- Yuusisaitou
- 26761
- 44
- 31
- 301
この技術を使った秀作はてんコミ16巻の「ウルトラよろい」でしょうか。 両者が勘違い(不一致)をして最終的に奇跡的に利害が一致してしまう(解決)という、二重構造の話です。 落語や童話等に類似した話がありそうですね。元々「裸の王様」ですし。 pic.twitter.com/u7k7zriQaU
2020-01-28 03:26:11「すれ違い」を生み出す方法として『人物の考えを言語化する』 西洋の古典喜劇でも舞台の演者がわざと思考を口にしていたそうです。 漫画の場合は【傍白不一致】という形式が多い。傍白でわざとキャラの心情を読者に見せて、それが見えてないキャラとすれ違わせる手法(大家さんは思春期より) pic.twitter.com/5VkLONISYU
2020-01-28 22:27:01この場面も原理的には「キャラの心理を読者だけに伝えてすれ違わせる」なので原理的には傍白不一致と同じです。「事前密談」とでも名付けてもいいかもしれません。 pic.twitter.com/ZVQ4PFEZ3q
2020-01-28 22:27:02ちなみに「傍白筒抜け」という手法もあります。本当は見えてないはずの相手の思考が筒抜けになっているというズレの滑稽さですかね。 pic.twitter.com/7IUpQISasD
2020-01-28 22:27:03似た構造の話として傑作回の19巻「天井うらの宇宙戦争」が挙げられます。 徹底したスターウォーズのパロディが有名な回でもありますが、物語展開が見事です。 まずドラえもん達が本物の宇宙船を発見し、その事情を知らないママやジャイアン達とすれ違います。 pic.twitter.com/8eteQhTpcc
2020-01-28 03:26:13宇宙戦争が激化するなか、何も知らないジャイアンのホームランが敵宇宙船を撃墜し、しかもそのことに気づかないまま逃げ帰ってしまう滑稽さが最後の一コマで描かれる。 「不一致」と「対義結合」がうまく使われた回とも言えます。 pic.twitter.com/qL2zeBem5j
2020-01-28 03:32:35【会話不成立】 これもすれ違いの一種ですが、分けたほうがいいでしょう。 事情の違うそれぞれのコミュニケーションが上手くいかないおかしさです。漫画でもお笑いのコントでも無茶苦茶使われる『ズレ』ですね pic.twitter.com/728cojy5BN
2020-01-28 03:32:36【毒舌】 原作ドラえもんといえば絶妙な毒舌。 これは「会話不成立」や「認識の不一致」の要素も孕んでいます。 「月給安いもんね」と「まぬけな声が聞こえる」は『余計な修飾』というテクニックでもあります。一言余計だとかそういった類のズレですね。反語的賛辞も近いものがあります。 pic.twitter.com/OXVItBb9cV
2020-01-28 03:32:38次に「展開」というカテゴリーでドラえもんの笑いの構造に迫りたいと思います。 ここまでは大体一コマ内で起きている不一致の笑い、といった感じでしたが、この「展開」では数コマに跨った物事の展開による笑いを取り扱います。
2020-01-28 04:45:41【時間飛ばし(省略)】 本来地続きにあるはずの描写を省いて、あえて空白を作る手法。不一致解決の要素がある?説明が難しいのだけれど、コメディ作品ではよく見る手法です。 pic.twitter.com/wAgPiOqPUe
2020-01-28 04:45:42最近の作品での使われ方はこんな感じ。画像はさんりようこ先生の「B型H系」 主人公のモテ女子が惚れてしまった鈍感な地味男子と付き合うためにあの手この手を駆使して誘惑するというお話。 B型H系はコメディ漫画の手法がふんだんに駆使されてます。 pic.twitter.com/4StlZ2S6tq
2020-01-28 04:45:43【頓降法】 レトリック用語。段々と盛り上がってきたものが、急に落ちるように展開するさま。この場合、のび太の必死の抗議を完全に無視してドラえもんが梯子を外している。 段々語調が下がっていくものは漸降法と呼び、これも一緒に扱っておく。 pic.twitter.com/mX24XuBj3h
