ストレイトロード：ルート140（46周目）
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Rista_Bakeya
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Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
上空で吹き荒れる風は、怪物を街から遠ざける方向へ誘導する為に藍が呼び込んだものだった。彼女の常套手段だと知る私は大人しく見守っていたが。「見ろ、こんな近くに来てるぞ！」カメラを担いだ男の大声が流れを変えた。旋回した怪物は望み通り男の頭上に急接近、高価な機材を瞬く間に攫っていった。
2019-12-25 19:04:47
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
夜明け前の荒野を走る。運転に集中している間に藍も同乗者達も眠りについたのだろう、車内がいつしか静かになっていた。車載カメラにはヘッドライトで照らした道しか記録されないだろうが、私の肉眼は暗闇の先を捉えていた。朝焼けは後部座席の方から見えるはず。あの小さな光は藍が言っていた篝火か。
2019-12-26 18:55:31
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「懐かしい？」イベント会場に吸い込まれる来場者の列を見ていたら藍に尋ねられた。仕事の経験を軽く説明すると不思議な顔をされた。「来た人を数えるって機械の仕事でしょ」「ここではそうかもしれませんね」監視カメラを通した解析には金がかかる。小さな行列や細道の往来は今も人の手に頼るはずだ。
2019-12-27 19:04:45
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
森の奥に、藍が言った通り料理店の看板があった。「よくぞ見つけてくれました！撮影も投稿もどうぞご自由に！」立地こそ唯一の弱点だったと店主らしき人物は語る。宣伝してほしいのか。前菜を待つ間に当の藍が首を傾げた。「あの自信どこから来るの？」風の目線で建物の位置を知れても人柄は見えない。
2019-12-28 18:52:40
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
道端に報道陣が詰めかけていた。彼らの機材に映らないよう迂回する間に藍が窓を開け、注目の的を確認していた。「ゴミの山があって」風が悪臭を連れてくる。「片づけを邪魔している人がいる」屋敷の主が累次の警告を受けてもなお動かなかったのだろう。警察と軍まで巻き込んだ騒ぎになっているらしい。
2019-12-29 19:57:41
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
指示を受けて停車すると、藍は運転席側の窓を開けさせて外を指した。「何かの卵みたい」左手に見える山の中腹、緑の森に囲まれた白いレドームがある。藍の端末に届いた映像では怪物が枯らしていたはずの森に。「あれ本当に建物だと思う？」山だけを見ていると巨大な巣にも思えるが、親の姿はなかった。
2019-12-30 19:02:27
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、2292。レドーム。 レーダーや情報受信のアンテナを覆う球体(またはそれに近い多面体)のカバーのこと。
2019-12-30 19:02:27
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
炎の烈婦が新規事業立ち上げ会見を開いた。新聞からウェブまで赤い画像に占拠され、苛立った藍は端末を放り出してベッドに伏せた。「最近メディアの露出多いなと思ってたら」「準備が一区切りついたのでしょう」余裕ができれば再び邪魔しに来るか。懸念が魔女を真顔にさせる。「出発の準備。急いで！」
2019-12-31 19:14:18
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、2293。露出。 2010年代、大きな一区切り。そして新しい年へ。 本年もありがとうございました。
2019-12-31 19:14:18
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
カメラの前に座る藍の表情が固くなっていた。ぎこちないというより不機嫌を隠そうとしているのか。仲良くない相手に見せられる感情の種類は限られる。「今の質問、打ち合わせにないよね？」耳打ちを受け、記者を見た。踏み込む隙を窺う目だ。「お時間です。取材を続けるなら割増で」双方から睨まれた。
2020-01-01 19:46:58
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
本棚の蔵書に紛れていたカメラをいとも簡単に見つけ出した藍は、自ら名指しした隠し撮りの犯人より先に私を睨んだ。「ほら、わかりやすい場所なのに。気づいてなかった？」不自然な言動は証拠映像を意識したもの。納得した私に彼女が追い討ちをかけてくる。「年を取ると鈍感になるってこういうこと？」
2020-01-02 19:00:03
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
ゴーグルを覗いた途端、白い天井が青く塗り潰された。空を貫く銀色の塔が現れる。「元々この土地に本物のタワーが建つ予定だったとか」時代を超え戒められ続けても、天に届く建造物を志す人間は絶えないらしい。機械仕掛けの幻覚で満足するのか。「登っていい？」藍は風で測れない世界を楽しんでいる。
2020-01-03 19:08:10
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、2296。タワー。 提供: @middlechronica カタカナを漢字へ言い換えずにそのまま使う、ことに一番苦戦した。
2020-01-03 19:08:10
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「どうかお帰りください」村人達は藍に箱一杯のじゃがいもを差し出し、頭を下げた。怪物が橋を壊した故に出荷できなかった収穫物だ。「お詫び？それとも値崩れした作物の処分？」藍は箱を見下ろし、指で私に合図を出した。財布を出せと。「貢ぎ物も施しもいらない。売りつけたいなら言って、買うから」
2020-01-04 19:28:03
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
会食当日に病欠が一人。主催者始め大人達が仕方ないと割り切る中、藍だけは消化できない思いを抱えて食卓についた。隣に友達がいない寂しさか。「誰もあの子を心配してない」「もちろん気にかけているでしょう、病気でしたら」「違う」窓の外は雨風が強くなってきた。「ひとりだけ留守番させるなんて」
2020-01-05 18:43:42