エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その5~

ラストスパートで読んでる人を置いてけぼりにしていく。 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ
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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 22401 pv 167 2 users

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まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その4~ 姉畑支遁のこと、俺はずっと覚えてるから。 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ 6344 pv 4

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ この物語はエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー、略して「 #えるどれ 」。 今は八代目ドレアムの話。黒の賭け手の異名をとる無類の勝負好き。夢は一族に伝わるエルフの女奴隷に将棋で勝ち、はめているダイヤの指輪をせしめること。

2020-01-18 11:47:12
帽子男 @alkali_acid

しかしエルフの女奴隷ダリューテは強い。もともとは緑の森の妃騎士。つまり王侯であり武人でもあって、将棋をはじめ勝負事をたしなみとして身に着けているばかりか、天下に敵なしという腕前である。しかも主人の後継ぎにも手加減はしない。 幼いドレアムは幾ら挑んでも敗北を重ねるばかりだった。

2020-01-18 11:50:04
帽子男 @alkali_acid

そこで、かつてダリューテと互角の対局をしたという伝説の指し手ガティの消息を求めて南の曙の大地に旅立った。 途中より道はあったが、ついに乾いた平原のかなた、岩山にあるガティの隠遁所に辿り着く。赤道近くながら標高が上の方にあって涼しい。水も豊かで、がら場の間に土を運んだ庭園もある。

2020-01-18 11:52:42
帽子男 @alkali_acid

豆や芋、珠鶏(ほろほろどり)などが育ち、傷病に利く薬草もある。 だがすでに伝説の指し手は身罷(みまか)っており、弟子達が一切を受け継ぎ、ひたすら将棋三昧の日々を送っていた。 ドレアムを迎えたのは丈高く痩せた女。近くにある密猟者の村の出身で「刻むもの」と名乗った。

2020-01-18 11:56:33
帽子男 @alkali_acid

「祖師ガティの定跡をたどり、盤技を極めんとする幼き求道よ。我々は新たな同門を歓迎いたします。今の時季は手の空いている指し手の誰にでも勝負を挑まれてよろしい」 「ありがてえんでさ!刻むものの姐さんと指してみてえ!」 「言いそびれました。私は指し手ではありません」 「へ?」

2020-01-18 11:59:40
帽子男 @alkali_acid

刻むものは目を伏せた。漆黒の肌に薄い胸と薄い腰、ひょろりと長い腕と脚は平原の瞠羚(ガゼル)を連想させる。 「私は案内役を務めておりますが、とうていここの指し手に及びません」 「そいじゃ何してんでさ?」 「私は岩から駒と盤を刻み、彫ります。それが私の務め」

2020-01-18 12:03:44
帽子男 @alkali_acid

少年は目をぱちくりさせた。 「岩から駒を彫るんで?」 「はい。祖師ガティから受け継いだ道具がありますから」 刻むものは年若い新参を、岩山に無数に開いた四角い洞窟の一つに導き、うっすらと鈍い紫の輝きを帯びた鑿(のみ)や鏨(たがね)、鑢(やすり)や錐を見せる。 「こちらです」

2020-01-18 12:08:29
帽子男 @alkali_acid

駒作りの女がひとつをとって石榑(いしくれ)を削ってみせる。刃を当てたところは、まるで牛酪(バター)でできているかのように簡単に抉(えぐ)れてゆく。 「…すげえんでさ!こいつは…手前より…」 黒の賭け手は瞼を半ば伏せて意識を遠くにやるような面持ちになる。

2020-01-18 12:10:41
帽子男 @alkali_acid

「金ではない石でもない、焼きものでもない…小人(ドワーフ)にすら知られておらぬ材質だ」 最前までの年少らしく浮ついた態度が一転、急に別人のように物静かな口調になって、注意深く岩を加工する得物を観察する。

2020-01-18 12:12:44
帽子男 @alkali_acid

「竜骨を焼き込んだ磁器ならば、これに勝る切れ味を生み出せるが…しかしまったく別の研鑽によって作られたものだ。汝の道具に触れる許しを貰えようか」 「どうぞ」 刻むものは気圧されたように応えると、少年は実に職人らしい慎重かつ危うげない手つきで鑿や鏨を手にとり、試すすがめつした。