2020-01-28 04:45:45【情報待機】 一コマ間をあえて空けてオチへの叙述のリズムを取る手法。「のび犬」という情報だけを伝えるなら真ん中のコマは要らないのに、わざと「ポン」と置いてある。これは最近の作品のほうが分かりやすいので、やはりB型H系の例を参照します。 pic.twitter.com/DDLjFfLhyZ
2020-01-28 04:45:46情報待機には「スルー」という形式があって、こののび犬の例もスルーに入ると思います。 最近(ってほどでもないけど)の作品を例に挙げましょう。佐渡川準先生の「無敵看板娘」と音井れこ丸先生の「若林くんが寝かせてくれない」から。 最近では「スルー」のコマの背景を黒くするのが定番のようですね。 pic.twitter.com/G7vCpXvCwI
2020-01-28 04:45:47【攻守逆転】 これはベルクソンが「反転」と呼んでいたもの。ある流れがガラっと反転しまうことで滑稽さを出している。ドラえもんとのび太が前後で同じ調子で嗜めているのは同じくベルクソンが言っていた「反復」の笑い 普通の作劇論でも「リバーサル」等と呼ばれます。 pic.twitter.com/TAIh0ujbj1
2020-01-28 04:45:49【墓穴を掘る】 これもよくある手法。自ら喋っているうちに墓穴を掘ってしまう滑稽さ。ドラえもんではあまり見られない? これは「うつけ者の特徴」としてよく使われる手法で、B型H系の主人公の山田はこの手の発言が非常に多いです。 pic.twitter.com/HhX8S5qM4Z
2020-01-28 04:45:50【複数系列の反復】 先に反復が少し出てしまいましたが、これもベルクソンの主要理論の一つ。 別々の系列の出来事が繰り返されることによる滑稽さ。 F先生が特に使われていた手法じゃないでしょうか。 pic.twitter.com/geQwTO6fGL
2020-01-28 05:05:21上手くいっていたことが、思わぬ勢力が介入することで予定が狂ってしまう。 ヨーロッパの古典喜劇でもよく使われていた手法のようです。 pic.twitter.com/zZAWQZeZmk
2020-01-28 05:05:23【ツッコミ待機】 …と名付けたものの、あんまりしっくりこないです。情報待機の一種ということで。 どう見ても次にリアクション(ツッコミ)の来る衝撃的な様子で止められる笑い。これもF先生は多いですね。 pic.twitter.com/KDFZJKKXdp
2020-01-28 05:05:24次は「視点の客観化」というカテゴリー。 笑いが「見るもの、見られるもの」「主体と客体の関係」から成るということを先に説明しました。 F先生はこれの達人で、対象を滑稽に見せるのに視点をサッと移動させています。
2020-01-28 05:35:41最もよくあるのが名付けて【他人事】 急に視点をずらす、あるいは他の視点を入れて滑稽に見せる。 このオチでは真剣に抗議している夫婦2人の様子と、実は騒動の発端でありながら事情がわからないドラのびが、黙々と飯を食らっている様子と対比することで客観化させている。 pic.twitter.com/DSC5Eju9AC
2020-01-28 05:35:42これも「他人事」 パパの視点(発言)から始まって、やる気のないのび太の視点に移っている。「おこった」という非常に客観的で他人事な感想が笑える。 pic.twitter.com/APsS2oxnmx
2020-01-28 05:35:43ジャイアンの歌に怯える民衆をのび太が他人事のように客観的に分析する(当然その後巻き込まれる) 次のカットも真剣に悩むジャイアンと完全に他人事なドラえもんの態度の対比が面白い。 F先生の達観した視点が作品の根底に流れている気がする。 pic.twitter.com/Lc3QYQLkdq
2020-01-28 05:35:44この一連のコマは、熱弁をふるうのび太の横のドラえもんが、口を挟む前からわざわざ配置されている点に注目したい。 どう見てもバカバカしいことを言っているのび太を、ドラえもんの冷めた視線が客観化させ、顔が見切れたドラえもんが更に空間を滑稽にしている。 この絶妙にバカにした感じが素晴らしい pic.twitter.com/ZdTsWPJNAM
2020-01-28 05:35:46