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前回の話
以下本編
◆◆◆◆ よってらっしゃいみてらっしゃい。 この物語はエルフの女奴隷を受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー。 とにかくスケベでちょろいエルフが沢山出てきて次々にうっふんあっはんすることに定評があります。 今はアザラシのエルフとラッコのエルフが戦っている。
2020-01-20 21:16:08ご存じの通り、アザラシはエルフだ。 そして驚くべきことに、ラッコもエルフだったのだ。 しかも双方は互いに海の覇権をかけて相容れない間柄であった。
2020-01-20 21:17:08舞台は氷の墓標そびえる西の海。 そう聞くと驚く人もいるだろう。 ラッコは西の海にはいないはず、と。 確かに。ラッコは東の海の生きもの。だがそれは昆布の森が広がっているのが主に東の海だからに過ぎない。つまり西の海にも昆布の森さえあればラッコは住める。
2020-01-20 21:18:38そしてラッコはエルフだ。 エルフということはつまり魔法使いだということだ。 エルフは魔法の力で昆布の森を動かし、はるばる北の海を海流に乗って西の海までやってきたのだ。いわば民族の大移動。いや海獣の大移動だ。 不可能に思うだろうか。
2020-01-20 21:20:11だがラッコ達は結束心が強い。夜眠るときも手を握りあって輪になるぐらいだ。 そしてラッコは賢い。石を見つけてふかふかした毛皮のあいだにある小さなポケット状のくぼみに隠しておき、おいしい貝を見つけるとお腹の上でハンマーがわりに使って殻を割って食べるのだ。
2020-01-20 21:21:59ところでなぜラッコはあおむけになって泳ぐかご存じだろうか。実はラッコの毛皮はとってもとっても暖かいが、手足の先は毛皮がないから冷えやすい。だから水から出しておけるようにあおむけになって泳ぐのだ。 なんて凄い生きものなのだ。いったい皆さんはこれでもラッコに不可能があると思いますか?
2020-01-20 21:23:13くどいようだがこの物語はエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジーである。したがってラッコもアザラシも正体はすべてエルフだということをお忘れなきよう。 そしてドスケベ展開するのだということも。
2020-01-20 21:24:08いま、ひとりのアザラシエルフが、海を泳ぐための毛皮を奪われ、すっぽんぽんの姿で昆布の縛めに拘束されていた。雪のように白い肌に深緑の海藻が食い込むさまは、さながら、何だろうこれ。何だろ。 ちょっと例えが思いつかないけど、とにかくえっちだ。 えっちなの。いいね。
2020-01-20 21:25:26アザラシエルフの名前は凍波(イテルナミ)。かつて光と闇の戦いに従軍し、影の国の戦船を波ごと氷漬けにして足止めしたほどの魔法の天才だ。 岩礁の下にある海底(うなぞこ)の街の出身で、将来は街の長になることも期待されているが、本人というか本精にその気はまったくない。自由を愛する。
2020-01-20 21:27:06いや自由よりももっと大切なのは、かつて人間の統べる国、西の島で目にし、耳にした麗しき謎の歌姫。正体は傲岸不遜の君主、黄金王の気高き伴侶、白銀后だった。 イテルナミは、初めて定命の乙女の歌と舞に接した際、楽を通じて響いてくる魂の清澄に震えた。
2020-01-20 21:29:31人間などほとんど一顧だにしなかった妖精の若者はその日から、白銀后の崇拝者となり、永遠のしもべとなった。しかし決して近づこうとはしなかった。いつも舞台の客席から見守り、離れたところから気持ちを「芸」…すなわち考え抜き鍛え抜いた身振り手振りにこめてあらわすだけだった。
2020-01-20 21:31:31白銀后の夫であり守役でもある黄金王は、イテルナミのひたむきな芸に打たれ、直々に言葉をかけた。 「正直ほかのひとに迷惑だから禁止ぽよ~」
2020-01-20 21:32:30立ちはだかる壁。憧れの的とみずからを隔てる試練。 だがイテルナミは諦めなかった。芸を会場内で禁止されたら、公演後に外でやればいいし。 理解を示してくれる同志もいた。白銀后に心を奪われたのは一人ではなかった。西方人はもちろん、南方やはるか東方の民、小人さえもが同じ気持ちを分かち合い
2020-01-20 21:34:42妃の唄の美しさを讃え護り伝え広めるための秘密結社、「白銀后親衛隊」を創設したのだ。西の島にあまねく支部が生まれ、熱心な布教は国外にも及ばんとした。 しかしやがて西の島の堕落に怒った神々、光の諸王と唯一にして大いなるものが洪水と津波で豊が大地を沈めるとすべては文字通り水泡に帰した。
2020-01-20 21:37:37イテルナミはみずからのすべてを捧げた歌姫と同志を一度に失い、深海よりもなお暗く冷たい悲嘆の底に沈んだが、うちに秘めた熱き魂は後を追うのを許さなかった。 妖精の青年は、海豹の姿で荒波の下を泳ぎ周り、わただつみに没した白銀后の離宮を見出すと、氷によって永遠に朽ちぬ墓を築いた。
2020-01-20 21:39:52そうして白銀后の思い出を心に抱いたまま、みずからは不死の墓守を務めることに決めたのだ。 しかし今、その氷の墓標は昆布の森に囲まれ、先述の通り海豹は海獺の虜囚となったのだ。
2020-01-20 21:41:11「だいたい気持ち悪いんだから。お前は。ん?気持ち悪いの。解る?はくぎんこーとかいうのは、俺達知らねえから。急に叫ばれたらまずびっくりするからな」 獰猛そうな海獺が一匹、威嚇するように腹の上の貝殻を石で叩きながら、すいすいと昆布の絡むイテルナミの周りを泳ぐ。
2020-01-20 21:45:55ちなみにしゃべっているのは訛りはきついが妖精語だ。 「だが…貴様等は…もう知ったな…白銀后とその世に二つとなき歌を」 金の前髪を垂らしたまま、冷たく透き通った青い瞳に、ゆるぎなき意志を秘めて、虜囚は応じる。 「ああ。お前が早口でしゃべったやつな?何でああいうことするかな?」
2020-01-20 21:49:47看守は苛立たしげにいっそう激しく石で貝殻を叩く。 「え?会ったばかりのよ?お近づきになりたいとも言ってねえ俺達のよ?それもまあ好奇心の強い子供とか、人の良い昆布農家のおかみさんによ?だーれも頼んでねえのにまた、変てこな言葉遣いでよ?あんな早口でまーまくしてたてて」
2020-01-20 21:51:55「それは違う。聞かれたから答えたんだ。僕の芸が何を意味するのかをな」 「ああそう。そりゃ悪かった…って、いやお前がよ?出会い頭に急に跳び上がりながらやたらと霊気の魔法で花なんぞ咲かすから、そりゃ皆一応聞くでしょうよ?え?だからってお前…あんな邪教を」 「邪教などではない」
2020-01-20 21:53:46「邪教でしょ邪教!!邪教でしょうが!なーにがはくぎんこーだよ。とうの昔に世を去った…にんげん?とかいうの?でしょ?それをお前…もう歌ってねえのに…え?例えば俺がよ?五百年ほど前に死んだ鯨の歌がきれいだからってよ。変なことしながら早口でずっと話してたらおかしいでしょうが?」
2020-01-20 21:55:33