2020-01-18 12:15:00
帽子男 @alkali_acid

「予は多くを知らぬ…船乗りでもなければ楽士でもなかった…旅には向かぬ故…だが世界の北西の外にはいつも驚異が満ちているのを知るたび、悔しく思う。これを作ってみたいものだ。ガティはいかにしてこの道具を得たか?」 「この岩山に眠っているのを見つけたそうです」

2020-01-18 12:18:12
帽子男 @alkali_acid

「では古代の品だな。曙の大地の歴史は長い…密猟者の村とこの将棋指しの村をつなぐ空井戸と隧道は、この鑿や鏨を用いて掘ったのであろう」 「はい。私も手伝いました」 「時々…この子…つまり予があまり疲れぬ程度に…この道具の扱いを教えてくれぬか」 「喜んで…」

2020-01-18 12:20:02
帽子男 @alkali_acid

刻むものはなぜか胸を高鳴らせながら、目の前の不思議なほど落ち着いた少年を眺めやった。 「ドレアムよ。あなたはいったい」 「予は…もはやただの谺(こだま)に過ぎぬ。だがそうなっても、工芸への思いだけは断ちがたい。あらためて礼を言う。職人の道具に触れる許しを与えてくれたことを」

2020-01-18 12:22:32
帽子男 @alkali_acid

ドレアムは将棋指しの村でひたすらに対局を重ねた。 ここに集うのはいずれも達人ばかりで、外では女奴隷以外にはほぼ負けなしだった黒の賭け手も初めは惨敗を喫した。しかしすぐに盛り返し、連勝を続けるようになった。一局ごとに学び、一局ごとに強くなった。

2020-01-18 12:24:02
帽子男 @alkali_acid

もちろんずっと駒を動かしてだけいる訳ではなく、庭園でも働き、地下の隧道も散策した。 作物のできをよくし、病や旱に耐えやすくするようにしてやり、培(つちか)う薬草の品種を増やし、あるいはあまり効き目のない品種を除き、精製の手法や手当のやり方を伝えた。井戸や厠も便利にした。

2020-01-18 12:26:57
帽子男 @alkali_acid

「あなたは万能ですねドレアム」 「手前はたいしたことねえんで。だけど体を動かしてると、いろいろいい手が浮かぶんでさ」 「あなたなら祖師ガティが岩壁に残した造物(詰将棋)の棋譜も解けます。天下の奇譜と呼ばれ、まだ誰も解いていませんが」 「ありゃあ難しいんでさ。刻むものの姉さんは?」

2020-01-18 12:29:00
帽子男 @alkali_acid

「私など…私が指し手を諦めたのは、あれを解けなかったからです」 「そうなんですかい…」 ドレアムはやがて将棋指しの村の最も上手の輪に加わった。筆頭はまだ若く四六時中将棋のことしか考えていないような男だったが、たまには世間話もした。最も将棋がらみだが。

2020-01-18 12:31:01
帽子男 @alkali_acid

「造物か。僕もときどき楽しみに解くが、作るのはしない」 「何でなんで?」 「造物は、つきつめてゆくと、人と人の勝負と離れ、別の高みにのぼることになる。祖師ガティはどちらも制されたが、しかし片方だけにしていればもっと強くなっていたと思う」 「仰る通りかもしれねえんでさ」

2020-01-18 12:33:50
帽子男 @alkali_acid

「僕は人と人の勝負では一番という自負があるが、だから造物を組むことにかけては誇るべきものもない」 「それなら造物の一番はどちらで?」 「刻むものだ。惜しいことだ。あの方も人と人の勝負の道を選んでいれば、この上手の輪に加わっていたことだろうが」 「なあるほど」

2020-01-18 12:36:08
帽子男 @alkali_acid

「それよりドレアムよ。君のことだ。あれこれと気を散らす。だから上手の輪に加わっても、至純の高みに登れない。ただ…時々指し方が変わる。恐らく六通りの別の指し方をするね」 「お見通しなんで」 「ああ。二通りが特に鋭い。そのうちでも獣じみた激しさのある指し方を伸ばすべきと僕は思う」

2020-01-18 12:40:58
帽子男 @alkali_acid

「確かにあの指し方が一番勝ち星が多いんで」 「僕が君と指していて一番楽しいのは、別の…まるで歌か踊りのように弾む指し方だ。しかし勝ち気に少し欠ける。獣じみた指し方は、正直辟易するような過酷さがあるが、しかし僕を至純の高みへ導く」

2020-01-18 12:43:29
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