稲川淳二の『つぶやき怪談』(2020.01.28)

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稲川淳二 @Junji_Inagawa

ですから、土地の人はみんないやがるわけだんだ。

2020-01-28 22:15:16
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それでも、お父さん、疲れてるんで、 早く帰れるこの道をいくことにした。

2020-01-28 22:15:33
稲川淳二 @Junji_Inagawa

黒一色の、闇につつまれた山間の道を、 自転車の小さな明かりひとつを頼りに進んでいく。

2020-01-28 22:15:57
稲川淳二 @Junji_Inagawa

何とも心細い。 それでも、はじめのうちはよかった。

2020-01-28 22:16:22
稲川淳二 @Junji_Inagawa

やがて、山の道に入ってゆくと--------。 もう、あたり、真っ暗ですよねえ------。

2020-01-28 22:16:44
稲川淳二 @Junji_Inagawa

もちろんまわりには家もないし、 道にもまったく明かりがないんですから。 自分のまわりは真っ暗だ。

2020-01-28 22:17:08
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そこを一生懸命自転車こいで行った。

2020-01-28 22:17:29
稲川淳二 @Junji_Inagawa

この自転車、実用型という普通の自転車よりも頑丈にできてるぶん、 重くてスピードも出ない。

2020-01-28 22:17:54
稲川淳二 @Junji_Inagawa

当時のことですから、 変速ぎやなんてものもついていない。

2020-01-28 22:18:18
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ギイ、ギイ、ギイ ただただひたすらこいだ。

2020-01-28 22:18:54
稲川淳二 @Junji_Inagawa

荷台のかごでは、得意先からいただいたメロンが二つ、

2020-01-28 22:19:17
稲川淳二 @Junji_Inagawa

あっち行ったり、こっち行ったり、ごろんごろん、ごろんごろんと、 転がってはぶつかってる。

2020-01-28 22:19:40
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それが、なぜか妙な感じがして------。 なんだか、怖い。

2020-01-28 22:20:08
稲川淳二 @Junji_Inagawa

自転車の前につけた、ランプが、 前方のわずかな範囲だけを照らしだしてゆく。

2020-01-28 22:20:36
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それも弱い明かりなんで、 まわりも後ろもまったくの真っ暗闇。 何かがひそんでいそうで、どうにも気持ち悪いし、心細い。

2020-01-28 22:21:06
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ああーーやっぱりこの道、来るんじゃなかったなあ」 と、後悔しても、もう遅い。

2020-01-28 22:21:33
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ここまで来てしまったらもう戻れない。 で、しょうがないから、ただただペダルをこいだ。

2020-01-28 22:22:06
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのうちに風が、ひゅ----------っ、出てきた。

2020-01-28 22:22:26
稲川淳二 @Junji_Inagawa

と----、木の枝が、 カラカラカラカラ 鳴りはじめた。

2020-01-28 22:23:09
稲川淳二 @Junji_Inagawa

うわあ---- と思った------。

2020-01-28 22:23:36
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それがまるで骨鳴りに聞こえる。

2020-01-28 22:23:56
稲川淳二 @Junji_Inagawa

カラカラカラカラ---- ひゅーーーー

2020-01-28 22:24:14
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ううっ! さすがに怖い。 なんだか後ろの闇が怖い。

2020-01-28 22:24:40
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ううっ-----! ひゅ----------------------------。 ひゅーーーー。

2020-01-28 22:25:07
稲川淳二 @Junji_Inagawa

風が吹いて、 カラカラカラカラカラカラ 音が大きくなってきた。

2020-01-28 22:26:01
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