまうなんて話が本当にありました。

2016-09-18 12:21:24
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 今は大手出版社には曲がりなりにも海外担当の渉外部があるので、さすがにそれはないとは思いますが、当初、そういう部署には窓際社員が回されていたりしました。今でも実情はあまりら変わらないのではないかと思います。

2016-09-18 12:24:04
バノイス @hkdic

@kentaro666 そうなんですよね、(世界的にはコンテンツは映像で消費するものなので輸出には映像化が必須なのに対し)漫画の大市場は日本にしかないので、日本重視でいいはずなんです。ですがここで新たな問題として、日本の映像界の漫画原作依存が加速しすぎている点があります(続く

2016-09-18 12:41:34
バノイス @hkdic

@kentaro666 続き)日本にしか市場のない漫画文化はハイコンテクストに偏重しがちで、映像化を目論むもいざ漁ってみたら海外には伝わりそうもない作品が多いな、という状態。映像化すれば国内では安パイと言えるようなベストセラー漫画にもその傾向が強く、海外への弾にならないという。

2016-09-18 12:48:05
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 「NARUTO」は海外でも当たったようですが、同じ会社の国内メガヒット作品はそうでもないとか。私が面白いと思うのは、日本では「70年代までの過去の作家」とみなされていた故・辰巳ヨシヒロ氏が海外では手塚の隣に並べられて、約20万部を売り上げているという事実です。

2016-09-18 13:03:16
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 辰巳ヨシヒロはさいとう・たかをらと共に大人向けの漫画「劇画」を日本で最も早く始めた1人ですが、日本では過去の作家とされ、日本で辰巳を海外に輸出しようという版元は全くなかったのです。90年代以降は殆んど忘れられた作家になっていました。

2016-09-18 13:06:31
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic ところが、辰巳に回顧漫画を描かせようという奇特な編集者が現れて、漫画古書店のカタログに「劇画漂流」を連載して単行本にしたところ、米国で出版されて権威ある出版賞であるアイズナー賞を受賞したのです。

2016-09-18 13:10:30
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic これがきっかけで辰巳の漫画は「大人が読むに耐える文学的な漫画」という評価が欧米で確立し、世界15カ国で翻訳され、カンヌ映画祭受賞作家であるシンガポールのエリック・クーが映画化しました。辰巳は海外では有名作家ですが、日本では全く売れないので無名のままです。

2016-09-18 13:15:04
NORI“アレックス”65t @nori65t

@kentaro666 辰巳ヨシヒロさんの作品が海外で大きな賞を取った時点で、日本に逆輸入して売り出そうとはならなかったんでしょうか? 海外での評価が、国内での再評価のきっかけになるパターンは多そうですが…。 (・ω・)ノ

2016-09-18 15:18:30
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@nori65t 「劇画漂流」は当然日本でも出版され、講談社漫画賞を受賞しましたが、日本ではずっと過去の作家扱いだった人で、実際絵柄も古いですから、海外のようには売れなかったです。海外では日本漫画の文脈が共有されてませんから、古いも新しいもなく、それが良かったのだと思います。

2016-09-18 16:19:17
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@nori65t 講談社漫画賞ではなく、手塚治虫文化賞でした。その後、講談社からも刊行されました。

2016-09-18 23:20:03
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 辰巳ヨシヒロ「劇画漂流」は世界で20万部売れましたが、日本では1万行ったかどうか。何せ萌えのカケラもない劇画絵ですから、まさか21世紀になって海外で最も売れた日本漫画の一つになるなんて、想像した者はいないと思います。 pic.twitter.com/A6hsFHnhCv

2016-09-18 22:28:00
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けんじ Я🐬🎙️🐙@1/7 日オフ伊駒ゆりえ @berser_kenji

@kentaro666 もともと過去作品を掘り起こす文化のある音楽の世界では海外の評価が逆輸入されて日本でも再評価されるっていうのはありますが、梶原一騎が再評価されたころを除くとマンガ評論の世界は常に新作中心なのでどれだけ海外で評価されようが受け皿がないんでしょうね

2016-09-18 22:42:16
オオニシカヅヤ @Gloomy_puppet

@kentaro666 @hkdic 壁]д`)漫画の歴史を辿れば絵柄や内容も多岐に渡ってる訳で「この国ではコレが売れる!」を発掘してしまえば、無理に輸出を意識した作品を作らなくてもいいんですね。で、売れた線から更に掘り進めたり、近い作風の新作を輸出していけば…

2016-09-18 22:59:57
バノイス @hkdic

@kentaro666 ものすごい興味深い話ありがとうござます。 海外は漫画文化の細かい文脈(ネームや絵柄の変容など)に評価軸を絡め取られず、源泉的なものへの視点がまだ安定しているのかもしれませんね。 兎にも角にも読んでみないとなので、明日にでも探してみます。

2016-09-18 23:26:04
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 「劇画漂流」は辰巳ヨシヒロの自伝で、戦後、漫画家を志してから、児童漫画の枠を超えた大人向けの漫画「劇画」を考案し、仲間達とともに劇画表現運動を始めるまでの物語です。辰巳が描いてきたフィクションとしての劇画とは異なっています。

2016-09-18 23:34:11